光復節に

公開日 : 1998年08月15日
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 ソウルで暮らす日本人にとって、どうしても緊張してしまう日が光復節です。過去、日本は朝鮮半島を足掛け36年にもわたって植民地支配していました。韓国人にとって8月15日は植民地から解放されたおめでたい日。道のいたるところに、国旗が掲げられ、テレビでは光復節特集の番組を流したり、街ではさまざまな記念式典が行われます。 わたしは日本と韓国の大学生といっしょに、元日本軍「慰安婦」のハルモニ(おばあさん)が暮らす「ナヌムの家」に行ってきました。ソウルからバスで1時間半ほど走った田舎にその家はあります。「ナヌム」とは韓国語で「分かち合い」を意味し、半世紀以上にわたって沈黙を通してきた被害者の女性たちの生活の場になっています。その生き生きとした生活や個性あふれる彼女たちのバイタリティは、同名のドキュメンタリー映画(監督ビョン・ヨンジュ、現在日本各地で巡回上映中)によって世界中の人に知られるようになりました。 14日はちょうど日本軍「慰安婦」歴史館の開館式があり、日本からも100人ほどの出席者がありました。山に囲まれた「ナヌムの家」の前に建てられた歴史館には、すでに亡くなったハルモニの遺品や、再現された慰安所の部屋、「慰安婦」制度の実態を伝える資料などが展示されています。 歴史館の中には大勢の見学者にまじって元「慰安婦」のハルモニたちの姿が見えました。当時のことを実際に体験していないわたしにとって、被害者の女性たちの苦しみと悲しみに満ちた人生を理解するのはなかなか難しいことです。歴史とはいっても、遠い昔のことではなく、今を生きている当事者の存在感を強く感じられる時間でした。  「ナヌムの家」の歴史館を訪れて、もうひとつうれしかったことがあります。わたしの大好きな芸術家、ユン・ソンナムの作品が展示されていたからです。見上げるほど大きなこの作品は、「光の美しさ、生命の貴さ」という名前がつけられています。 ハルモニの肖像の前には、香炉とろうそくが置かれ、歴史館の中でここはハルモニたちの霊魂と、わたしたち自身の霊魂を同時に慰霊する場になっています。女性の生を表現しつづけてきたユン・ソンナムならではのあたたかくて力強い作品です。「ナヌムの家」歴史館の行き方:地下鉄2号線江辺(カンビョン)駅前より京幾道広州(クァンジュ)行きのバスに乗って、退村面(テェチョンミョン)・ウォンダンリ入口で下車。村へはタクシーで5分。電話(0347)768−0064 

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式典の最後に韓国伝統打楽器の演奏に合わせて踊るハルモニたち。

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