日本の技を生かしたカクテルと、あのWaku Ghinの料理が気軽に楽しめる!「Waku Ghin Bar」
世界のベストシェフとしても知られる、和久田哲也シェフのレストラン、Waku Ghin(ワクギン)。通常400シンガポールドルのお任せコースのみなので、なかなかデイリーユースは難しいところ。でも、実はレストラン内のバーで、気軽にカクテルやそのメニューを楽しむことができるのをご存知でしょうか?
(Waku Ghinの記事についてはこちらをご覧ください)
横浜市出身のヘッドバーテンダー、地井和広さんは、日本国内でも様々なコンテストで入賞しているほか、シンガポールのバーテンダー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたり、日本バーテンダー協会など、世界53ヶ国ののバーテンダーの団体を統括する、International Bartender Associationのコンテストにシンガポール代表として参加するなど、シンガポールを代表するトップバーテンダーの一人です。
カクテルの味わいを決めるのは、大まかにいうとアルコールと甘みと酸味。「ベンチマークとしては、ジンフィズなどを見るとわかるんです」と地井さん。この甘みと酸味のバランスにしても、その土地の風土や文化に合わせて変わってくるもの。地井さん自身、暑いシンガポールに来て、少し甘めに作るようになったとか。
また、最近流行のカクテルペアリングに関しては、「カクテルは単体で完成するのではなく、料理の外のソースのように、料理と合わさったときに完成するようになっていてほしい」といいます。とはいえ、Waku Ghinの提供する料理も、地井さんのカクテルも、奇をてらったものではなく、どこまでもオーセンティックなものを追及しています。
そして、和久田シェフの料理が、日本のアイデンティティーを大切にした料理なのと同じように、地井さんも「日本のバーテンダー」としてのこだわりを大切にしています。
最近注目を集める、日本のバーテンダー技術。氷の表面積を最小限にするために、板氷から丸い氷を削り出す技術など、日本のバーテンダー技術の素晴らしさは、最近世界で知られるようになってきています。最近では、世界に名だたるバーテンダーを集めた、BOLSアカデミーでは、様々な習得技術のうちの一つに、日本のバーテンダー技術が選ばれるようになったほどだとか。
日本のバーテンダー技術の素晴らしさは、科学的なアプローチの仕方。3ピースタイプと呼ばれる、日本の伝統的なカクテルシェイカーを見せていただきました。
氷に無駄な動きをさせないことで、氷が溶けて水っぽくなる前の、最短時間でカクテルを冷やすことが目的。かつ、角度を変えて、中のカクテルと氷に八の字のような複雑な動きをさせてきっちりと振ることで、目に見えない程度の細かい泡を含ませ、その泡でアルコールを包み込み、まろやかな舌触りにする、というのが日本のスタイルの特徴なんだとか。
日本のバーテンダーコンテストでも、何度も受賞している地井さんは、茶道と同じように、日本の様式美が確立したものがバーテンダーの仕事だといいます。ただカクテルを作るのがうまい、というのではなく、その背景にある精神性も含めての「道」。日本では、バーカウンターは舞台、バーテンダーがバーカウンターに入るときには、「ステージへどうぞ」と案内されることもあると言います。服装、髪形、身のこなし。すべてにおいて、完璧を求められる仕事。バーに入る時に感じるエレガントな雰囲気は、このきめ細かい心遣いがあってこそ成り立っているのだと実感しました。
バーテンダーを生涯の仕事としようと思ったきっかけは、初めて働いた横浜・福富町のバー「クライスラー」で、ベテランバーテンダーの美しい所作に魅せられたからだという地井さん。中学・高校と6年間、そして高校卒業後、更に専門的に2年間、少林寺拳法を学んでいたという地井さんは、トップバーテンダーが持つ美しい所作は、「等速運動」にある、と考えているそう。体の芯をぶらさないで、同じ速度で動くこと、無駄な動きをそぎ落とすことで、目に止まらず、まるでふっと目の前にカクテルだけが浮いてやってきたような、そんな印象を与えます。それは、少林寺拳法や、日本の剣道などの武道に共通するものだそう。表の筋肉ではなく、内側の筋肉や体の軸の移動などを使う、日本古来の体の使い方が生きています。
バーテンダーの名前の由来は、BarのTender、つまりバーで、来た人をケアして、空間自体を演出するというような意味。
マティーニなどの定番のカクテルが一番人気だそうですが、その他にも、この日はシグネチャーのサムライミュールや、エルダーフラワーのリキュールをシャンパンで割ったゴールドラッシュなども出ていました。私が地井さんにお願いしたのは、あまりアルコールが重すぎず、シンガポールらしさのあるもの。そこで地井さんが作ってくれたのが、パッションフルーツのダイキリ。フレッシュなパッションフルーツがたっぷり入った、ほんのり甘酸っぱく南国らしい味。
おつまみとして出てきたローストしたぶどうとブリヤサバランも最高でした。
もう一杯は、食事に合わせるすっきりしたもの、ハーブの入っているものをお願いしました。
地井さんが作ってくれたのが、シャルトリューズのスプモーニ。緑のシャルトリューズの甘いハーブの香りがありつつ、グレープフルーツジュースのすっきりとした味わいが楽しめます。
そして、このバーでは、Waku Ghinのキッチンで、井上正彦ヘッドシェフが作る料理が食べられるのです。現在ミシュラン二ツ星のレストラン、エディション・コウジ・シモムラの下村浩司シェフの下で4年、そして12年前にオーストラリアに渡って和久田哲也氏の下で働き始めたのだそう。2人とも、料理の完成度に正確さ、精密さを求めるという点で共通しているのだといいます。
バーメニューは生牡蠣が6シンガポールドル/個~、ロブスターやカニなど、豪華な食材を使ったパスタなどが40シンガポールドル台から楽しめます。とはいえ、食べたいものを伝えれば、なんでも作ってもらえます。
とろけるような本マグロの大トロのカルパッチョは、醤油とみりんに、オリーブオイルとラズベリービネグレットが隠し味、ネギが程よいアクセントに。
ネギの香りが強すぎることなく、きっちりとマグロの旨みを引き立てるバランスになっています。Waku Ghinの料理は、
調味料のどれかが際立つことなく、頭で考える前に、美味しいもの、としてすっと受け取れるバランスになっています。
そして、シグネチャーのウニとボタン海老、オシェトラキャビアの一皿。
とろけるようなウニとボタン海老に、卵黄、キャビア。特にこの塩分のバランスに気を使うのだそうです。
そして、季節を感じる静岡産の鮎。
鮎の下には、タイ産のポメロに大根をガーリッククリームで合えたもの、ほんのわずかにイタリアンパセリを糸のように細かく刻んだものが。鮎を食べるのは本当に久しぶりで、日本の四季の美しさを感じます。タデ酢には、気づくか気づかないかくらいに、ブラックペッパーが隠し味に入っています。
タラバガニのパスタは、たっぷりのタラバガニ、とっても甘いトマトに水菜とネギ、そしてレモンが隠し味に。タラバガニの甘いこと。醤油とみりんがベースの味付けですが、和風の味の存在感を主張しすぎることなく、すべてが一体となって、頭で考える前においしさがダイレクトに口の中に飛び込んできます。
デザートは、ホテル西洋銀座などを経てWaku Ghinに加わった、ペストリーシェフの石野泰嗣さんによるデザート。
ココナッツとタピオカ、マンゴーのソルベ、その上からとてもレアな静岡産のポメロの粒が。
鮎に合わせてあったタイ産のポメロは、比較的しっかりとした味わいでしたが、こちらは一粒一粒が大きくてみずみずしく、酸味がすっと消える繊細な印象。
柔らかめのタピオカと、ココナッツ、角切りにしたマンゴー、マンゴーのソルベ、ポメロの粒と、微妙に違う食感のグラデーションを楽しめます。そして、ごく上質なシナモンが隠し味になっていて、味に奥行きを与えています。
そして、もう一皿は、フランス産のこの時期にしかないワイルドストロベリーのデザート。
ラベンダーはちみつを加えたクリームと、クランブルが入っています。フランス菓子らしく、美しい形に並べられた爪の先ほどの小さなイチゴ。ふんわりと漂う香りは、普通のイチゴよりさらに甘く、野生のイチゴならではのはっきりした個性を持っています。口に入れてみると、中が空洞でふわふわとした食感。かすかな渋みを、クリームが優しく包み込みます。
小菓子はとろける食感と香りが素晴らしいシャンパンチョコレートトリュフ、ユズのゼリー、香ばしいアーモンドのメレンゲ、から同じようにアーモンドのリキュール、アマレットが香るカスタードが入ったシュークリーム。ひんやりとしたバタークリームと、しっとりした中身とカリッとした外側との対比が楽しい、ラズベリーのマカロンと共に。
どれも本当においしくて、しかもキッチンも同じなので、Waku Ghinのそのままの味。エレガントなバーを楽しみたい、という方だけでなく、Waku Ghinの味をアラカルト感覚で気軽に楽しみたい、という方にもお勧めです。
ちなみに、毎週火曜日の午後6時~9時はハッピーアワー。地井さんの作るシグネチャーカクテル「サムライミュール」が、なんと半額で楽しめます。
また、石野シェフの作るデザートは、マリーナベイサンズホテルの1階にあるラウンジ、Rise(ライズ)内の、「Waku Ghin Platine(ワクギン・プラティーヌ)」で食べることができます(テイクアウトも可)。
時々、先ほどのワイルドストロベリーを使ったタルトが数個限定で並ぶこともあるとか。午前11時からの営業ですので、お早めに!
食事の前の一杯を楽しむのもよし、アラカルトで選べる料理を楽しむのもよし。上質なお酒と料理、そして空気を感じたいという方にお勧めです!
<DATA>
営業時間:ディナー 17:30〜又は、 20:00〜スタート、バー 17:30~深夜、無休
住所: L2-01, Atrium 2 The Shoppes at Marina Bay Sands
TEL:+65 6688 8507
URL: http://jp.marinabaysands.com/restaurants/waku-ghin-jp.html
アクセス:MRTベイフロント駅直結
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。