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シンガポール/シンガポール特派員ブログ 仲山 今日子

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2015年2月 4日

【閲覧注意】本国インドでは危険すぎて開催禁止。奇祭に込められた祈り「タイプーサム2015」


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【閲覧注意】本国インドでは危険すぎて開催禁止。奇祭に込められた祈り「タイプーサム2015」

インド発祥のヒンズー教の祭りながら、危険すぎて本国では開催されず、シンガポールとマレーシアでのみ開催されていると言う祭り、「タイプーサム」。
まるで針山のように体に刺した針で、カバディと呼ばれる神輿を支えて担いだり、山車のように引いたりして、神に感謝したり、願い事をしたりするヒンズー教の祭りです。

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麻酔もなしに、体に太い針を刺すので、端から見ているととても痛そう。それでも、一ヶ月ほど前から肉食をしない、アルコールをとらない等、心と体を整えて臨めば、決して痛くはない......のだとか。
神輿を担いだ信者は、スリ・スリニバサ・ペルマル寺院から、スリ・タンダユタパニ寺院まで、およそ4.5キロを、家族や友人と共に、願いや感謝を込めて練り歩きます。

ヒンズー暦の為、毎年日程は変わりますが、今年、2015年は2月3日。まずは、開始地点のスリ・スリニバサ・ペルマル寺院に向かいます。MRTファラーパーク駅すぐそばですが、パレードが行われるセラングーン通り沿いは交通規制が行われている為、寺院の裏口から入る形です。駅を出ると交通規制の係員が案内してくれるので、すぐ道は分かると思います。
寺院の中は土足厳禁。皆さん入り口に脱いでありますが、ビニール袋を持って行って、履物をバッグにしまうと良いと思います。

(靴を履いたままの外国人観光客の姿もちらほら見かけますし、正直あまり地面は綺麗ではありませんが、ヒンズー教の方々にとっての神聖な祭りです。きちんと敬意を持って、「見せていただく」という気持ちを表す為にも、靴は脱いでくださいね。出口のそばに水道があって、帰り(日本の神社で手と口をゆすぐのと同じように、本来は入る際にも洗います)は足を洗えるようになっています。ちなみに、針が落ちていることもあるので、歩く際は気をつけてください。)

太鼓の音楽が鳴り響く中、祈りのような歌が聞こえます。その歌に合わせて、半円の形の神輿の土台を通して、様々な形の針が直接体に刺され、神輿が飾られて行きます。

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矢のような太い針を体に刺して、大きな神輿を支えたり、
鉄の釘で出来た、剣山のようなサンダルを履いたり。

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神輿ほど大きなものではなく、体に鉤針のようなものを無数につけて、その先にライムや木の枝をぶら下げたりしている人もいました。

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刺されるときは、息を止めて、痛みをこらえている人、目を閉じて祈りの言葉らしきものを唱えている人、逆に、クールに表情ひとつ変えない人も。
神輿のスタイルも色合いも様々で、神様の絵が描かれた神輿は、上の部分が動くようになっていたり、電飾がついていたり、薔薇の造花やクジャクの羽が飾られていたりと、きらびやかです。

基本的に女性はミルク壷を頭に載せて歩くことしかできない、と聞いていたのですが、一人だけ女性の姿も見かけました。

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準備が整った順に、本堂を通って外に出ます。

本堂の前では、重い神輿を担ぎながらひざまづいたり、神妙に手を合わせて目を閉じて何かをつぶやいたり、歌に合わせて踊りを奉納したりと、それぞれの形で、神様に祈りを捧げて出発します。同行する家族や友人は、歌を歌ったり、太鼓や手拍子、「フレー、フレー」というかけ声で励まします。

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さて、寺院を出た後は、その家族や仲間と共に、一部通行止めになった道をパレードして歩きます。

伝統的な腰布ひとつで、この、痛々しい見た目の神輿を担いだ人々が都会的なシンガポール中心部を練り歩くのは、(目的地のスリ・タンダユタパニ寺院は、大統領官邸にもほど近い、MRTドビーゴート駅から徒歩5分ほどです)不思議な光景です。

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暑い中の行進なので、所々に、同行の人の為の給水ポイントがあり、ジュースや紅茶が振る舞われています。

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家族や友人が参加している訳ではない人は、沿道で行列を待ちながら、ピクニックのように食事やスナックを食べながらくつろいでいたりして、この辺りは日本のお祭りと同じような感じがします。

終点のスリ・タンダユタパニ寺院を抜けて、終了地点へ。ここで、やっと重い神輿と、針を外すことができます。刺さっている部分に水を掛け、ひょいひょいと抜き、傷口に神聖な牛のフンの灰を塗っていきます。

刺している数が、多い人と少ない人がいるのですが、かなりハードな刺し方をしている人がいたので、全部抜き終わって、少し落ち着いた後に話を聞いてみました。

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「おめでとうございます」と声を掛けると、ありがとう、と、高揚感に満ちた表情で、自ら手を出して握手してくれました。あんな苦行をしたにも関わらず、汗ばんでいるわけでもなく、温かくて分厚い手のひらでした。
インド系シンガポール人のChellanさん、37歳。

痛くなかったですか?と、当たり前ながら聞いてみると、
「最初のうちは、痛いけれども、歩いて、何度か音楽に合わせて踊っているうちに、それが気にならなくなってくるんだよ。」との答え。
そして、あんなに針を刺して願うからには、何か大病を患っている家族がいるとか、重大な理由があるに違いないと思って、何を祈ったんですか?と聞いてみると、
「妻が今年も健康に暮らせますように、と祈ったよ。あぁ、彼女が妻だよ。去年結婚したばかりなんだ」と、嬉しそうに紹介してくれました。ちなみに、奥さんは健康そのものだそうです。

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やっぱり、ここまでしてもらうと、女性として嬉しいのかしら。
まだ、口や舌に刺さった針を抜いたばかりで、喋るのが少し辛そうなChellanさんの横で微笑む妻のRenukaさん(34)に、ちょっと本音を聞いてみたくて、
奥さんの健康を祈って、こんな風に苦行したとおっしゃっていましたが、やっぱり惚れ直しますか?と、ちょっと冗談めかして聞いてみると、

「嬉しいけれど、もちろん、私だけじゃなくて、家族全員の健康を祈ってくれているの、毎年ね。実は、彼は21歳の時から16年タイプーサムに参加しているのよ。昔から彼のことは知っていたから、とても自然なこととして受け止めているわ。」

ニコニコ笑いながら、そんな答えが返って来ました。毎年、当たり前のこととしてこんな苦行を受け入れる。参加している全員がそういう訳ではないでしょうが、この伝統が、ごく自然に息づいていることに、驚きを感じました。

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実際に生で目にするまでは、痛々しい、という感想しか抱かなかったタイプーサム。体を串刺しにするという、見ようによっては、野蛮にも受け取れるこの苦行の、本当の意味が見えたような気がする瞬間がありました。

出発地点のスリ・スリニバサ・ペルマル寺院で、「閉門は午後5時、そろそろ早めに列に並んでください」というアナウンスが流れる中、今から準備を始める、という若者を見つけました。どうやら、今回初めて参加するようです。
何人もの男性が、思い切り若者のウエストに布を巻き付けています。初心者は特に、針だけでなく、お腹でも神輿を支える為、しっかり巻き付けないと、鉄製の重い神輿を担ぐのに危険なのでしょう。

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体に刺す針は、比較的皮の上の部分だけを刺しているのか、見た目はそれほど出血はしていません。それでも、直接針を刺すので、若者は痛さをこらえる為に、リンゴを噛んで耐えていました。

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様々ある苦行の中でも、一番痛そうなのは、舌や頬を串刺しにすること。
これは、全員がやっている訳ではありません。でも、ほぼ支度が整った後、年配の男性が、若者の頭を抱えるようにして何かをささやいているのを見て、この若者も、この苦行をするのだと直感し、カメラを回しました。

以下の映像は、その時の様子です。痛々しいのですが、このタイプーサムという祭りの何か根源的なものを表しているような気がしたので、そのままアップロードします。(くどいですが、苦手な方は、決して見ないでください)

頬に針を刺す若者(Youtubeに飛びます)

映像を説明すると、まわりの男性たちが祈りにも歌にも聞こえる声を出しながら、若者を取り囲みます。そして、年長の男性が目を閉じた若者の頬にゆっくりと針を刺して行きます。刺し終わると同時に、祈りの声は止みます。目に涙を溜めながらも、若者は毅然として上を向きます。

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「なぜ、現代において、しかもシンガポールのような都市国家で、このような祭りが今も行われているんだろう。」
それが、この祭りを知ったときの私の正直な感想でした。
奇祭、と言われるのも納得の、奇抜な見た目。それに惹かれてやって来た部分も、私の中にはもちろんありました。

様々な受け取り方ができる映像だと思います。中には、狂信的な怖さを感じる方もいるかも知れません。

地元のインド人のみならず、外国人観光客(私もその一人です)がカメラを向ける世俗的な雰囲気の中、それでもそこにあったのは、何かとても神聖なものでした。

病気を治したいなら、病院に行けば良い。
勉学の向上を望むなら、勉強すれば良い。

それが、現代では当たり前の、合理的な近道です。
でも、それとはまるで正反対の、自らの体を痛めつけることで、神に祈る。

非合理的に見えることを、それでもなお、やり通すことに、
限りなく純粋で強い、祈りを感じました。

信じるものがあるから、やり通せる強さ。
若者の頬に針が刺さる瞬間、まわりからわき上がるように起こった声は、まるで若者に力を与える為の祈りで、その祈りに後押しされて、彼はその痛みに耐えられたのではないか。若者と周りの男性たちとの強い絆が見えた気がして、そんな思いが胸をよぎりました。

こんな非合理的なことを、自分はできるだろうか。
非合理的に見えることを、信じきれるだろうか。

そして、こんなに強く、祈れるだろうか。

現代という時代において、何か置き忘れて来たものを、見せられた気がしました。

奇抜な祭り、としてではなく、苦行という形をとった人々の純粋な祈りを、ぜひ感じに行ってみてください。

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2015年2月 4日
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      シンガポール特派員
      仲山 今日子
      元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイドブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。

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