[香港]軽やかに、シンプルに、クラッシックを表現「Petrus」

公開日 : 2018年04月19日
最終更新 :

香港島の高台に建つIsland Shangri-la Hotel、その中でも、地上56階からの素晴らしい眺望が楽しめるのが、Ricardo Chaneton シェフが率いる、Petrusです。

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もともと、ベネズエラ出身のRicardoシェフ、2008年に、ベネズエラ・カラカスのIntercontinental Hotelのフランス料理、Le Gourmet、スペインの Quique Dacosta をへて、南仏・マントンのミシュラン二つ星、World's 50 Best Restaurants 2017で世界第4位に輝く、Mirazurで7年間働き、料理長を勤めたというキャリアの持ち主です。

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トンカ豆で香りをつけた、フォワグラのブリュレ。ポワレでキャラメリゼの層を作る代わりに、表面に砂糖をかけてから焦がし、まさにブリュレのように仕上げたフォワグラ、その甘さにトンカ豆の甘い香りがよく合います。

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ワインのセレクションも印象的。温暖化の影響で、イギリスでシャンパン、ならぬスパークリングワインが作られるようになった、と聞くようになって久しいですが、こちらはそんな作り手の一つ、Coates & Seely のもの。9gのドサージュ、はちみつのような香りで、さほど酸もきつく感じません。

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Langoustine tartare

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コリアンダーの花や若い実、芽をあしらったラングスティーヌのカルパッチョ。

とろりとしたラングスティーヌの身の甘みを、ラズベリーのジュレと、シェリービネガーとアップルサイダーのビネガーを使い、ほんの少し酸味のある、甘くない生クリームと共に、いただきます。

Ricardo シェフの料理は、どこか明るく、南仏の太陽を思わせる温かさと、フレッシュさを感じます。

ペトロールやトンカ豆のような香りのサンセールの白とともに。

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パンは、小麦のスターターで作ったサワードゥをいただきました。

一緒に提供されるのは、マルドンの塩とボルディエのバター。

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Frog legs ragout

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フランスでは高級食材のカエルの足、ジャガイモの泡に隠れているので、鶏肉だと思って食べる人もいそうです。中にはニンニクで下味をつけた卵黄のコンフィ、カレー味のポテトのムースが入っています。上にはオシェトラキャビアとポムフリット。

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ミネラルが豊富なロワールのシュナンブランですっきりと。

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Chickpeas ragout

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料理名はひよこ豆ですが、上には、周りをカリッと香ばしく焼き上げた柔らかいタコ、同じくカリッとしたテクスチャの香ばしい乾燥チョリソーの小さな粒、ひよこ豆のラグー、その下にはブールブランのようなバターがたっぷりのソースを絡ませたイカで作ったタリオリーニのような見た目の「麺」が隠れています。

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オキザリスの酸味でさっぱりと。ひよこ豆やチョリソー、タコなどの地中海的な組み合わせも、南仏・Mirazur で過ごしたRichardoシェフらしい感じがします。

ボディのしっかりした、豊かな動物性の香りのあるナパのシャルドネ。

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チョリソーの脂やバターの香りにぴったりです。後味に少し残る苦味が、油分を切って口の中をすっきりさせてくれます。

そして、とても印象的だったのが、魚介から肉のコースに移行するタイミングならではの一皿。

Grilled monkfish

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アンコウとリードヴォーを合わせて一つの肉のように提供しています。3日間寝かせたという、白身の肉のような肉質のアンコウ、そして白子のような印象のあるリードヴォー。

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それぞれ、肉でもあり、魚でもあるような印象があるもの同士の組み合わせがとても面白かったです。

一つの肉か魚のように成形してから真空パックに入れ、62度で20分加熱した後、180度のオーブンで「Nacre(ナクレ)」と呼ばれる美しい真珠色が現れるように、丁寧に焼き上げます。

リードヴォーは特に好きな食材で、フォワグラほど重くなく、程よいコクがあるのが好きなのだそう。アンコウは3日ほどドライエイジングをかけて水分を飛ばし、旨味を凝縮させてあります。通常はハマグリやロブスター、エクルヴィスなどと合わせるそうですが、「エイジングをしたアンコウと、ミルキーな味わいのリードヴォーのテクスチャが似ているから、合わせようと思いついたんだ」とRicardoシェフ。

ヴェネズエラ出身ですが、心のふるさとは南仏・マントンだと言います。マントンと言えばレモン。塩と砂糖、レモン、レモンジュースで作ったという、このレモンコンフィのソースも、ミラズールの思い出と深く結びついているよ、と語ります。レモンソースの上のカリカリしたものはアンコウの トリムして残った部分で作ったクランブル。

子牛の胸線のリードヴォーだけに、子牛のジュと合わせて、魚料理と肉料理のソース、二種類のソースで楽しみます。

そんな繊細な一皿に合わせるのはエレガントなジュヴレ・シャンベルタン。

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続いて出てきたのは、枯葉や、ピーマンのようなニュアンスのあるボルドー、マルゴーの1990年ヴィンテージ。

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フランス・アヴェロン産の子羊の骨つきのロースに、春らしく中国・雲南省で穫れるモリーユ茸と、アスパラガスを合わせて。

Aveyron lamb rack

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子羊は、表面をフライパンで強火で10分ほど焼き付けてから、85度と低温のオーブンに入れて1時間40分、じっくりと焼き上げたというもので、きめ細かい肉質を生かし、しっとりとジューシーに焼きあがっています。

ソースは、骨と、切り落とし部分の肉などで作り、塩を加えずに作っているのだとか。

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モリーユの中には、刻んだネギとアスパラガス、さらにモリーユを詰めて。

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モリーユ、アスパラガス、子羊。3種類の構成要素だけで出来上がったこの皿は、驚くほどシンプル。まだ若いシェフなのに、この潔い盛り付けに少し驚きます。とはいえ、シンプルすぎて寂しい訳ではなく、アスパラガスの皮をストライプのように剥いたり、薄くスライスしたアスパラガスの曲線と重なる、リボンのような美しいソースのプレーティングもエレガントでした。

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デザートは、しっかりとしたミネラル感を感じる、オーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーを使ったアイスワインと共に。

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Thin white chocolate layers

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薄いホワイトチョコレートに挟まれた、キャラメルの層とマスカルポーネとヘーゼルナッツプラリネのムース。ふんわりとキャラメルの香りがしますが重すぎません。

サイドには、マスカルポーネとホワイトチョコレートのアイスクリーム、飴を纏わせたヘーゼルナッツを添えて。

(ちょうどシェフがいらしたタイミングで、写真を撮る前にお話を伺っていたらアイスクリームが溶けてしまいましたが、本来は綺麗にプレーティングされていました。あとで新しいアイスクリームを持ってきてくださいました)

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ブルーベリーのタルトと、ラズベリーのフィリングが入ったチョコレート、そしてラズベリーの果実とソルベ。

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「フランス人でないからこそ、縛られずに自由に表現ができる」としながらも、自らのテロワールは「南仏・マントン」と語るRicardoシェフ。「素材を素材らしく表現する料理がミラズールのスタイル。それはそのまま、自分のスタイルでもある」

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その言葉通り、皿の上は、必要最小限の要素で構成され、とてもシンプル。その潔さは、素材への敬意と信頼から生まれているような気がします。コースの流れもとてもスムーズだったのが印象的でした。

エレガントなアールヌーボー調のインテリアと、56階からの開放的な景色、その両方が楽しめるのが魅力のPetrus。それは、クラッシックな手法を大切にしながらも、軽やかにシンプルにそれを表現しているRicardoシェフのスタイルにも通じる気がしました。

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■Petrus(ペトリュス)

営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:30~23:00(無休)

住所:Island shangri-la Hong Kong, Pacific Place, Supreme Ct Rd, Admiralty, Hong Kong

電話: +852 2820 8590

アクセス: 香港駅から徒歩10分

http://www.shangri-la.com/hongkong/islandshangrila/dining/restaurants/restaurant-petrus/

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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