ボマルツォの怪物公園のアイドル オーガちゃんに会いに行こう!

公開日 : 2019年12月07日
最終更新 :

ローマ近郊の街、ボマルツォ。この街を有名にしているのは、聖なる森の中に四十あまりの巨像が散らばる、魔訶不思議な怪物公園の存在ではないでしょうか!先日、怪物公園のアイドル、オーガちゃんに会いに行って来ました。それでは、オーガちゃんと怪物公園の仲間達をご紹介します!

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↑ 怪物公園のアイドル、人食い鬼のオーガちゃんです!怖くはない鬼で、お口の中を見ていただくと、テーブルもありますし、自由にくつろがせてくれる鬼です!オーガちゃんは、数年前に上野樹里さん出演のサントリーの飲料水「やさすい」のコマーシャルにも登場しました。真ん丸の唇には、"いかなる思考も飛び立つ"という格言が彫られています。

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↑ 怪物公園は、ローマの北のヴィテルボ県のボマルツォという人口二千人弱の小さな町にあります。写真は、怪物公園のすぐ近くにあるオルシーニ家のお城です。約五百年前に公園の着想と造園に関わった、ローマ貴族のヴィチーノ・オルシーニ。ヴィチーノがどんな考えでこの庭園を造ったのかははっきりと分かっていませんが、亡き妻ジュリア・ファルネーゼへの哀悼の意を込めて、または、この世の不可思議な魔物などを表現する為など、諸説があります。お城の小窓から、今でも大切な公園を静かに覗くヴィチーノの亡霊が見えるかのようです。

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↑ 入場して最初に出迎えてくれたのは、ギリシア神話の海の神様プロテウス・グラウコス様です。当時の貴族としてのオルシーニ家の権力を誇示するかのように、頭の上にのせた地球の上にオルシーニ城を据えています。かわいい感じの彫像です。

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↑ 松ぼっくりとどんぐりがポイントの松の実の広場という場所です。遠くに何か動物がいるので、行ってみましょう!

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↑ 熊でした!ずらりと並んだ熊は、親分の一匹はオルシーニ家の紋章を持ち、残りの熊達はローマのバラの花を抱えていました。

怪物公園の大きさは3ヘクタール程(東京ドームの広さは4.7ヘクタール)で、とても小さい面積の公園ですが、中には沢なども流れています。針葉樹と広葉樹の美しい森の間に果樹やバラなどの花卉類が植栽されていて、森林浴を兼ねた散歩にもぴったりです。

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↑ ヴィチーノが亡くなった愛する妻、ジューリア・ファルネーゼに捧げた丸屋根を持つ神殿です。

16世紀のヴィチーノの良く練られたフィロソフィーを持つちょっぴり不思議で奇怪な庭園は、同時代のイタリアのルネッサンス様式の庭園とは全く異なるものですが、ヴィテルボの周辺では、マニエリスムのヴィッラのモデルとして多くの貴族に取り入れられました!

怪物公園は、設計分野は建築家ヴィニョーラが、彫像などは同じく建築家のピーロ・リゴリオ、アンマナーティなどが携わっています。

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↑ かわいいドラゴンに出会いました。時間と知恵を象徴するドラゴンは、犬、ライオン、狼と戦っています。これらの動物は、春、夏、冬の四季と、現在、未来、過去を表現しています。

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↑ カルタゴの将軍ハンニバルがアルプス山脈越えに引き連れた戦象です。鼻が死亡した(もしくは負傷した)ローマ兵を巻き付けています。

ラビリンスのような怪物公園には、神話の人物や動物、怪物などがヴィテルボの凝灰岩で彫られ、それらにはオーガちゃんの唇にある"いかなる思考も飛び立つ"という格言のように、モットーや碑文が刻み込まれています。

公園内のモニュメントには、噴水、オベリスク、壺、霊廟、神殿などがありますが、ストーリー的にも、それらの配置にも一貫性がなく、かなりエキセントリックな空間です。モニュメントの意味などを考えると、それは謎解きに近く、迷路の様な公園は、物理的にも心理的にも真のラビリンスとなっています。

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↑ 海の神様ネプチューンとイルカです。悪夢や不思議の森の軽快さは、当時人気が高かった騎士文学に見られる要素で、ヴィチーノは、この森に世界で最も重要な謎に包まれた庭園を実現したいと切望していました。訪れる者は、怪物公園の中で芸術と文学に出会い、内省し、次々と発見をして行くのです。

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↑ 傾いた家は、見た目はあまり傾いてはいませんが、家の中に入ると目が回りそうなくらいの仕打ちでした。平衡感覚を失う大変恐ろしい場所です。

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↑ ローマ神話の豊穣の女神ケレスが突然木の下に現れました。ピーロ・リゴリオは、美しいプロポーションを持つこの像を、世界で最も美しい女神だと表現しました。

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↑ 貧しい人々から食べ物を盗んだ怪物カークスと戦うヘラクレスは、比喩的に、見る者に善と悪の戦いを伝えています。

時が経ち、ヴィチーノが庭園を完成させてから400年が経過しました。もう誰も訪れる人もいなくなってしまった庭園はすっかり朽ち果ててしまいました。しかし近年になり再整備がされると、怪物達は400年の眠りから覚め、復活を遂げます。そして、多くの芸術家や知識人、クロード・ロラン、ゲーテ、サルバドール・ダリ、マリオ・プラーツなどによって再評価されることとなりました。

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↑ 森の中からかわいい子猫が出て来て、筆者の散策に途中まで付いて来てくれました!

怪物公園は、木々が生い茂り、夏でも涼しいところです。また、春は特に新緑の美しい季節、秋はどんぐりが沢山見られます。機会がありましたら、皆さまも是非訪れてみて下さい!

インフォメーション:

名称    ボマルツォの怪物公園(Parco dei Mostri di Bomarzo) 

住所   Sacro Bosco, località Giardino, Bomarzo

オープン時間  年中無休。4~8月は8時30分~19時、9~3月は8時30分~日没まで。

料金       大人11ユーロ、子供(4~13歳)8ユーロ、0~3歳までは入場無料。

ホームページ   こちら

行き方     ローマのテルミニ駅からイタリアの鉄道トレニタリアの列車、Regionale(レジョナーレ)に乗車して、Attigliano-Bomarzo駅(アッティリアーノ・ボマルツォ駅)で下車します。2019年12月現在、切符は大人一枚5.75ユーロ、所要時間は1時間です。駅前からは、怪物公園までタクシー(10分程度)を利用します。怪物公園への行きは駅のバールで、帰りは公園の切符売り場などでタクシーを呼んでもらうと良いです。または、旅行会社、ツアーオペレーターが運営するイタリアの"現地オプショナルツアー"でも簡単に連れて行ってくれるものがあります。いずれもローマからの日帰りで行くツアーです。

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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