佐伯・大分特派員 新着記事
806年に創立の「五所明神社」では、毎年12月15日に冬祭があります。
そこでは綱切神楽、湯立神楽が舞います。
400年以上の伝統をもつ「佐伯神楽」です。
災厄の象徴として、綱をヤマタノオロチに見立てて、面をつけたスサノオノミコトが退治するシーンが綱切神楽だそう。
そして、湯立神楽。
釜で湯が煮えたぎります。
いわゆる禊(みそぎ)のひとつ。
そのしぶきを浴びると無病息災になるといいます。
伝統行事の意義が、いまこそわかる気がします。
先人たちは、疫病との戦いをどう乗り越えて来たのでしょうか。
(記者・大野達也)■佐伯神楽
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佐伯市長谷、下城地区からの眺め。
稲刈りのあとが、秋を感じさせます。
中央にある小高い丘は、神社の社叢(しゃそう)。周囲1500m、標高57mの丘陵です。
ここは「堅田郷八幡社」(城八幡宮とも)。
佐伯十二社のひとつです。
一直線に伸びるすごい石段です(何段あるのかな……)。
南側と西側の斜面に、約1.8ヘクタールの自然林が残ります。石段は南西向きで、まさに石段に沿うように貴重な自然林が繁り、なんと皆伐されたことがないということです。
コジイやハナガガシ、クスノキ、コバンモチなど、229種の植物が林内に生育しているとのこと。
そんな堅田郷八幡社の自然林は、なんと「県の天然記念物」に指定されています。
さらに、西側の斜面に植生しているハナガガシ林は、「国の天然記念物」にも指定されています。高さ25m、直径1m近くのハナガガシまであるという。
ちなみに、ハナガガシの分布は標高400mあたりまで見られるとのことです。そのなか、「低地で多くの個体数が見られるのはたいへん貴重」であるそうです。
これは相当に大事にされてきた神社、そして社叢であったということでしょう。そうでなければ、守られてこなかった自然林のはずです。
たしかに、この神社からは特別なパワーをひしひしと感じます。
宝物のような場所、堅田郷八幡社。
よく現代にまで残してくれたものです。
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(記者・大野達也)
美しい海が広がる鶴見半島。今回は、佐伯市鶴見の「丹賀砲台」を紹介したいと思います。
ここには戦争の足跡が残ります。「忘れてはならない歴史」がここ佐伯市にもあるのです。
終戦を迎えるまで、軍拡を進めてきた日本。
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呉へのルートであった豊後水道。その防備のため、豊予要塞のひとつとして、この鶴見丹賀に1933(昭和8)年10月に丹賀砲台が完成します。
丹賀砲台には、巡洋戦艦「伊吹」の主砲が転用されています(45口径 30cm 2連装カノン砲)。
この戦艦「伊吹」からの主砲の転用については、さらに時を遡って1921(大正10)年のワシントン海軍軍縮条約との関わりがあります。
それはこの条約において、「軍艦の保有」が制限されたのです。
軍艦の持ち分を「米・英・日の軍艦保有率5・5・3」とされ、これにより廃艦となる戦艦の主砲を、陸上での活用に切り替える判断をしたのです。
そして、ここまでご覧いただきました海、リアス式の海には「丘」が隣接し、その丘の上には「砲台」があります。
それでは当時のものを活用した「施設の入口」から、「砲台」に進みます。
先の見えない急勾配の階段。「斜坑」と呼ばれ、当時もここから物資が運ばれていたものと思われます。リフトに乗れば、上までゆっくり3分。階段は162段あり、最大傾斜角度は45度の急階段です。歩けば、太ももがパンパンです。しかし、当時はここを日常的に上り下りしていた訳ですね。
井戸の中から見上げているような画ですが、これが「砲塔井」と呼ばれるまさに砲台が設置されていた部分です。
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その上にドーム状の屋根を作って、この戦争遺跡を風雨から守っています。
いよいよですが、この丹賀砲台園地であった「忘れてはならない歴史」とは、次のとおりです。
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1941(昭和16)年12月、真珠湾攻撃があり大戦がはじまります。
翌1942(昭和17)年の1月11日、戦闘に備えて実射訓練を丹賀で開始。
8発を発射し、最初の4発は射程距離1万メートル(10km)、あとの4発は射程距離2万メートル(20km)を発射。
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そして、なんと最後の1発が砲身の中で暴発してしまいます。砲塔井は根元から吹き飛ばされました……。
この暴発によって、16名の方が亡くなられています。
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米軍の提案による「ワシントン海軍軍縮条約」によって、軍艦を減らした結果。ここに転用されることとなった砲台が、米軍との大戦に備えた訓練で暴発する結末となってしまいました。
こういうたくさんの悲劇のうえに、私たちは生かされているのですよね。
ここはほんとに貴重な場所です。遠方からも多くの見学者が訪れています(意外にも、若者世代の方の写真撮影に人気の場所にもなりつつあります。歴史を知る機会が増えてうれしいかぎりです)。
この日、ドームの外にはこんな青空が広がっていました。
平和を嚙みしめながら、鶴見大島をぼんやり眺めます。
(記者・大野達也)■丹賀砲台園地
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