ロブション仕込みの上質なフレンチとワイン、モダンビストロ「Verre」
心地よい風が吹く、ロバートソンキーの川沿いに位置するおしゃれなワインバー、「Verre」。フランス語で「グラス」を意味する名前通り、店内の中央にはガラス張りの巨大なワインセラーがあり、通常はグラスでオーダーできないような上質なワインを、気軽に楽しめるお店として知られています。
スイスやフランスなど、ヨーロッパ各地の名だたるミシュラン星付きのレストランで約20年のキャリアを重ね、シンガポールに来る直前までは、ロンドンのラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブションでスーシェフをしていた、堀内雅史シェフが、この10月にメニューを一新して生まれ変わりました。
現在はコンサルティングシェフとして、様々なレストランのメニューを考案している堀内シェフ。「高級ワインに負けない味を、肩ひじ張らずに楽しんでほしい」と語ります。
ワインを扱う業者、Wine Cultureの傘下だけあって、提供しているワインは750種類、中でもその8割がフランスワイン。フレンチで腕を磨いた堀内シェフの料理とのマリアージュを楽しめます。
ワインのグラスワインはプレミアムワインを含め、常時30種類以上。
メニューはアラカルトで、好きなものを好きなだけオーダーするシステム。テーマは「モダン・ビストロ」、
クラッシックな中にも、堀内シェフのオリジナリティがあふれた構成になっています。
様々なワインがグラスで楽しめるとあって、一皿づつにおすすめのワインを合わせていただきました。
前菜は、CHICKEN LIVER PARFAIT(24シンガポールドル)
甘いポートワインとマディラ酒で仕上げた、クリーミーな鶏肉のレバーのパテ。上にはオレンジのゼリーが乗っていて、バゲットに乗せて一緒にいただきます。
濃厚なクリーム感をすっきりとしたオレンジで軽やかに。臭みもなく、レバーが苦手という人もこれなら食べられるかも。上には、岩塩とmignonette pepperと呼ばれる、ホワイトペッパーとコリアンダーなどを調合したスパイスが。コリアンダーの柑橘系の香りが、オレンジのゼリーとよく合います。
ペアリングのワインは、Paringa Estate, Riesling(19.5シンガポールドル、以降ワインはいずれも記載のない限り150mlあたりの価格)、ペトロール香のあるリースリングの白ワインです。
前菜 TARTE FLAMBEE FOREST (22シンガポールドル)
フランス風のピザのような、タルト・フランベ。何よりも自家製の生地が素晴らしいです。極薄で、噛むとサクッとした触感と共に層になって崩れる繊細な食感。そこに、キャラメリゼした玉ねぎの甘み、マッシュルームの香り、グリュイエールチーズのコクが重なります。ワインのおつまみにぴったり。個人的にももう一度絶対リピートしたい、おすすめ料理です。
Marcell Deiss Gewurtraminer 2012(18シンガポールドル)
こちらは、ライチのような香りで、やや甘みのある味わいのゲヴェルツトラミネルと合わせて。アルザスの郷土料理なので、アルザスのワインとの相性抜群。
続いては、大きなロブスターの半身が丸ごと使われた、HALF LOBSTER SALAD(38シンガポールドル)
メイン産のロブスターを贅沢に使ったサラダ。アボカドで作ったソースをクリーミーなグアカモレソースと共に。
フェンネルやディルなどが入った野菜のスープで軽く湯がき緑の香りをまとわせた、しっとりとしたロブスターの身と、アボカドの相性はもちろん抜群。酸味のあるカタバミの葉やソレルの葉などのアクセントが効いたサラダです。シンガポールらしい小さなライム、カラマンシーの果汁と蜂蜜で作った甘酸っぱいドレッシングとあわせていただきます。
Yarra ValleyのSticksの2013年のシャルドネ(18シンガポールドル)と合わせて。
涼しい気候のヤッラ・バレーらしく、甘すぎずさらりとした飲み口。熟しすぎない桃のようなすっきりした香りが、ロブスターとよく合います。
ここで、ひねりの効いた面白いスープが登場。BLACK GARLIC SOUP(19シンガポールドル)
これは、なんとオーストラリア産の黒ニンニクを使って白ワインで仕上げたスープ。黒ニンニクは、発酵しているので普通のニンニクよりもとてもまろやかで、濃厚なコクとうまみがあとをひく美味しさです。黒ゴマのチュイルは、グレープシードオイルで仕上げてあり、ゴマの香ばしさがありつつも、スープの香りを邪魔しない程よいバランス。健康食としても知られている黒ニンニク、この日たくさんワインをいただいたのに、二日酔いにならなかったのはこの黒ニンニクのおかげかも、と思っています。
ペアリングはMassalino Dolcetto D'Alba 2013(18シンガポールドル)
フレッシュなベリーのような甘い香りを持つ、アルバ産の赤ワインで、まろやかでコクのあるスープにフルーティーなアクセントを加えていました。
SEAFOOD PAPILLOTE(30シンガポールドル)
紙で包んで焼き上げたシーフード、包みをナイフで開くと、ブランデーの甘い香り、そして新鮮な魚介類の香ばしい香りが漂います。中には、程よい火の入り具合の大きなエビや地元産のハマグリ、バンブークラムと呼ばれる貝などが詰まっていて、魚介のうまみを逃さずに閉じ込めたスープも、添えられたグリュイエールチーズがトッピングされたパンにつけて、残さずいただきたい一皿です。
Paul Pillot Bourgogne Rouge 2012(18シンガポールドル)
ポール・ピヨのピノノワールと合わせて。きめ細かいタンニンは、魚介類との相性も良かったです。
さて、ここからは、メインディッシュの登場です。
PAN-SEARED SCALLOP WITH SWEET CORN(38シンガポールドル)
堀内シェフのスペシャリテである、北海道産のスイートコーンのスープ。スイートコーンのピューレと野菜の出汁だけで作ったそうですが、べたつかない自然な甘みがあり、ホタテ貝柱の甘みと重層的に重なりあい、後残りしない美味しさです。パルメザンチーズのチュイルと泡、そしてなんと塩昆布でうまみをプラス。意外ですが、昆布の海の香りとホタテが意外な相性のよさ。Espelette pepper(エスプレット・ペッパー)と呼ばれる、フランス南西部で作られる唐辛子の粉をほのかに利かせています。
こちらは、繊細な樽の香りの奥行きが感じられるムルソーLatour-Giroud Mesault 1er cru Boucheres 11'(38シンガポールドル)に合わせて。
プレミアワインを気軽にグラスで提供できる裏には、Argon gas(アルゴンガス)が充填することでワインを劣化させずに保存できる、特殊な機械の存在があります。
これを使うと、抜栓せずに注ぐことができ、長期間味が変わらず保存することができるのだとか。
ちなみに、ソムリエのサラさんは、元々セントーサ島のラトリエ・ロブション勤務で、堀内シェフと同じラトリエロブションのバックグラウンドを持っています。堀内シェフのスタイルを理解して完璧なペアリングを提供するだけでなく、豊富な知識とウィットあふれる会話で、楽しく盛り上げてくれます。
Suckling Pig(42シンガポールドル)
子豚を蒸し煮とオーブン焼き、2通りの方法で仕上げ、しっとりとした食感とカリッとした表面の両方が楽しめるようになっています。
こちらは、Chateau Grand Village Bourdeaux 2012(18シンガポールドル)と合わせて。
熟したチェリーのようなフルーティーさと、程よいボリューム感があり、仔豚の上にあしらわれているアーティーチョークの甘い香りともあっていました。
FILET OF WAGYU BEEF(62シンガポールドル)
表面はごく薄くカリッとした層があり、内側はしっとり。完璧な火の入り具合のオーストラリア産の和牛のテンダーロインは、ガーリック風味のパン粉とレモンの香りのヴィネグレットソースを、
そして野趣あふれるマッシュルームを絞ったエキスとマディラワインのソースで作った「森のケチャップ」が絶妙のコンビネーション。
ソースの中にあるシメジの食感がアクセントになっています。ここのトリュフフライは、カリッと揚がったフライの表面に、グレービーのような、トリュフの香りの甘辛いタレの絡まったタイプ。口に入れるとじゅわっとソースの香りが広がり、カリッとした食感が続きます。本物のトリュフをシュレッドしたものもかかっていて、贅沢な美味しさです。
Massalino Barolo 2010(32シンガポールドル)
こちらは、「王のワイン」とも称される、バローロの当たり年、2010年のヴィンテージと一緒に。上品でまろやかな香りと、滑らかな肉質の牛肉がよく合います。
LAMB CHOP WITH MOROCCAN COUSCOUS & MINT SAUCE (46シンガポールドル)
オーブンで焼き上げた後に、フライパンで仕上げたオーストラリア産の仔羊は、柔らかい肉質を堪能できます。クスクスは、完全に中東料理になるスパイス使いではなく、フレンチから外れない、程よいスパイシーさ、レーズンの甘みと、カボチャの種、松の実などナッツ類のコクが効いています。定番のミントソースと合わせた、王道の組み合わせです。
ジュヴレ・シャンベルタンの名門、Drouhin-Laroze(ドルーアン・ラローズ)のGevery-Chambertin 2009(38シンガポールドル)に合わせて。枯葉のような、深く奥行きのある香りは、ラム肉ならではの芳醇な味わいとよく合います。
最後はデザートで締めくくり。
JASMINE TEA VERRINE (16シンガポールドル)
すっきりとしたジャスミンティーのグラニテと、カラマンシーのゼリーと泡、香ばしいキャラメルのようなコクのあるmarmite(マーマイト、ビール酵母の一種)のクランブルの上にはミルクのソルベ。
軽すぎず、でも重すぎないバランスは、お腹がいっぱい、だけれどもグラニテだけだとさっぱりしすぎていて、デザートを食べた気がしない。そんな微妙な気持ちを分かってもらえる、うれしいメニュー。
Carmes de Rieussec Sauternes 2011(22シンガポールドル、120ml)
そんなバランスの良いデザートは、甘口ワインの王道、ソーテルヌと合わせて。はちみつやレーズンのような芳醇な香りが、冷たいデザートにボリューム感を与えてくれます。
続いては、VANILLA CHEESECAKE (17シンガポールドル)
再構築メニューのチーズケーキは、卵の香りが濃厚な、どこかほっとする味わいのブルターニュ風サブレと、酸味のあるベリー類の取り合わせ。ソルベはミックスベリーかバナナパッションフルーツを選べますが、バナナパッションフルーツをチョイス。南国らしい味わいと、パッションフルーツの酸味で、すっきりといただけるチーズケーキでした。
最後は、APPLE MILLE-FEUILLE (16シンガポールドル)
リンゴのミルフィーユは、繊細なフィロ生地をキャラメリゼした、再構築の一皿。生のリンゴ、リンゴのソルベとコンポート、キャラメリゼしたリンゴなど、様々な取り合わせのリンゴが楽しめます。オキザリス(カタバミ)の酸味が全体を引き締めています。
Caprille Moscadello(15シンガポールドル)
甘いけれどもどこか白い花のような、青い香りのあるモスカデーロ(マスカット)の甘い食後ワインは、リンゴとの相性も抜群。
こちらでは、テイクアウトでケーキも楽しめます。
Saint-Honore (写真左、10シンガポールドル)
フランス菓子の定番、サントノーレはバニラの香るカスタードが詰められ、周りにはバニラのホイップクリームが飾られています。カスタードのコクと、ホイップクリームのミルキーさと軽やかさ、どちらも味わえるケーキです。
Canele (写真右、4シンガポールドル)
カリッとした表面と内側のしっとり、もっちり感の対比が見事で、ラム酒とバターの香りが豊かなカヌレでした。
<DATA>
■ Verre (ヴェール)
営業時間:17:00~24:00(月~木曜)、~25:00(金曜)/15:00~25:00(土曜)、~23:00(日曜)
住所:8 Rodyk Street, Singapore 238216
電話: +65 6509 1917
アクセス:MRTドビーゴート、クラークキー駅からタクシーで約5分
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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