ラファエロの美しいフレスコ画が圧巻、ヴィッラ・ファルネジーナ。

公開日 : 2014年09月11日
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今日は、ルネサンスの宝石ともいわれ、完成当時、ローマ中のインテリや貴族達の集まるサロンともなった美しいヴィッラ・ファルネジーナをお届けしたいと思います。この美しい館の内部にルネサンス時代のフレスコ画が残っており、小さな庭園も一般公開されています。

このヴィッラ・ファルネージーナ(ファルネジーナ荘 Villa Farnesina)は、ヴァティカン市国の南側にあり、アカデミア・デイ・リンチェイ(Accademia Nazionale dei Lincei)という国立科学アカデミーが管理しています。

国立科学アカデミーは、ガリレオ・ガリレイなどが会員として活動していたこともある、1603年創立の世界的にも由緒ある団体(学会)で、海外から著名なお客様が訪れた時には、このヴィッラ・ファルネジーナを迎賓館として利用しています。(なお、国立科学アカデミーの本部は、お向かいのコルシーニ宮の中にあります。今日は写真を特別にお借りしてきました。ブログにてハイライト部分を公開したいと思います。

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↑ こちらが、1520年完成の、ファルネジーナ荘です。

ヴィッラ・ファルネジーナはシエナ出身の銀行家、アゴスティーノ・キージが建築家バルダッサーレ・ペルッツイに依頼して完成させた、個人の邸宅です。彼は銀行家といっても、歴代ローマ教皇に融資をする程のお金持ちで、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの、画家ラファエロのパトロンでもありました。

近年、ヴィッラ・ファルネジーナは館内・敷地内の防犯設備などの工事を行っていましたが、昨年の秋に、工事が完全に終了しました。

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↑ 邸宅は、1階と2階があり、1階部分で入口を入るとすぐに、ガラテイアの間(La Loggia di Galatea)があります。ガラテイアの間では、壁や天井に様々な画家の作品が見れるのですが、こちらが一番の見所、ラファエロが1511~1512年にかけて描いた、ガラテイアの凱旋です。古代神話をモチーフとした絵で、ガラテイアという海の精(中央の女性)が、イルカのひくホタテ貝に乗っています。イルカが少し怖いです。

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↑ こちらもガラテイアの間のフレスコ画の一つ。

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↑ そのガラテイアの間を過ぎると、外光が差し込み明るい、アモーレとプシュケの間です。

もともとはこの部分は、庭に面したロッジャ(開廊 - 片方が外に開かれた廊下)なので、吹き抜けの空間でしたが、吹きさらしでフレスコ画の損傷が激しかった為、現在はアーチの間にガラスが入れられています。(写真右側) この間の天井部分のデッサンはラファエロ、実際に作業を行ったのはそのお弟子さん達です。フレスコ画が素晴らしい空間です。

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↑ 絵の主題には、アテル(神話の人物)に恋をしたプシュケ(人間の娘)が数々の試練を乗り越え、天井の神々の饗宴へ招かれる場面などが描かれています。

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↑ お花と果物で描かれた緑色の美しい綱装飾も見事で、この部分を担当したのは、ジョヴァンニ・ダ・ウーディネという、1514年にラファエロの工房へ入門した画家さんです。彼はこうした装飾模様を描くのがとても上手な方で、いくつか他の場所にも作品を残しています。彼のお墓は、師と同じく、ローマのパンテオンの中にあります。

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↑ 続いて、2階部分にある遠近法の間(La Sala delle Prospettive)です。だまし絵の間で、円柱は本物ではありません!壁に描かれた円柱の向こう側にはこの当時(16世紀)のローマの町並みが見えます。

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↑ こちらは遠近法の間の隣にある、アレキサンダー大王とロクサーヌの結婚の間(La Stanza delle Nozze di Alessandro Magno e Roxane)です。天井が低い部屋で、邸宅のご主人、キージの寝室でした。ソドマという画家が担当しました。

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↑ 庭園で憩んでいる猫。

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最後に、ラファエロにまつわる面白い逸話で締め括りたいと思います。 レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロと、ルネサンスの三大巨匠の一人として数えられているラファエロですが、どのような人物だったのでしょうか。

ラファエロは、"美しい女性を描くには、美しい女性をたくさん見なくっちゃね!" と本人もいっていた通り、部類の女好き(惚れっぽかったということか)であったといわれていますが、このアゴスティーノ・キージの別荘で絵を描いていた時も、"彼は一人の女にメロメロになって仕事が手につかず、キージ(発注主)はそのことに頭を悩ませていた" という逸話が残っています。

女性好きがもとで、病気(性病云々)にかかり命を落としたのではと、業界ではまことしやかに囁かれていますが、37歳と早過ぎる死でなければ晩年までにどれくらいの作品を残していたのでしょうか!

ほぼ同時代に「芸術家列伝」を書き残したジョルジョ・ヴァサーリなどの記述から、人物像が何となく分かります:

-「人当たりが非常に良く、優美で、勤勉、善意の人であった。」 -「礼儀正しく、身のこなしも優雅で、彼は生まれつき謙虚な性分であった。」 -「美男子で、気持ちのいい人物であった為、彼の周りにはいつも15人程の取り巻きがおり、画家というよりは貴公子のようであった。」

-「父に、"おまえはまだ結婚しないのか?" と尋ねられると、"いえ、お父様、私の周りには魅力的なご婦人が多過ぎて選べません。" と返答した。←これはラファエロの魅力に女性達がメロメロになっていたらしく、次から次へと誘う人が後を絶たなかったのだとか。」

-「柔らかい物腰の人物で、そして努力家であった。」

-「品行方正(この言葉はどうかと思うが)で、とにかく優れた人であり、礼儀正しい為、上司、同僚などの同性からも好かれていた。」

-「穏やかな性格の人格者であり、自分の工房を持つと、弟子達の得意分野を瞬時に見出し、仕事の采配がとても上手であった。自分の弟子には家族に接するように深い愛情を注ぎ、ラファエロと一緒に仕事をする人は誰もが気持ちよく働いた。彼の工房からは笑い声が絶えなかった。」 女性にとにかく弱かった(?)という面を除けば、非常に魅力的な人物だったようです。今日なら、"理想の上司像" のランキングに入りそうです。美術館や遺跡などの観光も、こうした裏話から入ってみると面白いものです・・・。

以上、"ルネサンスの宝石"という名の通りの一見の価値ありのスポット、ヴィッラ・ファルネジーナからお届けしました。

インフォメーション:

名称    ヴィッラ・ファルネジーナ (ファルネジーナ荘)

住所    Via della Lungara, 230  

オープン時間  月~土曜日の9時から14時。

休日     日曜と祝日

入場料金    6ユーロ(18~65歳まで)

* 10歳までの子供は両親同伴の場合、無料になります。入場料は、年齢・条件に応じて割引があります。日本語ガイドはお気軽に阿部までお問い合わせ下さい。

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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