春の行楽シーズンに備えて。札幌の「熊出没情報」をふまえて気をつけたいこと

公開日 : 2022年04月29日
最終更新 :

北海道も桜前線が到達し、ようやく若葉の季節になってきました。
まだ肌寒い日も多くありますが、毎日、目に見えて緑が増え、戸外での散策が楽しい季節が到来しました。ここ最近の札幌でのニュースから、自然散策で注意したいことについて書きます。

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札幌の自然散策スポット

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札幌市南区豊滝の森/Forest in Toyotaki, Sapporo

札幌は、人口190万人の都市で、都市機能が十分にありながら、身近に自然が多い町でもあります。
札幌に滞在する際、特にリピーターの方などは、市内の手近な自然のなかで散策を楽しむ機会があるかもしれません。
市内には、6ヵ所の「市民の森」や、自然歩道も整備され、自然に触れながら散策できるスポットとして知られています。

市民の森

  • 盤渓市民の森(中央区)
  • 白川市民の森(南区)
  • 豊滝市民の森(南区)
  • 西野市民の森(西区)
  • 手稲本町市民の森(手稲区)
  • 南沢市民の森(南区)

自然歩道

  • 円山ルート(国指定天然記念物「円山原始林」)
  • 藻岩山ルート(国指定天然記念物「藻岩原始林」)
  • 三角山~盤渓ルート
  • 中ノ沢~小林峠・源八沢ルート
  • 手稲山北尾根ルート
  • 平和の滝~手稲山ルート
  • 西岡~真栄・有明ルート(白幡山)
  • 西岡レクの森ルート
  • 有明の滝自然探勝の森(清田区)

そんななか、近年増加しており、2022年に入っては、いつになく早い時期に聞かれるようになった札幌市内での「ヒグマ出没情報」。
札幌のクマ出没ニュースを見て驚いた方もいるかもしれませんが、原生林や緑地など、自然に囲まれた札幌だからこその事情で、札幌市内にはヒグマが生息しています。

参考サイト:札幌市公式ホームページ

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北海道生息のヒグマ

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札幌市円山動物園のヒグマ/Brown bear in Sapporo Maruyama Zoo

北海道では、ヒグマは5つのエリアに分けて区別しているそうです。
そのエリアは、「渡島半島」、「積丹・恵庭」、「天塩・増毛」、「道東・宗谷」、「日高・夕張」。
エリアを見ると、北海道内ほぼ全域にヒグマがいることがわかります。

そのなかで、札幌市に生息するヒグマは、「積丹・恵庭」エリアのヒグマに属しています。
ヒグマは日本で最も大きいクマであると同時に、シロクマ(ホッキョクグマ)と並んで最も大きなクマで、オスのヒグマともなると、体長は約2m、体重は最大で400kgにもなるそう。

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北海道の民芸品、木彫り熊とニポポ人形(北大総合博物館)/One of the folk crafts in Hokkaido, at Hokkaido University Museum

それでもかつては、北海道では市街中心部や近隣でこれほどヒグマに遭遇することはなく、特に札幌などでは、ヒグマは北海道だけに住むクマとして、どちらかというと親しみを感じる存在だったように思います。
その証拠に、過去に何度か起きた北海道旅行ブームでは木彫り熊がおみやげとして人気を博し、特に北海道の家庭では、アイヌ民族のニポポ人形とともに玄関やテレビ(ブラウン管テレビ)の上、床の間などにほぼ必ずと言っていいほど飾られていたものです。

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Souvenir sweet in Hokkaido which is derived from brown bears in Hokkaido

また、木彫り熊の発祥の地のひとつといわれる八雲町では永井製菓というお菓子屋さんが「八雲の木彫熊」というおせんべいを作っていたり、同じくお菓子屋さんの千秋庵では熊をモチーフにした「山親爺」というおせんべいが人気になったり。
さらには「熊出没注意」というデザインのステッカーやTシャツなどが北海道土産も人気を博すなど、長い間、ヒグマは北海道民にとってイメージとしてはどこか身近な動物でした。

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札幌でもヒグマが出没

ところが、近年、札幌に限らず、ヒグマが市街地に出没するニュースがたびたび聞かれるようになりました。
これまでも市民は、山林にはヒグマが住んでいることは共通認識としてあり、札幌の場合、定山渓界隈の山々から中央区・西区・手稲区までは山伝いにクマが出没する可能性も知ったうえで生活をしています。

夏には、南区・中央区・西区を中心に毎年のようにヒグマの出没が確認され、ときには野外イベント開催地の近くでヒグマの出没の可能性がある場合は、飲食ブースの出店を見合わせ、ヒグマの出没を回避する対策を行うこともでてきました。

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そのようななか、2022年3月31日、札幌市西区では登山道でヒグマの調査を行っていたときにヒグマに遭遇してしまい、付近にヒグマが冬眠していた巣穴もあったとのことで、現在、その登山道は閉鎖されています。

例年、3月にヒグマが巣穴から出てきたところに遭遇したケースはなく、また、これほど民家が間近な付近に巣穴が確認されたことはなかったなど、例外が重なって起きたケースです。
2021年には、市内の丘珠空港や民家の真ん中にヒグマが出没したニュースも話題になりました。

そして2022年3月31日にヒグマと遭遇して以降、札幌市内での熊らしき動物の目撃情報、実際にヒグマと確認された目撃情報が相次ぎ、札幌市公式ホームページによると、4月には18件の目撃情報が寄せられ、そのうち8件で"ヒグマ"の目撃情報として断定されています。

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自然散策で気をつけたいこと

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道東の川の中にみつけたヒグマの足跡/Foot steps of a brown bear in the river at Eastern Hokkaido

ヒグマの習性としては、人間には遭遇したくないので、かつてのヒグマは人の気配をあらかじめ察知すれば、一般的にはヒグマのほうからは寄ってこないといわれています。
このため、全国的な共通認識でもありますが、登山の際は安全のためにクマ避けの「熊鈴」を持ち歩いたり、音を出すものを携帯したり、場合によっては、声を出しながら歩いたりもすると思います。

札幌市民は、今でも常にヒグマを恐れながら暮らしているわけではありませんが、山や森へ入るとき、特に森が近く、薮が茂っている場所には、単独では山や森に入らないようにしたり、熊鈴持ったりして、音を出しながら歩くように留意しています。
このため、山や森に近い広い公園などで、熊鈴を身につけて日課のウォーキングをしている人を見かけることもあります。
もちろん、熊出没の情報がある際は、その場所は避けるようにします。

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最近では、登山のほか山菜とりやハイキングで熊鈴のほかに持った方がよいといわれているのが、「熊よけスプレー」です。
万が一にヒグマに遭遇してしまったとき、ヒグマに向かってスプレーし撃退する目的の唐辛子の成分でできたスプレーですが、スプレー噴射の到達距離は約5m、風向きによっては自分にかかってしまうため使用には難しさもあり、やはり、遭遇しないよう気をつけて行動することが最も大切です。

ヒグマが行動するのは、特に早朝・夕方以降から夜間に多く、また、人間を視覚で認識しにくい時間だったりするので、山や森、その近隣を利用する場合は、この時間を避けたり、より注意することが大切です。
札幌市では、公式ホームページで「ヒグマ出没情報」を公表しています。
また、実際にヒグマ出没と確認された情報に加え、ヒグマらしき動物を見た、という未確定情報を含め、ホームページで閲覧が可能です。

なかには、犬を見間違えて警察に通報したケースなど間違い情報があるものの、実際にヒグマの出没が確認され、登山道などが立ち入り禁止になっている場所もあるので、「市民の森」や「自然歩道」、そのほかの山などにアクセスする予定がある場合、また、札幌市内でのヒグマの出没状況が気になる方は、札幌市ホームページをご確認ください。

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北海道では、ようやく春らしい暖かな日が増え、人や動物・昆虫が動き出す季節です。
札幌でのヒグマ出没については、必要以上に恐れる必要はありませんが、的確な情報の入手と留意点の確認などを行い、安全に楽しい旅を続けてください。

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筆者

北海道特派員

市之宮 直子

小樽生まれ、江別育ち、札幌在住のフォトライター。三度の飯より北海道を撮ることが好きな道産子北海道Loverです。

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