[WGS Lewin Terrace] 仏で星を獲得、中村樹里子シェフのデザートコラボレーション

公開日 : 2017年03月31日
最終更新 :

現在開催中の、食のイベント、World Gourmet Summit。Lewin Terraceでは、松本圭介エグゼクティブシェフの元後輩でもある、World's 50 Best Restaurants で The Diners Club 50 Best Discovery Seriesに選ばれ、世界から注目される東京のモダンフレンチ、TIPRSEの中村樹里子シェフを迎えて、コラボレーションコースが提供されています。

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樹里子シェフが初めて会ったフランス帰りのシェフが、松本シェフだった。「これまで、日本のお菓子しか知らなかった私に、作ってくれたお菓子が、フランスの伝統菓子、マルジョレーヌ。ナッツがたっぷり入った豊かな味わいに、これがフランスなんだ、と感じ、フランスにいつか行きたいという思いを育むきっかけになった」と語ります。その後フランスに渡った樹里子シェフは、パリのレストランがオープンする際、デザートの責任者となり、レストランはわずか数ヶ月でミシュラン一ツ星を獲得します。本場フランスでも星を獲得した樹里子シェフのデザートを楽しむと共に、「デザート」をテーマに据えたスペシャルなコース。

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アミューズは樹里子シェフによるもの、玉ねぎのタルトですが、タルト生地の上にはキャラメリゼした玉ねぎと、乾燥して素揚げにした玉ねぎ、そして奈良漬けとブルーチーズパウダー。発酵のアイデアを使ったどこか北欧風な組み合わせですが、食べてみると、バターたっぷりの香ばしく豊かな味わいの薄いタルト生地に、玉ねぎのたっぷりの旨味。その安定した素地に遊びを持たせるブルーチーズの濃厚な香り、酒粕の香りがする奈良漬は、甘い香りと丸みのある味わいのみならず、シャキシャキした食感のアクセントを加えています。

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ワインのペアリングは、フランス人ソムリエのアクセルさんにお任せしました。

マスカットベリーA のワインは、ナチュラルワインならではの発酵の香りがこの奈良漬けなどの発酵を加えた香りとベストマッチ。日本のワインならではの穏やかな酸味と果実味、飲んだ後に鼻に抜けるマスカットの甘い余韻があり、優しく寄り添うペアリングでした。

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ここからは松本シェフによる料理がスタート。まずは、牛肉のタルタル、ユリ根のピュレのせ。

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上にはバターをたっぷり染み込ませたクルトンに、豊かな香りのバターと黒にんにくのピュレをのせて。

牛肉のタルタルにはとんぶりが入り、食感のアクセント。とても繊細に刻まれた玉ねぎが全体を引き締めていますが、全体が穏やかに調和しています。

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全体の盛り付けがモンブランのようになっているのも、「パティシエである樹里子シェフのイメージから」という思いから。

そして、次のメニューはメバルとアイナメのブイヤベース仕立て。

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ふっくらと火の入った日本の魚を使ったブイヤベースは、繊細な味わい。

そこに合わせたワインは、ソーヴィニョンのプイイフュメ。まだ生き生きとした酸味とミネラル感のあるワインが、魚の輪郭を際立たせます。ソーヴィニョンの草の香りに、セルフィーユとディルの香りのイメージが重なります。

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続いては、松本シェフこだわりのコーヒー豆を使った一品。父が開いた珈琲店を継いだ弟に、特別に焙煎してもらったというブラジル産のコーヒー。通常は熟すと果肉が赤くなるコーヒーですが、今回使っているアマレロ種のコーヒーの果肉は黄色。この時期にしか収穫できない、「サクラ」という貴重な豆を使っています。焙煎した後にも発酵の香りが残り、その香りが2週間しか持たないことから、本当に季節限定の味。

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お菓子のイメージと重なる、でも甘くないカカオのソース、バニラ風味のビーツ、フランス産の鳩と共にいただきます。

鳩は上にキャラメリゼしたオニオンピュレ、生姜、かんずりのパウダー、タスマニアのペッパーリーフパウダーなど、ほんの少し辛味を効かせて。

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鳩の赤身の肉に重なる、ビーツの大地の香り、バニラやカカオの甘いニュアンス、ワインは、グルナッシュ主体で、甘いスパイス感のヌフ・デ・パプ。

カカオのソースには、コーヒー豆に酸味があることから、酸の穏やかなメルローのワインを使っているそう。

そこに、こだわりのコーヒー豆をその場で挽いて提供します。

豆の発酵から来るという、シナモンや桜の葉を思わせる香りが、仕上げになっていて、香ばしさと共に、アクセントになっていました。

食事の締めくくりは、樹里子シェフも大好きだというハヤシライス。

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丁寧に炒めた玉ねぎに、フォンドボー、トマトに国産の和牛肉。程よい甘みと酸味には、カロン・セギュールの2006年。トマトの酸とバッティングしないように、酸が控えめなワインを選んだのだそう。しっかりとした樽の香りと滑らかなタンニン、フルーティーさ。コクのあるハヤシライスのソースをさらに豊かな味わいにする組み合わせ。

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そして、ここからが再び、樹里子シェフがコースの流れを作ります。最初のデザートは、パイナップルのさまざまなバリエーションが楽しめるもの。そこに、ココナッツのパンナコッタ、バジルのオイル。パイナップルは、シンガポールで砂糖を加え、2日間室温に置いて発酵させてからゼリー状にしています。発酵したジュースそのものをいただいて見ると、白ビールのようなフルーティーな発酵の香りとともに、しゅわしゅわとしたきめ細かい炭酸のような発泡感。ゼリーにすると、普通のパイナップルより、よりまろやかに。バジルのオイルが、生のパイナップルとバナナのフレッシュな印象を際立たせます。

これに合わせたのは、パイナップルの酸味に合う、柚子のお酒。ほのかな苦味がキリッとした印象に。

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続いては、桜餅を再構築した一品。

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桜の花びらの形の餅、フレッシュなイチゴ、ドライのイチゴ、イチゴのソースに、桜のアイスとメレンゲ。真ん中には、スナップエンドウのふんわりとしたケーキが隠れています。桜の花と葉の香りの要素を、味で表現したような一皿。

ペアリングは、甲州種のワインで、アルコール発酵を早めに止めて、軽いアルコール感にして桜の花を漬け込んだワインが。いわゆる甘口ワインにジャンルわけされますが、べたつかない、どこか水のようなすっきりとしたワインで、和の要素を感じるデザートによく合いました。

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そして、最後のデザートは、樹里子シェフがフランスに渡るきっかけにもなったマルジョレーヌ。

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ダックワーズの生地に、チョコレートや生クリームとホイップバタークリーム、プラリネクリームなどを重ねたお菓子。「自分の原点とも言えるお菓子を、とてもクラッシックな方法で作りました」と樹里子シェフ。

エイジングしたようなこっくりとした味わいの梅酒とともにいただきました。

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スイーツをテーマにした、4月1日までの限定のメニュー。ぜひ、多くの方に楽しんでいただきたいです!

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■World Gourmet Summit

Chef Kiriko Nakamura & Chef Keisuke Matsumoto

特別コースは2017年4月1日まで

■ Lewin Terrace (ルウィンテラス)

営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:30~23:00 (無休)

住所:21 Lewin Terrace Singapore, Singapore 179290(Coleman Street の消防署とプラナカン博物館の間から入ります)

電話: +65 6333 9905

アクセス:MRTシティーホール駅から徒歩10分ほど

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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