[Stellar at 1 Altitude] 2人のKrug Ambassador が生み出す究極のディナー

公開日 : 2016年05月07日
最終更新 :

Stellarという名前通り、星空にとても近い62階の高層階で、マリーナベイサンズを眼下に望む絶景と、オーストラリア出身、Christopher Millar(クリストファー・ミラー)、通称Chrisシェフの、素材の味を生かした上質な料理が楽しめるレストラン、Stellar at 1-Altitudeで、シャンパンの帝王とも呼ばれるKrug(クリュッグ)の特別なディナーが行われました。

Stellar at 1-Altitudeについての過去記事はこちら

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ジョエル・ロブション氏の下で16年働き、新規店舗の立ち上げの度にエグゼクティブシェフとして海外に赴き、軌道に乗せては次の店舗に移るという形で、世界で活躍してきた須賀洋介シェフが、日本に戻ってオープンしたラボ(実験室)という形のレストラン、スガラボ。完全紹介制で、予約の取れない名店として知られています。

ロブション在職中、日本ではテレビの「アイアンシェフ」のフレンチの鉄人としても活躍した須賀シェフは、今年、シャンパンの帝王、とも呼ばれるKrugが、Krugの理念と合う優れたシェフやソムリエなどから選ぶ、Krug Ambassadorとして選ばれました。

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去年から、世界のアンバサダーを集めて、そのインタビューやの本の出版しているKrug。

この撮影が香港で行われた際、世界でも数少ないクリュッグのアンバサダーとして、同じく選ばれている、Chrisシェフが須賀シェフに声をかけて、このコラボレーションが実現しました。

去年は「ジャガイモ」というテーマで行われたイベント。今年のテーマは「卵」。Krugを統括するMHDのIan MacLernonゼネラルマネージャーより、「シンプルな食材を、いかにKrugにふさわしい料理に仕上げるかが毎年のテーマ」との挨拶が。

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そんな難しい課題を、見事に昇華させた2人のシェフの料理の数々をご紹介します。

そもそも、入手困難な2000年のKrug、2003年のKrug、そしてグランキュベとロゼ、4種類のKrugが提供されるという非常に珍しい機会。それぞれに合わせた料理を作り上げた、とChrisシェフ。

まずは、KrugのGrand Cuvee(グラン・キュヴェ)と共に提供されるのは、Sugalaboの須賀シェフのシグネチャーでもある一皿、末富最中。

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京都の老舗、末富の最中の皮を使い、手作りのマヨネーズ、そしてイクラが詰まっています。一口かじると、みずみずしいイクラの粒がはじけ、濃厚なコクが広がります。そこに、こだわりの日本の卵で作ったマヨネーズソースが程よい酸味をプラス。そして、この最中の皮の香ばしさと繊細なサクサクとした食感が素晴らしいコントラストを見せます。バランスが良く、後味にほのかに果実味の残るGrand Cuveeとのペアリングも見事。

続いては、Chrisシェフのフレッシュなオイスターとバターを使った一皿。スモークの煙とともに、下には分子料理学の手法で作られたオイスターエッセンスの球体が。

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イクラと同じように、口の中ではじける感覚があり、須賀シェフのお皿との共鳴が感じられます、粒が大きいので、繊細な食感からダイナミックな印象に増幅された一皿。そして、シーアスパラガスがほのかな塩気を、横に添えられたハイビスカスの葉が、程よい酸味を加えています。

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そして、2000年のKrugが提供されます。もはや入手困難だという当たり年の2000年のKrug、注がれた瞬間にふわりと漂う香りの豊かなこと!トーストやナッツのような香ばしさ、バターのような濃厚な甘い香りが漂います。

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こちらに須賀シェフが合わせたのは、ある意味「卵」と言える、ウニとキャビアの一皿。通常は根セロリやジャガイモなどのピュレと合わせることの多いメニューですが、新鮮な湯葉と合わせて。フレッシュな湯葉のミルキーな味わいと、ウニとキャビアのコクとまろやかさ。日本の出汁を使った、三杯酢のようなジュレがみずみずしい印象。そこに、お皿の外のソースのように、バターのような香ばしい香りのあるKrugが寄り添います。

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お皿は、有田焼のキャンディーボックス、ボンボニエール。今年400年を迎えた有田焼ですが、古典的な柄だけでなく、最近はモダンな料理に合う様々な器を研究し、世界のフレンチやイタリアンのシェフからも注目を浴びる焼き物です。「料理だけでなく、日本の文化を伝え、日本の地域の持つ幅広い文化を伝えていきたい」という使命感を持って活動している須賀シェフ、この有田焼は大事に手荷物で持ってきたそうです。

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ここで、2003年のKrugが。猛暑で、決して当たり年ではなかったものの、シャルドネの個性を生かしたシャンパンに仕上げたのだとか。「キラキラした味」と表現されるこの年のKrugは、2000年とは違い、生き生きとした酸、そしてどこか青い香りがあり、後味にほのかに乳酸の香りが漂います。

こちらには、Chrisシェフがタスマニアの南から、塩水タンクを使って生きたまま運んできたという、アワビとフォワグラの一皿Sea Salt Loch Fyne Oysterが。

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Krugの緑の香りと酸が軽く火を通したアワビと合い、フォワグラのコクとモリーユ茸のクリームソースが、後味の乳酸の香りとマッチします。「素材の、クリーンでピュアな味わいを大切にしている」というChrisシェフならではの品。

シャンパンはGrand Cuveeに戻り、Grand Cuveeとのペアリングを考えて開発され、今回のKrugの本にも掲載されるという須賀シェフのレシピ、White Asparagus&Tosajiro's Eggが登場。

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「ヨード系の香りがある」というブランド卵を半熟卵状態で提供、その下にはさっくりとしたパンが一切れ。ホワイトアスパラガスには、細かく刻んだベーコンやレーズン、ローストした松の実、濃縮したバルサミコ酢のほのかにキャラメリゼされた香りなどが奥行きを与え、ホワイトアスパラガスのみずみずしさ、素直な甘さを引き立てています。

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そして、Chrisシェフの本に掲載された卵の一皿は、Carabinero Prawn, Parmesan, Egg Poached in Hot Smoked Oil。

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味噌の部分まで甘くておいしい海老に、パルメザンのフォームと、ミルクスキンと呼ばれるミルクのオブラートの部分、そして卵黄を熱いスモークオイル入れて加熱したもの。濃厚な液状の卵黄に、甘い海老をつけながらいただきます。一つ一つの要素にコクがあり、まさに、素材の持つ旨みの競演。

ここまでは、Grand Cuveeとのペアリングですが、ここからは、Krug Roseが提供されます。

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ここに、日本の黒毛和牛A5のフィレが。

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完璧な柔らかさに調理された極上の牛肉に、ナスのピュレ、しょうゆや鶏のレバー、心臓などのソース。シャロットのコンフィにマスタードを加えたアクセント。刺身のつまのように、口の中を軽やかにリフレッシュしてくれる印象のサラダは、ピリッとしたナスターチウムの花、甘い香りのディルやセイボリーなどのハーブが軽やかに仕上げていて、ロゼシャンパンの赤いブドウの香りとすっきりした飲み口との相性が見事です。サラダに、日本の菊の花や芽紫蘇を忍ばせていて、日本らしさをさりげなく取り入れているのも印象的でした。

シャンパンに合わせて、かんきつ類のデザートが二品。

まずは、Chrisシェフによるパッションフルーツとグレープフルーツの一皿。

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パッションフルーツのムース、グレープフルーツのジャム。そして、その上には分子料理学で調理されたユズの粒が。ムースのクリーム感を、グレープフルーツのほのかな苦み、そしてパッションフルーツの酸味が軽やかにしています。ユズの香りが日本らしく、次の須賀シェフのメニューへの架け橋になっています。

そして、須賀シェフの一皿は、今が旬の高知原産の「小夏」という柑橘類。

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日向夏などと同じ品種ですが、小粒であるほど味が濃く、人気が高いのだとか。須賀シェフが持ってきたのも、そんな小夏の中でも小さな、極上品。上のパリパリのチップは、小夏の甘みがそのまま感じられるすっきりとした味わい。ロンガンと小夏のシロップに軽く漬け込んだもの、そしてココナッツのソルベ。シンガポールの味と日本の味の融合。ココナッツソルベが濃厚すぎず、すっきりとしたバランス。レモングラスやスターアニスを使ったというこのシロップは、少し花のような香りがあり、とても印象的な一皿に仕上がっていました。

最後には、Sugalabo名物の焼きたてマドレーヌも登場。甘い香りが漂う焼きたて。あつあつ、ふわふわのマドレーヌのおいしいこと!「最後に、お茶と一緒にあったかいものを食べてほしくて」と須賀シェフ。

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科学的なアプローチが求められる現代の料理、もちろん、須賀シェフもその部分を極めてきたシェフのひとり。それでも、「驚きはもちろん必要だけれども、食べた時の「美味しい」という感覚を一番大切にしたい」と語ります。ラボでの活動を通して、改めて客観的に、自分の料理、そして「おいしい」という感覚とは何かを、突き詰めて考えている印象のある須賀シェフ。

シンプルな定番のおいしさ、それを最後に出してくるあたり、「複雑に組み立てられた料理もおいしいけど、おいしいって本来こういうことじゃない?」と問いかけられているような気がしました。

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須賀シェフの料理は、ベースはフレンチなのだけれど、お皿のどこかに、必ずみずみずしさを感じるアクセントがある、水のおいしい日本ならではのフレンチ、という印象でした。

そして、Chrisシェフの料理は、どの皿にもクリームなどの乳製品が使われていましたが、軽やかで、素材の旨みを最大限に引き出す料理。

「コースとしての統一感と同時に、2人の料理のコントラストが楽しめるといいな」と言っていたChrisシェフ。2人とも、素材の持ち味を大切にするシェフのせいか、コース全体の流れが素晴らしかったと感じたのですが、その背景には、「素材の持つみずみずしさと酸味」で、よりフレッシュな印象の須賀シェフの料理と、クリームなどの乳製品、たんぱく質系の食材が本来持っている、「素材の旨みとコク」を大切にしているChrisシェフの「コントラスト」が、交互に楽しめたせいもあるのかも。

客席を回り、訪れた人とのコミュニケーションも楽しんでいた須賀シェフとChrisシェフには質問が飛び交い、会場はとても和やかな雰囲気に。

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こんなユーモラスな一幕も。

Chrisシェフと須賀シェフのコラボレーションディナーの続編は、形を変えて東京のSugalaboで、7月22日に行われます!

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<DATA>

■Gastronomy and Champagne By Yosuke Suga and Christopher Millar

(ガストロノミー・アンド・シャンパン・バイ・ヨウスケ・スガ・アンド・クリストファー・ミラー)

日時:2016年5月6日(終了、次回東京のSugalaboで7月22日に開催予定)

営業時間:ランチ 11:30~13:45(平日のみ)、ディナー 17:30~21:30、(いずれもL.O.)無休

住所:1 Raffles Place, Level 62, Singapore, 048616

電話:+65 6438 0410

アクセス:MRTラッフルズプレイス駅徒歩1分

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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