「Lewin Terrace」日本独自の食材を生かしたジャパニーズフレンチフュージョン

公開日 : 2016年06月07日
最終更新 :

シンガポールの中心街からほど近いエリアにありながら、緑に囲まれた閑静な一軒家レストラン、ジャパニーズ・フレンチ・フュージョンがコンセプトのLewin Terrace(ルウィンテラス)。

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松本圭介エグゼクティブシェフ、五十嵐貴人ヘッドシェフのもと「和魂洋才」をテーマに、日本の食材を使いながらも、フレンチの骨格を持った料理を作り上げています。6月から8月まで提供される、賞味「夏」のコース(178シンガポールドル、ワインペアリングは240シンガポールドル)をいただきました。

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夏ということで、スパイスを使って食欲を増すようなイメージで構成したというメニュー。

まず、"Omotenashi(おもてなし)"のスナックとしては、中までカリカリに乾燥した、スーパードライトマト。凝縮したトマトの甘みが感じられます。そして、湯葉のチップの上に、南仏の唐辛子、エスプレットでアクセントをつけた和牛のそぼろ。

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"Hassun(八寸)"

アワビを使った昆布と鰹節のゼリーの下には、出汁で蒸しあげたもっちりとした食感のアワビ。そして、この下に敷かれた薄くスライスした檜が、まるで森林浴をしているような香りを与えています。

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ワインペアリングはペリエジュエのシャンパン。

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ソムリエのAxelさんは、「柑橘類の香りがあり、泡がゼリーにボディーを与えるイメージで選びました」とのこと。

そして、松本シェフは、隠し味として自家製のバイマックルー(コブミカン)のオイルを中心だけに一たらし。「目には見えないけれど、食べ進んだ時に驚きとアクセントがある」という、バイマックルーの柑橘系の香りが、このシャンパンの香りと合います。

続いては北海道産のスイートコーンを使ったフォワグラのブリュレ。

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薄いフォワグラのプディングの上にパリパリのキャラメリゼされた砂糖の層があり、その上にはたっぷりの甘みが詰まったスイートコーンの冷製スープ、更に醤油を絡めてローストした蕎麦の実のアクセントが。松本シェフは、この砂糖の層の厚みが、薄すぎると層の食感がなくなり、厚すぎると甘すぎるので、ベストの味になるよう細心の注意を払っているのだとか。砂糖を加えず、トウモロコシだけの甘みだというスープと、下のブリュレの甘みのレベルが同じで、全体がまろやかにまとまっています。香ばしい醤油の香りは、どこか焼きトウモロコシを昇華させたような印象です。

そして、なんといっても目を引くのが、和牛のしゃぶしゃぶ。しゃぶしゃぶの鍋ではなく、運ばれてきたのはサイフォン。

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中にコーヒーではなく、昆布と鰹節の出汁を入れて、上にはトマトやセロリ、レモングラスなどの野菜が。下のキャンドルで温められた出汁が、上の野菜にごくわずかに触れることで、軽く香り付けができるのだとか。もともと実家が珈琲店だったという松本シェフならではのアイデアだと思いましたが、実は更に大きな理由がもう一つ。「香りは瞬間で変わってしまうもの。目の前で調理することで、その出来立ての「香り」を楽しんでもらいたい」のだとか。サービス精神が旺盛な松本シェフ、「ただ毎回お皿が出てきて食べるのではなく、食事を体験として楽しんでもらいたいし、これを見て話が弾んだりしたら嬉しいですね」と語ります。

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そして、お皿の上には、ワサビのニョッキが。このワサビは、加熱をせず、熱すぎず冷たすぎない温度でじっくりと抽出したワサビエキスを加えています。この香りだけをかがせていただきましたが、とってもシャープな香りにびっくり。シャキシャキしたおかひじき、そして、熊本産の水前寺菜が。加賀野菜の金時草として知られている野菜ですが、実は熊本でもごくわずかながら生産されていたとか。伝統野菜の復活の流れを受けて、最近見直されていて、市場に出るようになってきたそう。熊本の震災を受けて、生産者の方たちを支えたいと、熊本産の食材を使い、多くの人に知ってもらえるきっかけになればと思っているそう。上には上質な和牛が一切れ。

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上から出汁をかけると、ちょうど表面がピンク色に、内側がロゼ色の美しい状態に仕上がります。この和牛の滑らかなこと!水前寺菜の、紫の香りが和牛の味にぴったり。そして、ほんのり西洋野菜の香りをまとった穏やかで繊細な出汁の味に、少しだけ振られた胡麻がアクセントになっていました。

こちらには、日本酒の宗玄が。

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「ワインだと野菜の繊細な味に対して強すぎるので、花のような香りのある日本酒を選びました」とAxelさん。

続いて、南仏風のアレンジの、舌平目のムニエルノワゼットソースが。

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こちらには、ソーヴィニョンブランのオーガニックワインが。

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パリの南にある地域で、ミネラルが強すぎず、バターの味とも合うとか。程よく火の入った兵庫産の舌平目の上には、セミドライトマトやパセリ、からりと揚げたケイパー、そして中東のハーブ、スマックが。食べてみると赤紫蘇のような香りで、下に敷かれた軽くバターでソテーしたビートルートの葉の味と合います。中東ではゴマと合わせて食べられることが多いのだとか。ソーヴィニョンブランですが、一般的に言われる草原の香りよりも、針葉樹のような香りがあります。スモークしたジャガイモのピュレが、ノワゼットの香ばしさや、フレッシュなスペイン産のアーモンドパウダーの甘い香りと重なり合います。

和牛ステーキ"ニッポン"ロッシーニ・フォワグラ・トリュフの極上のひとさら。

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このLewin Terraceのシグネチャー。牛肉にフォワグラとトリュフを合わせるフレンチの定番、ロッシーニを日本風にアレンジ。一口食べると、鹿児島産の和牛は柔らかく、和肉ならではの旨みが詰まっているのを実感します。その下にはユリ根のピュレ。上にはフォワグラ、トリュフと椎茸のチャツネ、上には竹炭のチュイルが乗っています。ソースはマディラソースにオイスターソースを混ぜたものですが、オイスターソースは隠し味。牡蠣の旨みが奥行きを与えています。サイドには、ワイルドライスが添えられています。ペアリングは、サンテミリオンの近く、メルロー100%のオーガニック赤ワインを。

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フルーティーで若々しさを感じる味と和牛の相性が抜群でした。そして、この一皿で一番印象的だったのは、ロッシーニというと、フォワグラのポワレと合わせるものが多い印象でしたが、松本シェフは、冷製のフォワグラを合わせていること。温かいステーキの上で、フォワグラがバターのようにとろりととろけるような、温度のギャップが楽しめます。

スモークと共にデザートは、一玉1万5000円程もする静岡産の高級メロン、天音(あまね)メロンを使った、完熟天使音メロンのスープ。

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まんべんなく陽が当たるように、転がして栽培することから、糖度が高く、アルコールの入っていないフローズンダイキリのようなイメージで、凍らせてシャーベット状になったところをいただきます。ふんわりと緑の香りがすると思ったら、スモークにはミントの香りをつけて清涼感をだしているのだとか。お皿がテーブルに到着した瞬間の香りを楽しんでほしい、という松本シェフの思いが感じられます。メロンのみずみずしい甘さの輪郭を、スダチの香りが際立たせています。

Alexさんおすすめのデザートワインは、熊本の、巨峰を使ったワイン。

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乳酸系の香りと程よい酸味と甘さが感じられ、重すぎず、すっきりと飲めるデザートワインです。

そして、最後のデザートはリ・オレ&フォンダンショコラ・黒ゴマとアプリコット。

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チョコレートの薄いクラッカーを取ると、お花畑が広がっているような、驚きにあふれるデザート。キャラメルスパイスアイスのエキゾティックなシナモン、クローブ、スターアニスなどの香りと、中東風のリ・オレ(ライスプディング)がよく合います。そして、ソースはなんとレオパード柄。「料理は視覚的なイメージから作ることが多い」という松本シェフ、キッチンで何となくソースで絵を描いていたらできたそうですが、とってもかわいい!味は、ヘーゼルナッツの入ったミルクチョコレートとダークチョコレートのコンビネーションでした。

五感で楽しむ松本シェフの料理、次は「音」にこだわった料理を作っていきたい、ということです。

ちなみに、Lewin Terraceでは、常にいろいろなイベントや企画が行われています。

6月20日には、オーガニックのブドウと天然酵母を使ったナチュラルワインにフォーカスしたFull Moon Wine Terrace Bar。

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また、6月24日~26日まで、食のイベント、$100Gourmet(ワンハンドレッドグルメ)に参加。元Forlinoの鳥居健太郎シェフとともに、熊本の選りすぐりの海産物や、松本シェフの出身地でもある宮城県の「ミガキイチゴ」というブランドイチゴを使ったデザートで参加します(詳しいメニューはこちら)。収益金の一部は、熊本への支援金として使われるそうです。和の心を生かしたフレンチ、ぜひ試してみてくださいね!

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■ Lewin Terrace (ルウィンテラス)

営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:30~23:00 (無休)

住所:21 Lewin Terrace Singapore, Singapore 179290(Coleman Street の消防署とプラナカン博物館の間から入ります)

電話: +65 6333 9905

アクセス:MRTシティーホール駅から徒歩10分ほど

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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