[バンコク・Women in Gastronomy]ローマの一つ星Cristina Bowermanシェフ
料理の世界で活躍する女性たちに焦点を当ててバンコクで初めて行われたイベント、Women in Gastronomy(WIG)。世界で活躍する15人の女性シェフたちを集めてのカンファレンスが行われました。(その様子は、後日またご紹介いたします!)
それに合わせて、会場となったスコタイ・バンコクホテルのイタリアンレストラン、La Scalaで、15人の世界を代表する女性シェフの一人、イタリア・ローマのミシュラン一つ星、Glass Hostaria の Cristina Bowerman シェフによる、ポップアップイベントが行われました。
3月8日のWIGのイベントに引き続き、3月9日〜11日の期間でランチとディナーを提供しました。普段厨房を取り仕切るDavid TamburiniシェフとそのチームがCristinaシェフをサポート。
私はワインペアリング付きのランチコース(4500THB)をいただきました。
最初にサーブされたのは、自家製のパン。香ばしく、表面だけカリカリに仕上げた軽やかなパンで、中はしっとりふわふわ、ほのかに塩味を感じます。
苦味とフルーティさが共存する、フルボディのオリーブオイルと共に。
最初は白ワインでスタート。
Trappolini "Orvieto"DOC
熟してないアプリコット、柑橘類のようなすっきりしたワインで、後味にほのかな苦味を感じます。
前菜は、Tubers and salt cod。
3つの根菜がテーマ、それぞれに別の味付けがしてあります。
ジャガイモはパセリに漬け込み、ビートルートはイタリアの魚醤、コラトゥーラに漬けて。エルサレムアーティチョークは、リンゴのサイダーに漬け込んであります。
続いては、ブランダードの再構築、干したタラをミルクで戻し、茹でたジャガイモと、そのミルクを使ったスープでいただきます。ミルクは、あまりしつこくありませんが、後味にクリーミーさが残ります。タラの塩気と、繊細な食感が生きた一皿で、その上には、海藻を使ったカリカリと軽く仕上げた米のクラッカーが添えられています。
そして、ここでサプライズの一皿。
手打ちのパスタに、ベシャメルソースのような濃厚なクリームソースで、牡蠣のグラタンのような印象。後味にほんのりとバニラビーンズの香りがあります。
フランスの生牡蠣、は塩気も旨味もしっかり、海のミネラル、後味に濃厚な旨味からくるほんの少しの渋みも感じます。
ソースにある旨味は、牡蠣の殻に溜まっているジュースを加えているから。
上にはオイスターリーフを添えて。牡蠣を食べた後にワインを飲むと、ほのかに蜂蜜の香りを感じます。
Trappolini "Cenereto" Lazio, IGT
モンテプルチャーノとサンジョヴェーゼのブレンドで、濃厚さとタンニンが感じられる赤ワインに合わせたのは、リゾット。
Risotto, saffron, braised lamb shoulder, black pepper, pecorino cheese and anchovy sauce
サフランの蜂蜜のような甘い香りが濃厚に感じられるリゾット。熱々の提供温度も嬉しい。煮込んだラムの肩肉と、ラムと相性の良いミントは素揚げに、パセリのオイルを垂らして全体を引き締めます。砕いた黒胡椒を使っていましたが、あくまでもほんの少し、むしろミントとパセリの野菜の清涼感で仕上げてある印象でした。
続いてのワインは、100%サンジョベーゼ。
Arrigoni "Poggio Al Vento" Chianti Colli Sensi, DOCG
先ほどの赤ワインよりも酸が低くどっしりしていて、カベルネほどピーマン感がないものの、しっかりタンニンが感じられ、甘いスパイスのニュアンスも少しあります。
メインディッシュは、アルゼンチン産の牛のフィレ肉。
周りにパン粉と炭をまとわせてあります。
フィレ肉ではありますが、肉に脂の印象がしっかりあって香ばしく仕上がっています。そこに、イタリアでも愛用しているという、パクチョイの葉を揚げたものをふりかけて。素揚げにすると、海苔のような旨味と香ばしさがあります。
サイドのパクチョイはアンチョビと共にソテーしてあります。「肉だけだと食感がフラットになってしまうけれど、こうするとサラダを食べているようなシャキシャキ感があるでしょう」更に塩味を甘みに振り戻す、ブランデーに漬けた干しイチジクを添えて。「アルコールと牛肉の相性がいいから」と、Cristinaシェフ。
確かに、牧草肥育牛肉ならではの香りにパクチョイの緑の香り、60度で低温調理したという食感には、パクチョイの歯ごたえが程よいアクセントになります。
デザート
Condensed milk, sanded almonds and espresso gelatin
デザートは、キャラメルアイスクリーム。タイでも好まれ、イタリアでもよく使うというコンデンスミルクをかけた、エスプレッソのゼリー、間にカリカリとした、アーモンドを粒ごとざらりとした砂糖でコーティングしたプラリネが忍ばせてあります。上に飾られた花には少し苦味があり、フローラルな香りがコンデンスミルクに合っていました。
Arrigoni "Alfredo" Moscato Pavia, IGT
モスカートらしい蜂蜜のような、マスカットの甘い香り、後味が少しフィジーで、ライムキャンディーのような残り香があります。ラムネ、ライチ、舌の刺激が心地よく、クリームの重さを洗い流すような印象がありました。
イタリア農林水産省との仕事も多く、イタリア食材の良さに精通するCristinaシェフ。今の食事客が求めるのは、シンプルさだと語ります。
「もともとイタリア料理は食材の良さを生かしたシンプルな料理だったけれど、今の時代のシンプルは難しい。これからは、レストランならではの驚きが必要」。
そして、イタリアでも女性シェフの立場は日本などと同じ。ミシュランの星を取っている女性シェフはとても少ないのだそう。
印象的だったのは、WIGのカンファレンスでの発表。パリ在住のジャーナリスト、Maria Canabalさんによると、家庭で料理するのは女性が93%、料理学校に行く女性は48%なのに、レストランの女性シェフの割合は18 %、ミシュラン星付きになると、3%なのだとか。
イタリアの食の大使としても活躍するCristinaシェフのような人がどんどん表に出て行くことで、男女の違いではなく、個人の能力できちんと評価され、「女性シェフ」が、取り立てて「女性シェフ」と呼ばれない時代が来て欲しいもの。
Cristinaシェフは、病気をもつ子どもたちに、自然の中での体験を通した学びを提供する活動を行うなど、レストランだけに止まらない、幅広い活動を行っています。今後の活躍にもさらに注目です。
<DATA>
■La Scala (ラ・スカラ)
営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:00~23:30 (無休)
住所:The Sukhothai Bangkok, 13/3 South Sathorn Road, Bangkok 10120, Thailand
TEL:+66 (0) 2344 8888
URL: https://www.sukhothai.com/bangkok/en
アクセス:MRTルンピニ駅から徒歩7分程
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
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