ミシュラン獲得タイ料理と中華の重鎮のコラボ「Man Fu Yuan」
ミシュランの星付きレストランの味を気軽に楽しめるダイニングイベント、100グルメ。
6皿のディナーコースで一人100シンガポールドル、3皿のランチコースが2人で100シンガポールドル(シティバンクカード使用の場合)という期間限定のプロモーションに、今回はタイ料理が初登場です!
今月やってきたのは、世界で2店しかない、タイ料理のミシュラン星付きレストラン、「Kiin Kiin(キンキン)」のHenrik Yde(ヘンリック・イデ)シェフ。もともとはフレンチのファインダイニングで働いていたHenrikシェフ。休暇で訪れたクラビでタイ料理に魅了され、今から10年前にオープンしたレストランは、カレーをアイスクリーム仕立てにするなど、フレンチのファインダイニングで使われている現代的な手法を使い、新しい切り口で提案するタイ料理の先駆けとして人気を集めています。
アジアの発酵食品の豊かな味わいに魅せられているというHendrikシェフは、タイ料理に欠かせない魚醤に始まり、調味料などもすべて手作りにこだわっているだけでなく、最近は発酵食品に関する本を出版。日本のしょうゆの作り方や韓国のキムチの作り方もマスターしたそう。
2通りあるコラボレーションのうち、最初の一つは、インターコンチネンタルホテルのメインダイニング、Man Fu Yuanのエグゼクティブシェフで、シンガポールシェフ協会の副会長で、料理界の重鎮でもある、Eric Neoシェフとのコラボレーション。祖父母の代からシンガポールに住んでいるという、生粋のシンガポール人のEricシェフが作るのは、伝統的な広東料理をベースにしたモダン広東料理。和食にも興味がある、と、今回は和のフレーバーのあるメニューも登場します。
まずは、Henrikシェフによる、Frozen Tom Ka。
トムカーガイと呼ばれる鶏肉とココナッツミルクのスープは、液体窒素で凍らせてクランブル状に。甘酸っぱいマッシュルームと、鶏肉の皮をあぶって作ったクラッカー状のもの、マッシュルームとマッシュルームのピュレ、そしてアールグレイのゼリーという組み合わせ。トムカーガイはHenrikシェフが初めて食べたタイ料理で、レストランをオープンした当初からメニューにある一皿だとか。スープを凍らせるというアイデアは、暑い夏の間も、おいしくスープを食べてもらいたいという思いからだそう。
実際に食べてみると、口ですっと溶けるひんやりしたスープは、常夏のシンガポールで食べる一皿目としてもうれしい涼感あふれるメニュー。カリカリとした鶏の皮にはしょうゆのような香ばしい香りとうまみがプラスされています。柑橘系の香りをまとったマッシュルームの酸味が、トムカーガイの酸味を表し、まろやかなマッシュルームのピュレが全体をまろやかにまとめています。
ワインペアリング(6杯、90シンガポールドル)は、ニュージーランドのピノ・グリ。穏やかで甘い香りが、スパイスの効いた一皿とよく合っていました。
二皿目は、Ericシェフによる、Suckling Pig(サックリングピッグ)と呼ばれる子豚の丸焼き。
スペインの伝統的なお祝い料理として知られていますが、実はシンガポールでも中華系の伝統的なごちそうとして親しまれていて、結婚式では、新郎側が新婦側に子豚の丸焼きを贈るのが伝統なんだとか。上質な中華ソーセージの香る餅米のおこわの上には、下に脂の甘みを感じる層を残した、カリッとした子豚の皮、そして梅で作ったコクのある伝統的なソースが添えられています。皮とおこわの間に子豚の肉、......と思いきや、ガチョウのフォワグラが。濃厚なうまみが、中華ソーセージの甘い香りとよく合い、驚きに満ちた一皿。そして、付け合わせも絶品。冬瓜を柑橘類でマリネしたものの上に、チェリートマトを梅のソースにつけたものが載っているのですが、冬瓜のすっきりとした香りと酸味、梅のソースで甘みの増したチェリートマト、それぞれの素材の味が際立つ一皿でした。
合わせるワインは、ペリエ・ジュエのシャンパン。程よい酸味と蜂蜜のような香りが、この一皿とベストマッチでした。
続いては、同じくEricシェフによる、Deep-Fried Golden "Mantou"
ローカルフードの「ブラックペッパークラブ」を意外な形に再構築した一皿。表面をカリッと、中がふんわりした揚げマントウの中から、ブラックペッパーとクリーミーなカニの身が現れます。周りには、甘くない生クリームのホイップクリームとトビコ。この、フレッシュな生クリームがソースのような役目を果たしていて、トビコとの食感の対比も見事。ブラックペッパーのスパイシーさを生クリームが程よくマイルドにしてくれます。中華に生クリームというのは意外な組み合わせなのですが、不思議なほどおいしかったです。
そして、コラボレーションの一皿目は魚料理 Traditional Steamed Fillet of Cod。
「茶碗蒸し」をイメージしたという一皿です。タラの身の上に、ポーチドエッグを出汁醤油に1時間半ほど漬け込んだものが置かれ、ソースは鰹節入りの出汁醤油。ナイフを入れると卵黄がとろりとあふれ、出汁醤油と混ざり合ってコクのあるソースとなり、思わず懐かしい、と言いたくなる味わいに。
優しい味わいのタラと、卵がベストマッチ。桜エビのカリカリした食感もアクセントになっています。発酵調味料にこだわりのあるHenrikシェフと、四川風のソースを加えて中華風にアレンジした茶碗蒸しを提供しているというEricシェフならではの一皿です。
メインディッシュはHenrikシェフによる、Beef Ribs。
じっくりと牛のリブ(あばら肉)を蒸し煮にした後、オリジナルのオイスターソース、そして最近訪れたという韓国で作り方を習ったという、キムチを合わせてあります。サイドに添えられているのは、グリーンピースのソース。「売っているオイスターソースは、ムール貝だったり、純粋な牡蠣だけで作っているものは少ない。だから、純粋な牡蠣だけで、本物のオイスターソースを作りたいと思ったんだ」とHenrikシェフ。また、こだわりの発酵食品、キムチについてもお聞きすると、「今回のキムチは浅漬けだけど、デンマークではもっと時間をかけて乳酸発酵したキムチも使っているよ。」ということでした。意外な組み合わせに見えますが、海の味をぎゅっと詰め込んだようなオイスターソースと、上には香り高い生のグリーンペッパー、甘めのキムチとが混ざり合い、まったく新しいジャンルのエスニック料理と呼びたくなる一皿に仕上がっていました。無国籍風ですが、上に乗せられたタイバジルが、全体をタイの雰囲気に仕上げています。
「自分は外国人だからこそ、伝統的な組み合わせや作り方に縛られず、味の組み合わせだけを考えて料理を生み出せる。」と、Henrikシェフ。最近、バンコクに、逆輸入という形で自身のレストランをオープン、Henrikシェフの新しいタイ料理は、本場タイでも受け入れられています。
デザートは、コラボレーションメニューのカシューナッツのケーキ、Cashew Cake。
中華の五香粉と、アーモンドの代わりにカシューナッツを使ったもっちりとしたフィナンシェ、そして塩味を効かせたココナッツとブラウンシュガーのアイスクリーム。生のココナッツの果実のフレッシュな印象を加えていて、南国らしいデザートに仕上がっていました。
インターコンチネンタルホテルで行われた今回のコラボレーションは本日で終了ですが、9日のディナーから、タイ王室に料理を提供したタイ料理レストラン、Pataraでのコラボレーションが始まります。
現代的なタイ料理と伝統的なタイ料理のトップ同士のコラボレーション、こちらも楽しみです!
参加は以下のウェブサイトからチケットを購入する形となっています。
【DATA】
イベント名:$100 Gourmet(ワンハンドレッドグルメ)
公式ウェブサイト:http://100gourmet.sg/#/
■マン・フー・ユアン(Man Fu Yuan、終了)
住所:Intercontinental Hotel, 80 Middle Road, Singapore 188966
Tel:+65-6338-7600
URL:http://www.ihg.com/intercontinental/hotels/gb/en/singapore/sinhb/hoteldetail
■パタラ(Patara、12月9日~12日、9日はディナーのみ)
住所:163 Tanglin Road, #03-14 Singapore 247933
Tel:+65-6737-0818
URL: http://patara.com.sg/
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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