[フランス]鮮やかな南仏の自然の息吹を伝える二ツ星「Mirazur」

公開日 : 2018年06月26日
最終更新 :

南仏、フランスとイタリアの国境の町、マントン。

その小高い丘の上に、地中海を望むレストラン、Mirazur(ミラズール)があります。アルゼンチン出身のイタリア系のシェフ、Mauro Colagrecoシェフによるレストラン。

ミシュラン二ツ星、世界のベストレストラン2018では世界3位。とはいえ、堅苦しさはなく、穏やかな自然に囲まれた、リゾート地らしい、くつろいだ雰囲気が感じられるレストランです。

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まずは、モダンアートのような外見の、シグネチャーの温かいモッツアレラのボール、中にはクリーミーなモッツアレラが詰まっています。

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ごく薄いサブレ生地にクリームを乗せ、タイムの花を散らして。

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タイムの香りは大好きですが、インパクトがどうしても強いもの。花だと、軽やかなタイムの香りが楽しめて、グラナ・パダーノチーズを練りこんだ繊細なサブレの歯ざわりと相まって、とても新鮮。

西洋ごぼうとも呼ばれるサルシファイは、ディハイドレイターで水分を抜いてから揚げ、豚のラードを巻きつけてから花粉を散らしてあります。

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菊芋のような甘い香りのあるサルシファイト花粉の自然な甘みが混じり合い、まるで黒砂糖のお菓子を食べているような、どこか懐かしい味わい。

人参のロールに黒ごまをまぶし、人参には大地の香りがありますが、それに黒にんにくなどを使った大地の旨味のあるソースを添えて。

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胡麻の香りのよさが際立ちます。

オリーブの生地に、かなりハーブらしい緑の香りが濃厚な、ルッコラのクリームを詰め、新鮮なアンチョビを乗せて。

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シトラスやハーブの香りが濃厚なのに驚かされます。

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シェア用のパンはブリオッシュですが、ふわふわというより、どこかスコーンのようなしっかりとしたテクスチャのもの。

パンに合わせるのは、自家製のオリーブオイルで、いくつかフレーバーがありますが、シグネチャーは生姜とマントンレモンを入れたもの、柚子味のものもあり、その柚子はフランスの生産者のものを使っているそうです。

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柑橘と樽の香りがあるロワールの白と合わせて。

地元産の赤海老、甘みとしっとりとした食感のガンベローニ海老に、ルバーブのピクルスを乗せて、目にも美しいバラの形に。

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程よい酸味のルバーブが、甘い海老のアクセントになっています。

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庭からの野菜を取り揃えた、緑鮮やかな一皿。

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ほうれんそうマヨネーズ、フェンネル、ラディッシュと、グリーンピース、ビーナスベリーボタンと呼ばれる、バーネットのような形で苦みのある多肉質の葉、日本ではハコベとして知られるchickweedなどのローカルの野草、キウイ、瑞々しさを感じるものを色々と合わせて。

そして、印象的だったのはこちらのビーツ。2〜3年かけてじっくり育てた、自家農園、もしくは契約農家のものを使っているのだとか。

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以前Alain Passardシェフの元で働いていたMauroシェフにとって、思い入れの深い料理。元々のアイデアは、Alain シェフが出していた、ビーツの塩釜料理。「その当時出していたのは、小さなビーツを使っていたので、一口大に切って、バルサミコを合わせていた。私が使うのは大きなビーツ。素材の複雑な旨味を引き出すために、シンプルなクリームソースに、キャビアを混ぜるだけにしたんだ、切り方も、薄くスライスする形にしたしね」

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「地中海料理がシンプルなのに複雑、というのは、この料理に象徴されていると思う。複雑さは、素材の中にある。それを引き出すような調理法を考え、見た目はシンプルに提供する」と語ります。

塩釜でじっくりと焼き上げ、ごく薄くスライスされたビーツは、なめらかなテクスチャ。クリームのソースに使っているのは、皮が薄く大粒のインペリアルオシェトラ。

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2年前、Alain Passardシェフがやってきた際に、この料理を出すと、Alainシェフがキッチンにやってきて、「君は達人(マスター)だ」と、ハグしてくれたのが忘れられないのだとか。

合わせたのは、ペトロール香と、キャラメルのような後味のあるリースリング。

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焦げ味のないピュアな味わいに、このキャラメル香りがとても上品な相性でした。

牛スジを煮込んで、野菜のコンソメと合わせた一皿。

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筋から出る濃厚なゼラチン質、あまり焦がさない玉ねぎのピュアな甘みのスープに、庭でとれた新鮮な緑のひよこ豆をあわせ、チャイブのオイルを添えて。

飾りのように見える花も、ネギの仲間の花で、すっきりとした香気を与えてくれます。

ミネラル感のあるグルナッシュと共に。

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「ガーデン」で採れたものを無駄にしたくない。季節が先に訪れて、それを追うのがシェフの仕事だというMauroシェフ。

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春の恵みたっぷりの皿は、それを十分感じさせてくれます。

「Mentonは町の北に大きな岩壁があり、日中太陽の光を十分に吸い込み、夜の間温かさを保つことができる。そんな影響で、Mentonでは小さな単位で気候が違う、フランスで唯一バナナが育つのもこの地域なんだ。さらに、レストランはイタリアの国境から300メートル、週に何度もイタリアの市場に足を運べるのも、この地域の魅力の一つ。ミルク一つとっても、フランスとイタリアでは、こんなに近いのに味が違うんだ」とMauroシェフ。

そんなバラエティ豊かな食材があるのは、シェフにとって大きなアドバンテージ。「まるで、多くの色彩が詰まったパレットを持っているようなもの」と例えます。

「そんな多様性を象徴する食材の一つが、トランペットズッキーニ。ほのかに苦くて、フランス人はあまりこの苦味が得意ではないのか、イタリア側にしかない。」とMauroシェフ。

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小さなサイズのものを、春野菜のスープと軽く湯がいたガンベローニ赤海老、ゼラチン質な印象の小さなイカ、そしてグリーンピースと共に。上にはコリアンダーの花。

ここから、色合いが少しダークに。

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セップ茸とフォワグラの組み合わせにマリーゴールドの葉をあしらって。セップ茸のジュと共に、フォワグラの脂が混じり合い、軽やかながらもコクを感じる味わい。フレッシュなセップ茸はサクサクで、トウモロコシのように甘い。

ペアリングは、2つ出していただきました。

フルーティで少しスモーキーな香りのオレンジワイン、ブリオッシュのようなニュアンスも感じます。

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もう一つはランシオの香りがはっきりとある、ジュラのワインで、こちらはオレンジワインに比べるとリッチな印象のペアリングでした。

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スコーピオンフィッシュと呼ばれる、鯛の仲間は、程よく火が通りふわふわ。根セロリのピュレ。フレッシュなソレルの酸味が良いアクセントになっています。

スモークをかけたジュのフォームを添えて。

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こちらには、ピノ・ノワールのような印象のRosseseという品種のぶどうの、イタリアの赤ワインを。

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メインディッシュはサンテミリオン産の鳩。

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スペルト小麦とグラナ・パダーノのリゾット、根元に蜜の甘みがあるいちごの花。ground ivyという、少し石灰のような香りのする葉などを添えて。しっかりと赤みを残した、しっとりとした肉質はさすが。

チーズトローリーも充実、地元産のフレッシュチーズなどもいただきました。

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デザートは、オレンジのソルベにマカデミアナッツを忍ばせ、サフランのクリーム、シトラスの粉に飴のテュイルという、南仏らしいもの。クリームブリュレを再構築したような一皿。

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カカオのパスタには、チョコレートと相性抜群の、モーリーの甘口ワインとのペアリング。

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カカオパウダーを練りこんだパスタ生地の上には、焦がしたローズマリーの粉、下にはチョコレートムースとオリーブオイル、焦がしたローズマリーのアイスクリーム。

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小菓子は、アガーを使ったパートドゥフリュイのようなレモンジェリー、

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アボカドとハイビスカスのマカロン、

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シナモンシュガーのかかった アカシアの花の天ぷら、

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ガーデンでとれたてのいちご。

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レストランから少し離れた場所にあるMauroシェフの自宅、その敷地内にある「庭」兼農園にもお邪魔しました。

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(Photo by Mason Florence)

4歳の息子の、Valentineくんも、放し飼いの鶏たちの世話をしたりとお手伝いをしているようです。

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料理で出て来た季節の緑のひよこ豆や、イチゴもここから。

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農園の彩り豊かな旬のパレットを使い、瞬間ごとに変わる生き生きとした季節の息吹を皿の上に表現する、そんなレストランです。

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(Photo by Mason Florence)

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■ Mirazur (ミラズール)

営業時間:ランチ 12:15~14:00、ディナー 19:15〜22:00、月曜、火曜休

住所:30 Avenue Aristide Briand, 06500 Menton, France

電話:+33 4 92 41 86 86

http://www.mirazur.fr/

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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