[Art at Curate] 2017年スタート!「レストランよねむら」どこにもない、ここだけの味

公開日 : 2017年02月09日
最終更新 :

世界のミシュラン星付きレストランのシェフを招いて、特別なメニューを披露しているショーケースレストラン、「Art at Curate」。日本の有名シェフ、ミシュラン一つ星の、レストランよねむらの米村昌泰シェフが2月11日までその腕を披露しています。

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今回は、Art at Curate 初の、日本酒ペアリングということもあって、「日本酒に合う料理が今回のテーマ」と米村シェフ。ご自身も、寿司や蕎麦を食べる時には、日本酒は欠かせないのだそう。

シンガポールでレストランのプロデュースをしたこともあり、シンガポールの好みなどはなんとなくわかっていたそう。

「最近では、多くのシンガポールの人たちが日本にやって来て、料理を楽しんでいて、食材の微妙な味わいの違いを感じる人も多い。よねむらにも、季節が変わるごとにシンガポールからやって来る常連さんもいる」のだとか。

米村シェフが考えるのは、流行に流されない、個性のある料理。「料理雑誌を見ると、どこも盛り付けが似通っていて、どこの料理か一見してわからないものが多い。自分は流行に乗るのは嫌いなんです。三回転くらい前に流行ったものか、これから流行るものを先取りするか。ファッションに例えるなら、僕はここ30年間ほどずっとコムデギャルソンを着ていますが、他のものと違っていて、古さを感じない。僕の料理も、そんな感じのオリジナルでありたい」

今回は、ランチメニューに、米村シェフオススメの品をプラスした特別コースをいただきました。

日本酒は、どれもロバートパーカーの格付けで90点以上を獲得したものばかり。

ランチメニューでは、2種類の日本酒をいただきます。まずは、栄光冨士 愛山50%純米大吟醸生。

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非常に貴重な酒米、愛山を使った爽快な大吟醸。はっとするほどの豊かでフルーティな吟醸香に、バランスの取れた酸味と甘み、すいすい飲めてしまう軽やかな飲み口がスタートにぴったりのお酒です。

まずは、前菜。Buckwheat brioche with bottarga and mushroom / Pickles of Japanese potato and onion / Sardine and ratatouille sushi

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蕎麦粉のブリオッシュにサワークリーム、昆布締めにした椎茸、たっぷりのボッタルガ(イタリアのカラスミ)をかけたもの。イタリアのカラスミ、ボッタルガが日本酒にぴったり。昆布と椎茸の出汁の代わりに昆布締め椎茸、旨味をプラスするサワークリーム、どこか、カラスミ蕎麦を思わせるような組み合わせです。

ジャガイモと、ペコロスのピクルス。どちらも程よく食感が残っていて、フレッシュな印象の一品です。そして、ラタトゥイユのお寿司。

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しっかりと酸の効いた酢飯に、ラタトゥイユの野菜の自然な甘みが寄り添い、新鮮で臭みのないイワシの旨味に、華やかな山椒の葉の香りが楽しめます。

二皿目 Tile fish meuniere, roast pork and grilled turnip with Red wine& yuzu pepper and white sauce

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手前は甘鯛の松笠焼きに、鶏肉のヴルーテと柚子胡椒を効かせた赤ワインソース、2種のソースを添えて。奥は黒豚の自家製ハムに、蕪をトロトロに煮たものを乗せて。蕪の上にはりんごと、自家製ハムの脂身の部分を散らしてあります。

甘鯛の松笠焼きは、歯ごたえのよい鱗の部分とふんわりとした身の対比が楽しめる抜群の火入れ。穏やかな鶏のソースと、コクのある赤ワインソース、2種類の味わいが堪能できます。赤ワインソースの柚子胡椒のピリッとした刺激がアクセントになっています。

自家製ハムは、優しい味わいの黒豚ハムに、豚肉と相性抜群の林檎を合わせて。サクサクとしたりんごとハムの脂身がのった蕪が、トロトロに煮込んだ林檎のようでありながら、食感の楽しさが味わえる組み合わせ。

ここで、ディナーのメニューから特別に、

Clear soup of Kyoto vegetabkes wutg truffle

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こちらは、2016年に米村シェフが参加した、サンモリッツ・グルメフェスティバル(St. Moritz Gourmet Festival)で、ヨーロッパの美食家たちに大人気だった品。

土の香りがする根菜をテーマに、笹の葉の蓋を開けるとトリュフが香る、大地の香りのするスープ。たっぷりの玉ねぎと牛肉で取ったコンソメに、京人参と堀川ごぼう、海老芋を入れて。野菜類はまず昆布とカツオ、醤油で炊いてから一晩漬け込み、最後にコンソメを注いだという一手間かけたもの。コンソメなのだけれど、カツオと昆布の出汁の香りがする、というのを心がけたのだそう。食べると、香り高い京人参や堀川ゴボウなどの野菜を、穏やかで丸みのあるコンソメが包み込むような味わい。コンソメにはほんの少しバターを加えていて、和でも洋でもない、オリジナルのバランスに仕上げています。そして、私が特に気に入ったのが海老芋。後味に花のような香りがあり、ホクホクした食感は海老芋ならではの味わいに魅了されました。

Cold Pasta with sea cucumber

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両親が魚屋を営んでいたという米村シェフ、当然ながら美味しい魚を食べて育ちましたが、中でも一番好きなのは「なまこ」なんだだとか。「子供の頃、誕生日には、丼ご飯になまこを山盛りにしてもらって食べるのが大好きだった」というほど。そんななまこの魅力を、シンガポールの人にも知ってもらいたい、と持ってきたそう。

なまこの内臓、このわたは日本酒との相性も抜群。「このわたは、温度が上がると臭みが出てしまう。だから、温度を下げた冷製パスタに仕上げました」と米村シェフ。

通常は生のなまこを使うそうですが、今回は海外ということで、乾燥なまこの極上品、金ん子を使っています。このわたで合えたパスタは、ウニのようなコクがありつつも、さらに濃厚な磯の香りがあります。「先日はウニのパスタよりも美味しい!というシンガポールの人もいたんですよ」と嬉しそうな米村シェフ。

コクのある味わいは、日本酒、白いご飯に合うのはもちろん、ごく細かく刻んだ海苔や細ネギを合わせたパスタにもよく合います。

サイドに添えられているのは、このわたになまこの卵巣、「このこ」を混ぜたもの。お好みでトッピングしていただきますが、確かに、コクのあるこのこが加わることで、ウニよりもさらに複雑で奥行きのある味わいに。独特のコリコリした食感は、食べれば食べるほど美味しさが増す印象です。上に乗せられたなまこは、出汁で炊いてあり、くせのないゼラチン質の味わいを満喫できます。

そして、ここから再びランチディナー共通のメニューに。

Wagyu Tenderloin with natto sauce

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和牛ヒレ肉の「納豆」!ソース。納豆が大好きで毎日食べているという米村シェフ、特に海外の人にとっては馴染みのない難易度の高い味わいを、「納豆もチーズも同じ発酵食品」という考えの元、納豆をベジタリアン版のチーズのように使う、という発想で作り上げた一皿。豆の香りをマイルドにするために、バターと卵黄にエストラゴンなどのハーブを混ぜ込んだベアルネーズソースに合わせてから、丁寧にかき混ぜ、ふんわりとしたムース状に。表面をこんがりと焼いて、「和風のラクレット」のような仕上がりを目指したのだそう。

「浜納豆」のような、乾燥納豆を使ったお料理は食べたことがありますが、ここまで「納豆」の個性を生かした取り入れ方は初めて。本来の粘りを生かしてふんわりと仕上げ、表面を香ばしく焦がした納豆は、下に敷かれたシナモンなどの甘いスパイスが香る赤ワインソースと合わさると、本来の旨味が引き出され、こっくりとした濃厚な発酵の味わいが感じられる調味料に。「中国の豆豉のような雰囲気も感じられるでしょう」と米村シェフ。

これまで、「スーパーマーケットにある食材で、3万円のコースを作る」イベントにも参加して大好評を博したという米村シェフ。

ある意味、どこにでもある食材で、どこにもない味を作る。

米村流のオリジナル、というのが、腑に落ちた瞬間でした。

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また、下のヒレ肉には、一口大になるように、米村シェフ自身の手で丁寧に包丁が入れられていて、「盛り付けは、食べやすいように、また、こう食べて欲しい、という思いを表現するようにしている。わざわざ口に出して言わないんですけど、それをわかって食べてくれる人がいるととても嬉しい。お皿の上で会話をしているような、そんなつもりでいます」

合わせる日本酒は、田中屋酒造店の、水尾純米大吟醸。

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純米大吟醸ですが、火入れがしてある分、栄光富士と比べると香りは控えめ。しっかりとした複雑味のある落ち着いた味わいが楽しめ、肉料理や、生姜やスパイスの効いた温かいお料理との相性が良いように思いました。

Snapping turtle risotto or Chef Yonemura"s special curry rice

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最後は、和食でいう「お食事」。スッポンのリゾットまたはスペシャリテのカレーのチョイスです。

「今回はぜひ、京都の冬の味の代名詞、スッポンを持ってきたかった」という米村シェフ。シンガポールで天然の良質のスッポンを見つけて使っているそうです。 私はこちらをお願いしました。日本酒をたっぷり入れた、生姜の効いたスッポンの出汁の中に、コシヒカリのリゾット。出汁の味を邪魔しない程度に、ほんの少しだけクリームを加え、しっかりアルデンテに仕上げたコシヒカリは、リゾットとしての存在感はありつつ、違和感なく和の味に。さっぱりとした米質のコシヒカリならではの、他を邪魔しない味わいが、スッポンの旨味を引き立てます。上質な身のしまった鶏肉のようでもあり、ゼラチン質な部分もあり、というスッポンの滋味深い味わい、そこに醤油出汁のエスプーマが優しい餡のようにかかっています。このスープもそうなのですが、個人的に、私は特に、米村シェフの出汁やスープがとても好みでした。上品な出汁にほんの少し、隠し味に洋の要素が入っていて、「ほっこり」という言葉がぴったり来るような、とても落ち着く味わいです。

Champagne starawberry sorbet

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いちごとシャンパンのソルベに、たっぷりのシャンパンを注ぐ、大人のデザート。

「料理は、お客さんが食べる直前に仕上げる、それが一番美味しいでしょう?」という米村シェフのポリシーは、こういったライブ感溢れる演出からも感じ取れます。

すっきりとした味わいで、食後酒よりも軽いアルコール感にくつろぎ感と、豊かな香りの余韻の残る締めくくりとなっていました。

料理を始めて35年、現在54歳の米村シェフ。自分の毎日の食事も、自分で作るほど料理が好きなのだとか。「今の祇園の店も、銀座の店も、自分がしたいような形のレストランにできたという自信はある。今は、全部僕が手を出して仕事をしているけれども、いずれレストランが、自分の年齢の変化とともに、変わっていく形になればいいな、と思っているんです。例えば、すきやばし次郎の小野二郎さんだって、とっても楽しそうに仕事をしているでしょう?あんな風に歳をとっていければいいな、と思うんです。料理をすることを作り手が楽しんでこそ、食べた人が楽しめる料理ができる、そう思っているんです」

もしかしたら、それは究極の「オリジナル」なのかもしれません。訪れた人と共に歳を重ね、育っていくレストラン。そこではいつも、作り手と食べ手の、幸せな会話が、お皿の上でも繰り広げられているのでしょう。

今回、シンガポールでしか味わえないマリアージュとともに楽しむ、「よねむらスタイル」、 5コースのランチメニュー(日本酒ペアリングつき) $180++ 、9コースのディナーメニュー(日本酒ペアリングつき) $380++となっています。

また、これからもArt at Curateでは、8月16日〜23日の日程で、韓国・ソウルの一ツ星レストラン、MinglesのKang Min Gooシェフが、10月5日〜12日の日程で、ベルギー・ブリュッセルの二ツ星、La Villa in the SkyのAlexandre Dionisioシェフがシンガポールにやって来る予定です。ぜひ、ウェブサイトをチェックしてみてくださいね。

<DATA>

■Art at Curate(アート・アット・キュレート) /Series 1 Chef Masayasu Yonemura

日時:2017年2月4日(土)〜11日(土)

営業時間:ランチ 12:00~、ディナー 18:30~、無休

住所:The Forum, Level1, Resort World Sentosa, 8 Sentosa Gateway, Sentosa Island Singapore 098269

電話:+65 6577 7288

アクセス:Sentosa Express Imbiah駅徒歩5分

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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