「アジアのベストレストラン」に輝き続ける名店"Iggy's"

公開日 : 2014年06月28日
最終更新 :

世界中の美味しい物が食べられる、美食の街・シンガポール。今回は、毎年、サンペリグリノの「アジアのベストレストラン」にランクインしている他、様々な賞を獲得している名店、イギーズをご紹介します。

th_IMG_7271.jpg

店名の由来でもある、「イギー」の愛称で知られているオーナーで、世界的に有目なソムリエでもある、Ignatius Chan(イグナシウス・チャン)さんは、大の日本びいき。メニューを見ても、"Sea Urchin(雲丹)"や、"Kinome(木の芽)"などの単語が並びます。

これまでも、京都と丸の内にある、京風イタリアンの店、「ギオットーネ」の笹島シェフを招き、コラボレーションしてフェアを行ったりと、日本の食材を生かした、新しいヨーロピアンキュイジーヌを目指しています。

そして、去年の12月からこのイギーズを率いる事になったのが、磯野将大ヘッドシェフ。香川県出身の磯野シェフは、関わりの深いそのギオットーネで修行を積んだ33歳。2年ほど前からイギーズのメンバーに加わっています。

この日は、235シンガポールドルの、平日限定のディナーコースを基にいくつか食べたい物をお伝えして、アレンジしていただきました。

th_IMG_7278.jpg

調理風景を一部見る事ができる、お寿司屋さんをイメージしたカウンターは、ライブ感もたっぷりです。

まず、提供されたのが、レンコンやゴボウ等が、カリカリに揚がった野菜チップと、胡麻を練り込んだグリッシーニ。どちらも軽やかな味わいです。気楽にリラックスして食べて欲しいと言う事でしょうか、野菜チップが、手に持って食べられるような、中華のテイクアウトボックスのようなものに入っているのが、面白い演出です。

th_IMG_7287.jpg

続いては、すりガラスでできた、丸い器が登場。開けると、中から白い煙が。同時に、スモークの良い香りが鼻をくすぐります。そして、煙の奥から、真っ黒い何かが登場。その名も、「Burnt Oyster(黒焦げの牡蠣)」。

th_IMG_7289.jpg

そっとお皿に取りナイフを入れると、中からジューシーな牡蠣が登場します。牡蠣の下には、小さく切った昆布と藁が。

th_IMG_7291.jpg

藁の香りは牡蠣などの海の幸と良く合うと言う事で、使っているそう。炭の入ったカリッとした歯応えの熱々の衣と、中のジューシーで良質の牡蠣は、どこか懐かしい香りのする味わいでした。

それから、溶岩焼きに使うような黒い石のプレートに載って出て来たのは、何と串に刺さった穴子に、木の芽を散らした物と、桜エビをボール上にした天ぷら。 まさか、こんな「和」のムードたっぷりの物が出てくるなんて。

th_IMG_7297.jpg
th_IMG_7298.jpg

穴子はとろけるような食感で、たっぷりまぶした木の芽の香りが印象的。桜エビも、さくっとした軽い歯応えで、天ぷら屋さんの揚げ物のよう。

続いて出て来たのは、旬の稚鮎をからっと揚げた物。

th_IMG_7303.jpg

実は、魚介類や野菜は週に2回、築地から直接空輸しているのだとか。下に敷かれたソースは、稚鮎のワタも使った、ほろ苦いもの。磯野シェフによると、シンガポールの人たちにも、この「苦み」の美味しさと言うのは受け入れられて来ているそう。合わせて出て来たのは、マグロのタルタル。上質でとろけるような、マグロの赤身に、松の実やオリーブオイルを合わせ、花紫蘇が散らされた、目にも美しい一品。

th_IMG_7301.jpg

そして、横のトマトのゼリー。トマトの純粋なエッセンスそのものを凝縮したような、クリアなゼリーは、夏の日に生でかじったトマトの味わいの純粋な部分を、極限まで高めて抽出したような味わいでした。

th_IMG_7299.jpg

パンは、グルテンフリーのものも選べますが、私は普通のものをいただきました。ちなみに、ベジタリアンのメニューもあり、シンガポールならではの、多様なニーズに対応できるようになっています。バターは有塩の、濃厚な味わいの物でした。続いて出て来たのは、ホタルイカや新鮮なマグロのトロなどの刺身を、ブッラータチーズと合わせたもの。

th_IMG_7307.jpg

ネギの香りのするとろりとしたソースや、宇和ゴールドというジューシーな柑橘類と合わせてあり、ホタルイカの「ぬた」を、新しい切り口で提案しているようにも感じられました。

そして、サプライズで出していただいたのは、スライスしたトリュフの上に乗った、丸のままの黒トリュフ!

th_IMG_7313.jpg

ではなくて、実はキヌアに包まれた、蟹肉のコロッケ。サービススタッフから、「黒トリュフです、お好きなだけスライスしますが、いかがですか?」と出され、漂うトリュフの香りに、一瞬信じかけてしまいました。「ふふふ、びっくりしました?」と、後でいたずらっ子のように顔をのぞかせた磯野シェフ。カリカリのキヌアの歯応えが楽しく、また、トリュフの香りと蟹の相性は、もちろん最高でした。

ウニ好きの私にとって、今回のハイライトでもあったのは、「ウニのリゾット」!

th_IMG_7314.jpg

小さなストウブ鍋に入って熱々で提供されたのは、びっくりするほど甘いスイートコーンの入ったリゾット。そして、その上には濃いオレンジ色のウニと、黒トリュフが。ウニの濃厚な香りと舌触りに、スイートコーンの甘みがよく合います。

続いては、メインの一皿目、お魚料理。

th_IMG_7318.jpg

アマダイは鱗の部分がパリパリに仕上げられ、新しい食感を創り出しています。

th_IMG_7320.jpg

そして、トマトの自然な酸味を生かしたソースには、なんとジュンサイが。トマトの種のまわりの部分のような、つるっとした面白い食感を与えてくれます。

お肉は、お願いして和牛に変えていただきました。

th_IMG_7323.jpg

ホワイトアスパラガスとモリーユ茸、ジロール茸の野の香りで、重すぎない一皿に仕上げられています。

ロゼ色の絶妙の火入れで仕上げられた和牛は、きめ細かい肉質に旨味がぎゅっと詰まっています。

デザートの一皿目は、ビワのコンポート。

th_IMG_7330.jpg

甘すぎず、自然な味わいで、すっとお腹に納まります。旬の味覚を取り入れているのも、常に最上のものを提供したいと言う、レストランのポリシーの一つだとか。

二皿目のデザートは、「チェリー」。

th_IMG_7332.jpg

真っ赤なチェリーのソルベの下には、すっきりとしたヨーグルトのクリーム、そして緑茶とヘーゼルナッツのクランブルが。チェリーの酸味と緑茶とヨーグルトのさっぱり感、ヘーゼルナッツのおかげでしっかりとコクもあります。

どちらも、「満腹のはずなのに、気づいたらお皿が空になっている」不思議なデザートでした。

更に「Hinoki Box」という、檜の箱に入ったチョコレートが頂けます。

th_IMG_7333.jpg

まるで箱庭のようなしつらいです。私は、どれも気になったので一つずつ頂きました。懐かしいパチパチキャンディーが入ったチョコレート、マカロン、ギモーヴ(マシュマロ)やボンボンショコラ等。

th_IMG_7336.jpg

私はカルダモンの入ったスパイシーなマカロンと、トリュフ入りのバタークリームを挟んだ、塩気と甘みの対比が楽しいマカロンが特に気に入りました。

最後に、滑らかなフォームのラテを頂いて締めくくり。

th_IMG_7337.jpg

ヘッドシェフとして、日々新しいメニューの開発に取り組んでいる磯野シェフは、暑いシンガポールだけに、「酸味」を上手く使う事を常に考えているとか。

日本人の私の目からすると、新しい感覚の物と、正統派の和食がバランス良く出て来ている印象です。創意工夫に満ちた、新しい感覚のお料理も美味しく楽しめましたが、その根底を流れる磯野シェフの考え方の基本は、「シンプルなものにこそ、大切なものが宿っている」と言う事。穴子の骨切り、魚のさばき方にしても、心を込めて、丁寧に行う。またその事を、シンガポールの若いシェフ達にも伝えて行きたいと話していました。「シンプルなものが好き」という磯野シェフ。どうしても「足し算」になりがちなフュージョン料理ですが、繊細な技術に裏打ちされた丁寧な仕事だからこそできる、潔い「引き算」が、コースの満足度と完成度をより高めているように感じました。

繊細な日本料理の息吹を感じる、モダンヨーロピアンキュイジーヌの名店です。

<DATA>

■Iggy's

住所:Hilton Hotel Level 3, 581 Orchard Road, Singapore 238883

電話: +65 6732 2234

営業時間:ランチ12:00~13:30(L.O./平日のみ)、 ディナー19:00〜21:30(L.O.) 日曜・一部祝日休 

アクセス:MRTオーチャード駅から徒歩5分ほど

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。