[バンコク]Le Normandieでベルギーの三つ星シェフのコラボレーション
今年12月に閉店することを発表した、ベルギーの三つ星レストラン、Hertog Jan(ヘルトク・ヤン)。
Gert de Mangeleer (ヒェルト・デ・マンガレール)オーナーシェフは、その理由を、タイ・バンコクでフードイベントを行う、Gastronauts による「BITE」の会議の席上で、「13年間ヘルトク・ヤンを「育ててきた」が、それが大人になって、自分のアイデンティティを持ち、これ以上変えられない気持ちになったから、と表現しました。
これからの料理の世界は変わる。モダンアートと同じで最初にそれをやる者にならなくてはいけない、とこれからのさらなる挑戦を宣言したGertシェフ。
BITEの会場にもなった、チャオプラヤ川のほとりに佇む優美なホテル、Mandarin Oriental Hotel のメインダイニング、Le Normandieで、Arnaud Dunand Sauthier シェフと共に、4 Hands ディナーを行いました。
(Le Normandie過去記事はこちら)
まずは、スペシャルカクテルで。Le Normandie の装花の色ともマッチする、淡紫色のカクテルは、ルイ・ロデレールのシャンパンとジン、カシス、最後にバラのエッセンスをスプレーした優美なもの。
Crispy cannelloni filled with salted and cured west-flemish red beef, anchovy and black garlic G
(Arnaud Dunand SauthierシェフのメニューはA、Gert De MangeleerシェフのメニューはG)
アミューズは、3年ほど前からGert シェフが行なっているという、サステイナブルな取り組み。12歳の経産の乳牛の肉を塩漬けにして3ヶ月エイジングしたというキュアドミート、そしてアンチョビのようなベルギーのローカルな塩漬けの魚で作ったマヨネーズで、ビーフタルタルのようなものを作り、カネロニの中に詰めてあります。カリッとしたカネロニの中に、アンチョビの海の旨味も加わり、しっとりとしたタルタルに仕上がっていました。
Bonbon of strawberry and beetroot A
タイ王族が地元の農業の復興のために行っている、ロイヤルプロジェクトのいちごを乗せた、ビートルートのゼリー。野菜と果物の自然な甘みを合わせます。
Tempura of black pudding G
ブラッドソーセージの一種、ブラックプディングを、イカ墨の衣で天ぷらに。
胡椒の効いた味わいに、サクサクした衣で、食べやすく仕上げてあります。
Foie gras with mango jelly, coffee and cardamom A
薄切りのサワードゥのトーストの上に、フォワグラのパテ、そしてマンゴーのゼリーとコーヒー、カルダモンをかけたもの。
以前は薄いサワードゥで挟む形でしたが、サワードゥを厚く、そしてコーヒーとカルダモンのアクセントも強めになっていて、味のボリュームが高めのGertシェフの料理と合っていた気がします。
そして、とても印象的だったのがこちら。
Seaweed potato chips with plankton crème and caviar G
たっぷりのキャビアの缶と、
ポテトチップスに海藻の粉を散らしたもの。ベルギーでは、フライドポテトは国民食とも言えるもの、それをゴージャスにグレードアップしました。
海の旨味がたっぷりのキャビアの下には、プランクトンの粉を入れたクリームがあり、ブリニをポテトチップに置き換えたような組み合わせとも言えそうです。
今色々なところで見かけ始めたこのプランクトン、珪藻の一種で、玉露のようなコクと良質な青海苔のような旨味があります。
2015 Riesling, Scharzhof, Egon Muller, Mosel, Germany
Marinated hamachi, black radish from the garden, yuzu-ponzu sauce G
しっかりと脂の乗ったハマチに自家農園の黒大根、ゆずと醤油を加えたバターソース。その下には、クリームとチャイブ、胡椒があしらわれていました。
ベルギーでは、広大な自家農園で年間600種類もの野菜を育てているというGert シェフ、一番好きな野菜はトマトで、このメニューも本来は発酵トマトを使ったスープを使っているそうですが、アジアらしい表現にしたいと、柚子と醤油を使った組み合わせに。ちなみに、発酵トマトは、洋梨をスターターに、3%の塩分を加えたトマトを、80度で20日ほど発酵させて作るのだとか。その他にも、自家製で黒ニンニクなども作っているということで、農園を持つレストランらしい、ここでしか味わえない発酵の味を表現しているのだと感じます。
2014 Bourgogne Blanc, Les Clous Aime, Domaine A. et P. de Villaine, Burgundy, France
ワインは控えめな甘みでキリリとしていて、脂の乗ったハマチの濃厚な味わいを引き立てます。
Langoustine, carrots and 'Reine des pres' A
ブルターニュ産のラングスティーヌにキヌアの衣をまとわせ、柔らかく火を入れた一皿。泡のソースは、フランス南西部によく生えているというメドゥスウィートで香り付け。蕎麦とキャロブを合わせたような、濃厚な味わいです。
付け合わせはラングスティーヌと甘さが重なる人参、人参のフォーム、タルト生地。そしてキヌアのプチプチした食感に、同じサイズのレモンジュースで作った小さな粒を乗せて。時々弾ける酸味がとても爽やかで良いアクセントになっていました。
2014 Vouvray, Le Haut Lieu, Domaine Haut, Aloire, France
ワインは先ほどよりも濃い色目で、熟した洋梨、マルメロのような、豊かな果実味がありつつ、きりりとした飲み口で、やや甘い皿の印象に寄り添いつつ、後味をすっきりとさせてくれます。
Fera fish from Leman, celeriac, cassis and hazelnut A
Arnaudシェフの出身地でもあるサヴォワの湖に住む淡水魚、Feraという魚。「この魚を生でバンコクに入れるために、随分苦労した、というArnaudシェフ。
その独特の、水分が多くふんわりとした白身に合わせたのは、同じサヴォワ地域で取れたカシス、根セロリ、ヘーゼルナッツと合わせます。
「この魚の魅力は独特の食感。味が淡白なので強い味を添えようと思った」というArnaud シェフ。
2010 Monthelie Sur La Velle 1er Cru, Domaine Eric Suremain, Burgundy, France
合わせたのは、少し動物性の香りがあるピノ・ノワール。
Mieral duck aged and smoked in hay, served in combination with beetroots and coffee infusion G
ミエラルのブレス産の鴨は数日間ドライエイジングした後、干し草のスモークをかけて。鴨のジュにコーヒーを加え、黒のエマルジョンは発酵したシャロット。
環境に配慮したレストランだけに、ビーツの皮のパウダーを使い、全てを無駄なく使う構成になっています。
ねっちりとした食感の鴨は、65度で40分低温調理をしてあります。
2011 Tres de 3000, 3 of Myles, Pagoda Pago Myles, Carinena, Spain
ワインは、グルナッシュ、メルロー、カベルネソービニョンをアメリカンオークの樽で熟成したもの。カカオバターのような後味のある、渋すぎない赤で、乳香やコンデンスミルクのような香りも感じます。
After eight A
ミントクリームをダークチョコレートに挟んだ、有名なチョコレート菓子へのオマージュ。
プラリネクリームにカカオパウダーをかけ、ミントのソルべを乗せて、シュガーチュイルを飾ってあります。
カシスのような香りの甘口ワインと共に。
'Snickers' Chef's guilty pleasure G
子供の頃、父親が買ってくるスニッカーズが大好きだったというGertシェフの思い出の味を再構築。
砕いたピーナッツ、チョコレートのクランブル、バニラアイスクリームに塩キャラメルのソースをかけて。
旨味と油脂分の味わいのボリュームが大きく、骨太な印象のGertシェフの料理と、所々に引き算をした、繊細なArnaudシェフの料理が交互に楽しめたコラボレーションでした。
<DATA>
■Four Hands Dinner 2-Star Michelin chef Arnaud Durand Sauthier invites 3-Star Michelin chef Gert de Mangeleer
日時:2018年3月12日(月)19:00〜(終了)
■Le Normandie
営業時間:ランチ12:00~14:00、ディナー19:00~22:00、日曜休
住所:48 ORIENTAL AVENUE, BANGKOK 10500, THAILAND
電話:+66 (2) 659 9000
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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