走井「月心寺」~逢坂の関に忘れられたかのような、侘びさびの名園

公開日 : 2018年12月05日
最終更新 :

忘れられた逢坂の賑わい

先日の「和ウトドア」Fさんとの山科ディープサイクリングの続きです。

私が往路を小関越えから来たということで、大津の追分方面へ向かいましょうというということに。

追分とは古代三関のひとつ「逢坂の関」が置かれていた場所です。

小倉百人一首で有名な蝉丸法師の「これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関」の歌にあり、東海道を京から大津へ出るための最初の関門となります。

ここは江戸期まで大津宿として東海道随一の賑わいを見せていた場所でしたが、近代の交通網の整備により、ただ通りすぎるだけの道へ変貌してしまいました。旧東海道は現在非常に交通量の多い国道1号線として今も変わらず大動脈ではありますが、そんな国道の脇にに今回ご紹介する「月心寺」は、時が止まり忘れられたかのように佇んでいます。

普段は門が閉められ、雰囲気を感じる庵が茂みに見える程度で、何気なく通りすぎていました。この日たまたま不定期で公開されていたタイミングに出くわし、二人ともこれはラッキーと飛び込んだのです。

月心寺へ

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撮影:Funazushi-maru

なんと、暖簾には❝御蕎麦❞の文字。

そうなんです、この暖簾が掲げられている日は手打ち蕎麦を月心寺にて食べられるのです。これは興味津々!

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撮影:Funazushi-maru

門を潜ると、「走井」と掘られた石造りの井筒が。

井筒と聞くと、京都の生八つ橋「夕子」で有名な井筒八つ橋本舗が思い浮かびます。この月心寺には水が走るほどに湧き出る「走井」という井戸があり、東海道の茶屋として旅人に茶や餅を提供し人気を博していました。その餅は今も「東海道大名物 走り井餅」として大津の走井餅本家で作られている他、なんと井筒八つ橋本舗(オンライン販売)でも販売されています。面白いですね。

外からは見えなかった中の建物へ入ると...

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撮影:Funazushi-maru

二方全面が古く味わいあるガラス戸となっており、その先には見事な庭園が広がっていました...

蕎麦を待つ間、月心寺やこの庭園の由来などの説明を聞かせていただけます。

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撮影:Funazushi-maru

この日は寒かったので暖かいにしん蕎麦で腹ごしらえ。蕎麦の甘味をしっかり感じる大変美味しい蕎麦でした。

走井庭園

せっかくの機会なので、建物から外へと出て庭園の拝観をさせていただきます。(拝観料500円)

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撮影:Funazushi-maru

右手の建物は明治天皇が維新後の全国への行幸の際、京を出て初めてご休憩された御座所。こちらも実際に入ることができます。

二つの建物に囲まれるように池が配置され、その池の奥には山の斜面がそのまま生かされています。

見頃を迎えた紅葉の先に、山の斜面に建てられた茅葺きの庵が...

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撮影:Funazushi-maru

こちらの庵は「百歳堂」と呼ばれています。なんとここは平安時代の伝説の美女・小野小町が百歳になり生涯を閉じるまで過ごしたと言われるところなのだそう。

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撮影:Funazushi-maru

苔むした石段を登り百歳堂に入ると...

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撮影:Funazushi-maru

庭園を真上から眺めることができる素晴らしい景色の場所でした。こんな景色を毎日眺めていたら百歳まで生きられますね。

百歳堂には小野小町百歳の時の像が安置されており、今もこの景色を眺め続けています。(撮影不可)

走井庭園には他にも見どころが。

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撮影:Funazushi-maru

薬師堂には珍しい石造りの薬師如来像や、

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撮影:Funazushi-maru

庭園上方にひっそりと佇む「三聖祀堂」。もうかなり古びて荒れ果ててはいますが、こちらには蝉丸法師が過ごしたと言われています。

庭園には俳聖・松尾芭蕉の句碑もあり、庭園全体で侘びさびの世界を深く感じることができます。

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撮影:Funazushi-maru

そして何やら聖域の雰囲気のある場所がこちら。これが名水「走井」の元井戸。

今も僅かながら湧き出ており、庭園の池へと注がれています。

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撮影:Funazushi-maru

こんなにも素敵な庭園が、この時は2人だけで堪能できました。

車が轟々と走る国道脇の塀の向こう側に、これほどの静寂の世界が広がっているとは想像もできず、その景色にただただ圧巻されながら言葉も発せずカメラを向けるだけの時間が過ぎていました。まさに現代と過去を隔てているかのようなこの空間。

大袈裟ではなく本当にタイムスリップしたかのような感覚がここにはありました。

普段何気に通り過ぎている道の向こう側に、もしかすると他にも素晴らしい世界が広がっているのかもしれませんね。

【瑞米山 月心寺】

〇場所:〒520-0062 滋賀県大津市大谷町27-9

〇TEL:077-524-3421

〇HP:http://gesshinji.jp/

〇アクセス:

 JRもしくは京阪電鉄「山科」駅より、京津線浜大津行きに乗車し「大谷」駅にて下車。

 西に徒歩10分。

筆者

滋賀特派員

フナズシマル

皆様に是非訪れてほしいマニアックな滋賀のマニアックなスポットをご紹介していきます!

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