「The Summerhouse」美しい庭に囲まれた白亜の邸宅でモダンヨーロピアン料理を

公開日 : 2017年01月24日
最終更新 :

シンガポールの東、セナターエリアにある住宅街。

「Black and White」と呼ばれる、1929年に建築されたコロニアル建築。英国空軍の高官が住んでいた邸宅がリノベーションされてできた、"Farms to Table"がコンセプトの、レストラン、バー、カフェの複合施設。1階には花屋と併設のくつろげる雰囲気のカフェと緑と風が心地よい屋外席のバーが。2階にあるレストランが、The Summerhouseです。

建物を一歩出ると、目の前にはEdible Garden City(ガーデン・シティとして知られるシンガポールを、エディブルガーデンにしようと取り組んでいる団体)の協力で作られた、広いエディブルガーデンが。

このSummerhouseを率いるのは、ドイツ出身のFlorian Ridder 総料理長。シンガポールに来る前には、生態系に基づいた持続可能な農業についての研究、Permaculture が進んでいるオーストリアのウィーンの大学でこの分野について勉強しようとも考えていたそう。

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「通常の畑のように、単一の作物がずらりと並ぶのではなく、背の高い植物が低い植物に日陰を与えるように、実のなる植物のそばにはミツバチが集まる植物を、という風に、生態系を考えて作ってあるんだ」と案内してくれました。エディブルガーデンには、ローカルの植物を始め、シンガポールの気候にあった珍しい植物が色々と植えられています。

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フルタイムで働いている忙しい母親に代わって、Florianシェフが料理を始めたのは12歳の時。インスタントのパスタにソースをかける、そんな料理からスタートした。そこから徐々に、野菜を炒めて入れた美味しいなど、独自に色々な料理をアレンジするようになって来たんだ。

そして、19歳の時に、ドイツのハンブルグのレストラン、Pimentのモロッコ人シェフ、Wahabi Nouriの元で、イスラムの倫理観に基づく、食材に対して敬意を払い、無駄にせずに利用することを学んだのだそう。さらに、同じくドイツのトラーヴェミュンデにある三ツ星レストラン、La Belle Epoqueでは、2014年に部門シェフとなり、三ツ星ならではのプレッシャーの中で料理することを学んだのだとか。

2015年にシンガポールへ、翌年ミシュラン一ツ星を取ることになる、フランス料理のAlma by Juan Amadorにスーシェフとしてやって来て、この1月にオープンしたばかりのThe Summerhouseの料理長に就任します。

パーマカルチャーを学んだだけに、食材を加工しすぎることには抵抗がある、というFlorianシェフ。完璧な人参があれば、それを中心に据えて、その味を最大限生かす。でも、それはただ簡単な料理をする、というのではなく、素材そのものの味を引き出す最大限の方法を考える、というような意味。例えば、手作りのバターを絡めて仕上げる、というように、手間を惜しまない料理。

また、「尊敬するシェフは、スウェーデンのMagnus Nilssonシェフ。地元の食材を使い、持続可能な農業についての哲学を持っていて尊敬できる。自分も、パッケージを開けて、料理して終わり、ではなく、生産者に直接会い、話をして、その食材に込められた思いを、食事客に届ける、そういう仕事をして行きたい」と語るFlorianシェフ。レストランのオープンにあたり、シンガポールやマレーシアの農場を回って、直接自分の目で農場を見、作り手と話し、信頼関係を築いたところからだけ仕入れているのだとか。

そして、キッチンの目の前の畑にあるエディブルガーデンを見て回り、「まだ出来立ての畑だから、収穫しすぎないようにしないといけないんだ」と言いながら、丁寧に収穫して行きます。

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現在はディナータイムのみの営業。

ディナーコースはThe Collective Farming Menuという名前で、テイスティングメニュー6コースがS$90、10コースがS$128という内容(コースの注文は2人から)。

一番最初に出てきたのは、そんなエディブルガーデンで収穫されたブルーピー(バタフライピー)と呼ばれる、マレー料理などによく使われるマメ科の青い花。

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ライ麦のパンは、外はカリカリ、中はもっちりとした食感で、自家製のバターが塗られたトースト。横にもフレッシュな自家製発酵バターが添えられています。このカラフルな器も、シンガポールで歴史のある陶芸会社、Thow Kwangの5代目の女性に作ってもらったオリジナルだとか。

ブルーピーも見た目の美しさはもちろん、芯の蜜の部分がほのかに甘く、水分を多く含んだ花びらがみずみずしさをプラスしています。

Kelong Rojak(コースの一部として提供、単品なし。写真は3人前)

シンガポール東部のKelongで取れた地元産の海老を、高温の直火オーブン、インカオーブンでさっと焼き上げ、半生な状態にして、焦がしたレモンの粉とピスタチオをふりかけたもの。タイバジルのエキゾティックなソースと合わせて。

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Beetroot(単品S$18、以降()内は単品料金)

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コースでは2人に一つ提供される丸のままのビートルート。

「ドイツ人にとってはとても馴染みの深い食材がビートルート。食材の味を逃さないようにするためには、丸のまま調理することが大切なんだ」とのこと。

ビタミンたっぷりのハイビスカスの葉を飾ったビートルートの中にはリコッタチーズ、サクサクのポン菓子のようにした大麦やフライドオニオンなどが入っています。

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周りには、ビートルートのガスパッチョがかけられています。真ん中からカットすると、中から出てきたリコッタチーズとビートルートのガスパッチョが混ざり合い、クリーミーなソース状になります。ひんやり冷やされたビートルートと暖かいガスパッチョの対比が楽しめ、大地の香りがするビートルートには、甘みがたっぷり。柔らかくクリーミーな食感の中に、サクサクの大麦が面白いアクセントになっています。ほんのりと効かせたクミンの香りも全体を引き締める効果を果たしています。

Panzanella(S$18)

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皮のままのナスをオーブンで焼き、中身だけを取り出して、パセリやコリアンダー、スモークパプリカ、レモン、チリパディと呼ばれる地元の唐辛子、塩や酢、ニンニクと共に2日間漬け込んでから、ローストしたニンニクやチリパディ、マレーシアのキャメロンハイランド産のこだわりトマト一緒に煮込んだもの。ほのかにクミンなど中東のスパイスのニュアンスがあり、山羊のフレッシュチーズとの相性も抜群。そして、「Yishun(シンガポール)の農場で見つけた時には本当に興奮したよ」とFlorianシェフが話す、メキシカンコリアンダーの葉を刻んだもの。このメキシカンコリアンダー、とっても香り高くて印象的な味でした。冷たいトマトウォーター(トマトの果肉部分のエキス)にコリアンダーオイルをひとたらししたものをかけて、煮込み料理にありがちな重たさをすっきりと軽やかにしています。キャットウィスカー、と呼ばれるピリッとした味わいのエディブルフラワーを添えて。

Buckwheat Porridge(S$16)

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「ドイツでお粥というと、日本や中国とはまた違う、オートミールなどの粥で、子供の頃の思い出の味なんだよ」、と話すFlorianシェフ。そんな思い出の味を、洗練されたものに生まれ変わらせました。それがこの、蕎麦の実と、蕎麦粉を使ったお粥。蕎麦粉をクリームとミルク、バターと共に混ぜて、蕎麦の実を茹でたお湯と混ぜた、どこかそばがきのようなペーストと、もっちりとした粒感を残した蕎麦の実の組み合わせ。ベーコンチップやパルメザンチーズのチップ、かぼちゃやひまわりの種など、様々なコクと旨味、食感の要素を加えた食べ応えのあるお粥に仕上げました。スネークウィートフラワーと呼ばれる紫色の花、ミントマリーゴールドのどこか唐辛子のような刺激のある味とハチミツのような香り、エディブルガーデンから採れたばかりのハーブやエディブルフラワーの変化のある味わいが楽しめるのも、ここSummerhouseの魅力の一つ。

そして、Florianシェフにとって故郷の味と言える、ポークとキャベツのザワークラウトも進化した一皿に。

Iberico pork(S$36)

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イベリコ豚の肩肉をジュニパーベリーや月桂樹の葉、そして自家製バターを作る際に出るバターミルクに漬け込み、スモークしてから72時間かけて低温調理したもの。

レモンの香りのブールブランソース、チャービルのソース、そして上から香ばしくローストしたヘーゼルナッツをかけて。

一口食べるとイベリコ豚のコクのある味わいとともに、後味にふんわりとバターミルクが香り、旨味を後押しします。

そして、デザートはFlower(S$15)

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地元産のランブータンが、ヒッコリーの薪でこんがりと焼かれて炭の上に。

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「たまたまたくさん手に入ったから試しにオーブンに入れてみたら、とても甘みが増して美味しかったので思いついた」という経験から、プレゼンテーションも楽しいデザートが出来上がりました。

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その場で、地元産のグアバとヨーグルトのソルベ、ライチとココナッツのムース、ラズベリーのピュレ、薔薇のメレンゲにハイビスカスの粉を散らしたもの。すっきりとしたソルベに、甘い香りだけれども、味わい的には重すぎないライチや、酸味のあるグアバやラズベリーなどのフルーツの味わいがぴったり。

農園をイメージしたレストランだけに、オーガニックワインの品揃えも80ラベルと豊富。いただいたイタリアの赤ワインは、豊かな旨味感と野生的な味わいのあるものでした。

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「自分の作ったもので、食べた誰かが笑顔になる。それって最高だと思わない?休みの日は料理をしない、というシェフもいるけれど、僕の元気の素は食べた人の笑顔。だから、休みの日でも料理をするのが大好きなんだ」と語るFlorianシェフ。

「複雑すぎることをせずに、エディブルガーデンや信頼できる農家や生産者からの、そのままの食材を素直に美味しく調理する」。ヨーロッパのバックグラウンドを感じる、ホッとできる、実直な、でも程よいバランス感の料理は、くつろいで美味しいものを、でも気分のあがる空間で食べたいというシチュエーションにぴったり。今はまだThe Summerhouseはランチタイムはオープンしていませんが、陽のあるうちに到着して、1階のバーで飲んだりガーデンを散策したりしながら、のんびり過ごすのがおすすめです。

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また、1階にある系列のカフェ、Wildseed Caféでは、 こだわりのコーヒーを提供するカフェ、Nomad Coffeeとコラボレーションして生まれた特別なコーヒーと、このSummerhouseのほか、Stellar at 1-AltitudeやMontiなど、数々のレストランを経営するOne groupのJasmin Chewエグゼクティブペストリーシェフのスイーツや、軽食が楽しめます。

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フラワーショップ、Poppy Flora Studio併設で、くつろいだ雰囲気もとても素敵です。お子さん連れで緑に癒されながら気軽にコーヒータイムが楽しめます。 

特にシンガポールらしくてオススメのスイーツは、ブルーピーとココナッツクリームを飾ったココナッツとグラメラカ(パームシュガー)のカップケーキ、Pea flower coconut muffin(S$6.5)

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トーチジンジャーの花を飾り、生姜の香りのトフィークリームをかけたしっとりとしたキャラメルバナナケーキ、Ginger flower banana loaf(S$6.5)。

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食事のメニューは、Independent Uruguay(S$15)

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ライ麦パンに自家製のひよこ豆のコロッケ、ファラフェルをメインに人参やヨーグルトソースなどを挟んだヘルシーなベジタリアンのバーガーは、中東風のスパイスと、シンガポールの唐辛子、チリ・パディの効いたもの。

また、Wildseed Barでは、 オランデーズソースのコロッケなどと共にカクテルを楽しむことができます。

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オープンしたてのため、今後の営業時間は変わって行きます。詳細は、公式Facebookまたはお電話で確認してくださいね。

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■ The Summerhouse(ザ・ サマーハウス)

営業時間:18:00〜22:00(水曜〜土曜)、〜21:00(日曜)

■Wildseed Cafe & Poppy Flora Studio(ワイルドシード・カフェ)

営業時間:10:00〜19:00(火曜〜金曜)、9:00〜19:00(土曜・日曜)

■Wildseed Bar(ワイルドシード・バー)

営業時間:16:00〜22:00(火曜〜木曜、日曜)、〜23:00(金曜、土曜)

住所:3 Park Lane Singapore 798387

電話: +65 8608 3340

アクセス:オーチャード近辺からタクシー(高速使用)で20分ほど

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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