趣のあるローマ散歩!意外なローマの風情が溢れるガルバテッラ地区

公開日 : 2018年05月19日
最終更新 :

ローマの中心街から南側は、かつての工業地帯としての名残があるエリアで知られていますが、その周辺には"ガルバテッラ(伊語:Garbatella)"と呼ばれる小さな村のような可愛らしい地区があります。いつ歩いても興味深いこの地区は思わず散歩が楽しくなるローマの長閑な風景に出会えることができます。

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このガルバテッラ地区は、前回の特派員ブログでご紹介した5大バシリカの一つであるサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂(伊語:Basilica di San Paolo fuori le mura)へ繋がる巡礼の道や特に何でもない田舎の土地に公園や中庭のある3階建ての個人住宅のイギリス式庭園をモデルとした住宅街を計画的に作ろうということで1918年に産声をあげました。

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当時は、ローマの海側の町オスティアからローマの街の中心を流れるテヴェレ川を通じてこの地に水を引く大がかりな計画があり、そのためにイタリア中から働きに出る労働者とその家族のために公営住宅エリアとして提供することが大きな目的だったようだ。

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第一次世界大戦後は、住宅と自然が共存し人間らしく暮らせる住宅街を理想として、建築家によってコンクールが開催されるなど建築ラッシュもあり、緑で溢れる町づくりだけではなく、菜園もできるそれぞれ違った趣のある住宅や学校そして、劇場が並ぶという町づくりの計画が進められました。この計画を進めるにあたって最初の年は、この町のある中心からイタリア語で区画を意味するロット(伊語:lotto)を62区画に振り分けられ、そこからガリバテッラという地区の歴史が始まったと言われています。

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そして、建築学上の解釈においても"ローマの後期バロック様式"(伊語:Barocchetto Romano)という斬新的な言葉が当時、この地から生まれています。

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しかしながら、ファシズム政権の到来によりテヴェレ川を通じて水を引くという計画も中断される一方で、このガルバテッラ地区も拡大され、高層階の集合型住宅が建てられるようになった。そのことから、この地区を歩けばとガリバテッラの住民も受け入れざるを得なかったムッソリーニによるファシズムの影響も感じられることができる。

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特に顕著なのがC・バッティティ小学校(伊語:Scuola primaria "C・Battisti")で、その建物から滲み出る雰囲気がより一層、殺風景な印象を受けるだろう。

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今は、子どもたちの社交場として活躍している"D・サウリ広場"(伊語:Piazza D・Sauli)もこの付近にある無機質な小学校の存在感がまた、味気なく何とも言えない何かを感じ取ることができることとでしょう。

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ガリバテッラ地区には、娯楽施設の一つとしてローマ3大学(伊語:Università degli Studi Roma Tre)の管理下にあるパラディウム 劇場(伊語:Teatro Palladium)があります。ここは主に学生たちの管弦楽団や交響楽団等のイベントや芸術フェスティバル等が開演されていますが、日本の狂言等もここで公演した実績もあるようだ。

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また、新鮮な野菜に出会える農家直送の特選市場があり、学生運動が盛んだった時代にこの地に移り住んだヒッピーたちが描いた多彩なアートもこの地が地区というよりはまるでヒッピーたちによって開放された小さな村のような錯覚を受ける。

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近年は、ローマにあるユダヤ人居住地のゲットー地区で生まれ、アウシュヴィッツの悲劇から生還したとされるユダヤ系イタリア人のセッティミア・スピッチーノの名前を後世に残すために記念して造られた"セッティミア・スピッチーノ橋(伊語:Ponte Settimia Spizzichino)が鉄道に架かるモダンな橋として、ガルバテッラの新しいシンボルとなっているようだ。

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当初、夢見ていた優雅なイメージがあるイギリス式の庭園の町並みとその理想からはかけ離れている現在のガルバテッラ地区ではありますが、今は逆にガリバテッラに住んでいることでお洒落なイメージを人々に持たせる風潮があり、ローマでも旬な人気地区の一つになっている。そんなガルバテッラ地区は、趣のあるローマの下町そして、ただ街を歩くだけでも楽しい気分にさせられるローマの散歩エリアです。

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【アクセス方法】

地下鉄B線 ガルバテッラ(伊語:Garbatella)駅下車 中心までは徒歩で約10分

筆者

イタリア特派員

田澤 龍太郎

現地でサッカーを中心にしたスポーツ留学サポートや旅行アシスタントやコーディネーター等と現地在住の強みを活かした仕事をしながらどっぷりと濃いローマライフを満喫中。

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