夏だけ味わえるもの パート2

公開日 : 1999年08月20日
最終更新 :

 人の味覚というのは不思議なもので、どんなに他の人がおいしいと言っても、自分の口には合わないものってありますよね。食わず嫌いの場合もあるし、口に入れた瞬間、生理的に受け付けない味もあるでしょう。また、いくら食べてみても、その味の魅力がさっぱりわからないこともあります。 特に外国に暮らしていると、食文化は初めて体験するカルチャーショックであり、永遠のテーマでもあります。食べることに人一倍情熱を燃やすわたしもそうです。韓国に暮らして1年くらいで、だいたいの韓国料理は一応食べ尽くし、その好き嫌いもできてきました。幸いなことに、唐辛子もニンニクも大好きなので、それほど抵抗のある食べ物はなかったように思います。 3年くらい経った頃からでしょうか、わたしの知らない食文化がまだまだあることに気づきました。「え〜!こんな料理があったんだ」とか、「この食材をこんな風に食べることもあるんだ」とか、感動とショックの発見が時々ありました。その料理は決してゲテモノの類や特定の地域の郷土料理ではなく、韓国人なら誰でも知ってるというようなもの。 今日ご紹介するのは、そんな料理。お手持ちのガイドブックにこの「コンククス」が載っていたら、その本はかなりの食通か変わり者が作ったと言えるでしょう。そのくらい「コンククス」は、韓国人には夏の味でも、外国人は気がつかない不思議な料理です。「コンククス」は直訳すれば「豆麺」になりますが、麺はそば粉で作られていて、豆はスープの方です。 「コンククス」という料理を説明するのは大変です。日本にはない料理ですし、その味の魅力は食べた人にしかわからないからです。とても簡単に言ってしまえば、「冷たい豆乳の中に、そばが入っている」料理です。でも、こう聞いて、おいしそうだと思う人はあまりいないでしょう。実はわたしも初めて「コンククス」を目にしたとき、あまり好きではない「豆乳」の印象が強く、食わず嫌いになってしまっていました。  夏になると、いわゆる「粉食店(プンシクジョム)」と呼ばれる、麺類や餃子、肉まんといった小麦粉で作ったものを出す店には、「コンククス」と書いた紙が貼られます。どうしてか、とても控えめに目立たない字で書かれているのが普通です。ある韓国人からは、それが「コンククス」らしさだと言われ、ますますわからなくなったこともありました。「コンククス」はなんと言っても素材の質が決め手の料理。おいしい店で食べなければ、わたしのようにその魅力に気付くのに何年もかかってしまいます。 骨董品の街、仁寺洞(インサドン)の路地裏、古い韓屋(ハノク)の建ち並ぶ中に、とびきりおいしい「コンククス」を出すレストランがあります。韓国南部の聖なる山、「チリサン(智異山)」の名が付いたその店は、その名に恥じない料理を出すところとして最近評判です。 厳選した国産大豆を茹でて、とろとろになるまで挽いたものに、清水と塩を加えてなめらかで濃厚な豆のスープにします。冷えた豆のスープにそばを入れ、トマトやキュウリなどの野菜を飾って出来上がり。作り方はシンプル、味付けも塩だけという簡単なものですが、「コンククス」は実に奥が深い味わいがあります。香ばしく甘いにおいのする豆のスープは、真っ白ではないやさしい白です。口に含むと、ふわふわでとろりとしています。味は滋味に富み、奥ゆかしい魅力を感じます。 「チリサン(智異山)」で暑いときに食べる「コンククス」、気持ちよく汗が引き、心身がさわやかに落ち着いてくるのを感じるほどです。9月に入っても日中は残暑が厳しいですから、ぜひお試しを。***チリサン(智異山)***行き方:地下鉄3号線安国(アングッ)駅下車徒歩5分。仁寺洞(インサドン)通りに入り、左に「学古斎(ハッコジェ)」というギャラリーがあったら、角を左に曲がる。路地を進み、突き当たりで左に曲がると右手にある。新しく建てられた落ち着いたトーンの韓国風の2階建て。電話:02−723−4696メニュー:「コンククス」5000ウォン、「スンドゥブ・チゲ(豆腐の鍋)」5000ウォン、「チリサン定食」10000ウォン

コンククス

香ばしく甘いにおいのする「コンククス」は見た目も、美しい。にがりを入れる前のゆるゆる豆腐、「スムドゥブ(息をしている豆腐)」も美味。いっしょに頼めば、こんなにたくさんのおかずといっしょに食べられる。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。