ドミニカ出産物語6 「陣痛促進剤の威力か、はたまた私の体質か」

公開日 : 2011年08月16日
最終更新 :
筆者 : monalisita

 その後、子宮の大きさを確認しに、再び担当医がやってきた。おしりの下に尿受けを置いたかと思うと、指を奥の方まで入れられ、あっという間に「人工破水」。破水も人工的なのねと、さらにがっくり。「分娩室に移るまで、あと3,4時間かかるだろうね。自分の楽な姿勢をとっていいよ。」と言って、先生は再び去って行った。そばにいた主人はその言葉を信じて、じゃちょっと電話かけてくるといって、部屋を出て行った。

 破水後の陣痛は、急激に間隔が早まると同時に、その回ごとに痛みを増し、もう横向きにならないと我慢できないほどになった。同室に他の妊婦さんがいることを知っていたが、ここでは恥も外聞もない。「うー、あー」と唸りたいだけ唸っていた。そして、4,5回目の強い陣痛で、もう「いきみ」を感じ始め、看護婦さんに「いきみたいんですけどー」と言うものの、「ちょっと、我慢しなさい」と言われ、「無理です。いきみます!」といきみ始めた。看護婦さんも、破水後こんなに早く強い陣痛が来て、きっとびびったのだろう。子宮口の大きさを再度確認し、急遽分娩室へと運ばれた。もちろん、自分で歩けないので、ベッドに寝たままでの移動である。

 分娩室では、先生の到着を待ち、看護婦さんたちは私に向かって「いきむのはちょっと我慢して。今そんなにいきむと疲れちゃうわよ」と言うけれど、人には我慢できるものとできない生理現象がある。そんな言葉を無視して、いきみ始めた。数分後に先生が到着し、分娩台へ。「はい、下に向かっていきんで。長―く、長―く」と先生の言うとおりに、いきむ。2回目の出産なので、なんとなく要領は分かっていたが、2回目とは言え、痛いものは痛い。陣痛の合間に、「あと2回いきめば生まれるから。ところで、旦那さんはどこだ?」と。「え、そんなに早く生まれちゃうの?」前回は、この痛みが2、3時間くらい続いたんだけどと思いつつ、早く赤ちゃんを出してこの痛みから解放されたいという思いもあり、私も頑張った。結局、合計4,5回のいきみで赤ちゃんはヌルッと出た。分娩室に移ってからわずか30分程度。ただ、赤ちゃんの頭が出やすいように、先生の手で出口付近を思いっきり広げられた感覚もあり、あーこれが会陰切開によるものね、と後になって分かった。前回助産院で出産したときは、会陰切開をせずに生んだため、皮膚が切れないように充分柔らかくなるまで時間をかけていたのだろう。

 人工的な措置は、必要でない限り極力断りたかったが、結局「陣痛促進剤」、「破水」、「会陰切開」と先生の思うままにされてしまった。そのおかげで、陣痛を感じてから出産まで1時間半と超スピード出産ができ、前回に比べれば時間が短い分だけ苦しまずに済んだことは確かである。ただ、長時間にわたる痛みを覚悟の上で自然分娩を望んでいた私にとっては、ちょっと残念であった。

 笑えるのが、朝から同伴してくれた主人が、肝心の出産シーンに立ち会えなかったこと。人工破水後、「3,4時間後に分娩でしょう」という先生の言葉を信じて席をはずした主人は、30分以内に生まれるなんて思ってもいなかったようである。先生も、この早さには驚いていた。これが促進剤の威力なのか、それとも私の体質なのかは分からない。第一子出産時も、突然強力な陣痛が来て、4時間以内に生まれてしまったのだから。もしかしたら、先生が言っていた「病院に到着する前に生まれてしまう」可能性は否定できないのかもしれない。いや、私自身が間に合ったとしても、先生をはじめ看護婦や小児科医等のアシスタントの到着が間に合わないかもしれない。先生の判断はドミニカの医療の現状を考慮したら、もしかしたら正しかったのかも知れない。いずれにせよ、赤ちゃんは無事生まれたのだから、先生には感謝しなくちゃ。

 切開部分を縫いながら、先生が「赤ちゃんの首にへその緒が巻かれていたけど、出てくる途中で外したから」と、さも自分の腕がうまい事を自慢したげだったので、「へその緒って、巻きついてもそう簡単に窒息しないくらい充分長いんでしょ」と私も皮肉った。それに対して、「へその緒の長さは超音波写真からじゃ読み取れないからね」と先生も負けじ。

 きれいに洗われた赤ちゃんを胸の上で抱き喜びを感じながら、この子と一緒に部屋で寝ることはできるかと聞いたところ、小児科医は赤ちゃん用のベッドを持って来ればいいわよと言ってくれたが、そんなの持ってないし...。とりあえず、しばらくは病院の新生児室に入れておいてもらうことにした。

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