ネロ帝の黄金宮殿 "ドムス・アウレア"。約10年ぶり、いよいよ開きます!"ドムス・アウレア"って何ですか? Q&A編。

公開日 : 2014年10月26日
最終更新 :

天井、壁などの崩壊から早9年。コロッセオの前にあるドムス・アウレア(黄金宮殿)ですが、遂に長い沈黙を破り、明日26日より一般公開となります。

ドムス・アウレアは施設の老朽化(?⇒建設から2000年近く経っていますので・・・)などから、内部の観光には安全面に問題があるとされ、2005年の一部施設の崩壊などをきっかけに一般公開は中止となりました。

実は現在も安全確保の為の工事及び修復中なのですが、工事が終了した区間を、明日より週末のみ一般公開することになりました!

観光ガイドブックなどにも、ローマの見所として必ず、"ドムス・アウレア"は載っているので、名前をご存知の方は多いと思います。ところが長い間閉まっていた為、この観光施設の情報がほとんどないか、古いものであることに気付きました。

そこで今回は、楽しい訪問の前の事前インフォメーションとして、"ドムス・アウレアって何ですか?"と題し、Q&A方式でご紹介したいと思います。

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↑ お部屋の一つ、八角形の部屋です。

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↑ アキレウスのお部屋のフレスコ画。

ドムス・アウレア(黄金宮殿)って何ですか?

Q:ドムス・アウレアとは何の意味ですか?

A:ドムス・アウレア(Domus Aurea)とはラテン語で、日本語では、"黄金の家(黄金宮殿)" です。コロッセオの北東側にあり、徒歩1分です。

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↑ アキレウスのお部屋。

Q:ドムス・アウレアは黄金の家ということは分かりました。誰の家だったのですか?

A:ドムス・アウレアはローマ帝国の第5代皇帝、ネロ帝(在位:54~68年)が64年のローマの大火事後に、自分の住まい用として建設を始めました。贅の限りを尽くした住居で、お部屋の内部は美しいフレスコ画やモザイクで覆われていました。ネロ帝は、1週間、燃え続けたといわれるローマの大火をうっとりと高台から眺めていたという目撃情報もあり、大火の犯人ではないかと推測されています。(燃えて空になった町に新しいローマを建設したかった為)

暴君として知られている皇帝で、彼はまたひどい音痴でしたが歌手として市民の前でワンマンショー(コンサート)を開くのが大好きで、無理やり連れて来られたお客さんにはひどい拷問だったようです。

ネロ帝を詳しく知りたい場合(こちら

Q:黄金の宮殿とはさぞかし立派な住居だったのでしょうね。ドムス・アウレアはどの位の大きさがありますか?

A:住居の中には、現在まで発掘されている部分だけでも、お部屋が150室あります。宮殿全体の長さは250メートルにも及び、一番幅が狭い部分でも30メートルあります。最も幅が広い部分は60メートルです。

住居全体の面積をサッカー場に例えると3つ分、室内の壁面や天井のフレスコ画の装飾の総面積は何とシスティーナ礼拝堂(ヴァティカン博物館)の天井装飾(ミケランジェロのフレスコ画)の30個分という膨大な量になります。

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↑ 宮殿全体図。左下はサッカー場、右下にあるのはシスティーナ礼拝堂の天井画です。

Q:ドムス・アウレアは現在も工事中と聞きました。閉館から随分経ちますが、現在の工事の進展状況はどの様になっているのですか?

A:安全確保の為の工事と、フレスコ画などの修復保全作業は現在でも行われています。下のマップは先月9月の工事の進展状況です。紫色の部屋の部分は作業が完了しました。黄色の部分は現在進行中のお部屋です。

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Q:なるほど。これだけ古い時代の建物だとメンテナンスが大変ですね。しかし、2000年近く前の皇帝のお宅がよく残りましたね。

A:そうですね。ネロ帝は死後に、その愚行などから、ダムナティオ・メモリアエ(名声の破壊。記録抹殺刑)となりました。国家への反逆などでダムナティオ・メモリアエが課された人物は、その存在自体がなかったこととして、存在した痕跡などが徹底的に破壊(抹消)されます。

ネロ帝の黄金宮殿の東側部分は、104年頃にトラヤヌス帝がトラヤヌス帝の浴場を造った際に、宮殿の基礎部分を使い回して建てた為、今日まで残ることとなりました。綺麗に土をかぶせて埋め立てていたお部屋部分からはフレスコ画やスタッコ(装飾漆喰)などの壁面装飾がごっそり出てきました。

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↑ へクトールとアンドロマケーの部屋。

Q:緊急性の必要のある工事なのですか?

A:現在の問題点は、黄金宮殿の真上にある市民公園(オッピオ公園)です。公園に植えられている樹木の根っこがしばしば地下に埋もれている宮殿の天井部分を突き抜け、亀裂の入った壁から雨水を透水させています。水浸しになる為、宮殿内の湿度は90%あります。排水用の穴を多数掘って何とか切り抜けています。遺跡内のフレスコ画が耐えることのできる湿度は最大で75%です。

また、これらの樹木と土の重みは、耐久性がなくなった古代の建造物を簡単に潰してしまう危険性があります。将来的には現在の70%の重みを取り除かないと、構造的にドムス・アウレアの天井部分は耐えられない計算です。現在、公園の土の厚さは3メートルあります。土は雨水を含むと非常に重くなります。最終的には、土の厚さは1メートルにしないといけません。

一般公開のインフォメーションについては次回に続きます。

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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