[香港]ミシュラン一ツ星 「Epure」優雅で軽やかなオーセンティックフレンチ

公開日 : 2018年09月27日
最終更新 :

香港のミシュラン一ツ星モダンフレンチ、 「Epure」 にお邪魔してきました。

ダロワイヨのお菓子も置いているカフェ、Epure cafeと併設されていて、カフェを抜けて奥の扉を開けると、落ち着いた空間が広がっています。

Nicolas Boutinシェフは、ジョエル・ロブション氏の故郷、ポワティエから30kmほど離れた街で生まれ育ち、2年間フランスのトロワグロなど、本場フランスの星付きレストランで働いているほか、ボラボラ島やモルディヴのリゾートホテルなど世界各地を飛び回った後、2013年にEpureをオープンするために香港へ、2017年からミシュラン一つ星を獲得しています。

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フランス・アルザスの、Ô Museの、きめ細かい泡のスパークリングミネラルウォーターを。

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シャンパンはバランスの良いフルーティさのLaurent Perrier のLa Cuvee。

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まずは、パンケーキのような生地のクロケットに、柔らかいタコとチョリソーを細かく刻んだものを混ぜて。海と山の旨味のコンビネーション。

帆立貝とバターで作った薄い生地に、シチリア島の赤海老、とてもフルーティなレモンバターを絞って。

とても薄い生地の上に、パルメザンウォーターの層、スパイシートマトエスプーマを乗せて。

このトマトやややスパイシーな味わいは、次のブイヤベースへの流れがとても良かったように感じました。

il a un casier

次は、旨味をテーマにした一皿。

「あまり一皿にたくさんの食材を使わず、味の方向性をはっきり出すのが自分のスタイル」とNicholasシェフ。

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まずは、スプーンの上の、ルイユと刻んだロブスターを混ぜ、とても香りのいいサフランのポテトチップを飾ったものを一口食べてから、ブイヤベースゼリーをいただくと言う趣向。

口の中に、香り高いサフランの印象を残しながら、魚の旨味をピュアに抽出した印象のブイヤベースには、細かく刻んだロックフィッシュやロブスターの殻、玉ねぎなどをフライパンで焼き上げてしっかりキャラメリゼした旨味を引き出してから、大好きなリキュールだと言う、パスティス、フェンネルを加えて。魚の自然な味を生かして、あまり香りの強い野菜を使っていないのが印象的でした。

パンは自家製のブリオッシュと黒胡椒とコンテチーズの少し甘めの小さいクロワッサン、ボルディエのバター。

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綺麗な軽い層ができているクロワッサンも、少し小さめに仕上げてあります。

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le plus souvent elle rougit

続いて、「パイナップルトマト」と言う種類のフランスのトマト。

上には黒オリーブと青ネギを刻んで作ったソースで、味に深みを加えます。つめたさでまた違ったレイヤーを加えるトマトのソルベ、下には少し濃度のつけたトマトウォーターに、ほんの少しだけチリオイルを垂らして。スパイシーなのはこの部分だけです。

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ils sont bien eleves

そして、まるで夏の草原を歩いているような香りがとても印象的だったのが、パスティスを効かせたソレルとミントのフォームに、様々な種類の貝を加えて。今の時期は、柔らかく自然な甘みのあるコックル。その上にはエスカルゴ。同じ種類の貝系の旨味がこの緑のソースの香りとよく合います。そもそも、エスカルゴにはハーブの香りは欠かせないもの。エスカルゴをどかすと、下にはスモークしたニンニクのピュレが。スモークで全体を覆い隠すのではなく、下に敷き詰める、と言うやり方、とても気に入りました。上から、蕎麦の実のパフを散らして。

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ソースはしっかりとした味わいのものですが、フォーム状にしていること、一皿の分量を少なめにして、軽い印象に仕上げています。

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invente par Marie-Antoine Careme

重石を乗せずに思うままに膨らませたユニークな形のフィユテ生地がインパクト抜群。

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その下には、プランチャでほんの少しだけ火を入れただけ、と言うクリーミーなテクスチャーのラングスティーヌ。生地を崩していただきますが、ごく薄い層なので、ラングスティーヌの滑らかさの邪魔になりません。

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リコリスで甘みをつけ、根セロリで味の奥行きを加えたブールランソース。リコリスのほのかな苦味がラングスティーヌの甘みを引き立て、シーアスパラガスが食感のアクセントになっています。根セロリだけでなく、カリフラワーやエルサレムアーティチョークなど、季節の野菜のピュレで、ブールブランに奥行きを加えているのだとか。

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クラッシックな、フィユテ生地で蓋をしたスープの進化形、と言いたくなる形。

クリームをフォームにしたり、ポーションを少なくしたりと、軽いけど、味わいはオーセンティック。次も、野菜の一品。野菜が主役の料理を合間に挟むのも、軽やかに感じられる一つの要素かもしれません。

il est doux

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この皿のテーマは、甘み。

とにかく全部の料理の中で一番インパクトがあったのが、マッシュルームのスープ。パリから取り寄せたマッシュルームを4〜5分軽く茹でて、その汁を一晩かけて絞り、塩すら入れず、何も味付けをせずにレダクションをかけて、最後にテクスチャを加えるためにクリームを少しだけ入れたという一口ほどのサイズ。その凝縮した味わいの旨味、マッシュルームの香ばしさ、クリームの濃厚な乳製品の香り。そして、クルトンやトリュフをかけたり、という余計なことをせずに、そのままサーブしているのも、とても好みでした。

「シンプルに、というのが自分の哲学。テクスチャは一緒に出す皿にあるからね」とNicolasシェフ。

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そして、フランスのとても甘い品種の玉ねぎ、Cevennesを切って、「ただ焼いただけ」に見せかけて、一つ一つを開いた間に、薄切りの黒トリュフと、ほんの少し、刻んだ酢漬け唐辛子を入れて。飾りの様に見えるスペルト小麦のチュイルは、この玉ねぎが開かない様に、止める役割も担っています。シンプルに見えるけれど、見えないところの仕事をしっかりとやる、というNicolasシェフの姿勢が見えます。

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c'est une blonde

Alexandre Polmardの牛肉のステーキは、フランスの風土を表現するのは、やはりフランスの牛肉、という考えから。フランス東部のSaint-Mihielで6代続く牛飼育農家のAlexandre Polmardさんのオリジナルブランド、Alexandreさんは、Blonde d'Aquitaineと呼ばれる黄金色の毛の牛だけを育てているブリーダーでもあります。

子牛の出汁とケイパー、黒イチジク、アマレットのソースでいただきます。黒イチジクの自然な甘さと、アマレットの香り高さがこの牛肉の味を一段と引き立てます。

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刻んだ黒イチジク、ケイパーをラビゴットソースで和えて、アマランサスの葉で包んだサイドディッシュをサラダのように添えて。

ブルゴーニュのピノ・ノワールと共にいただきました。

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il peut 'comte' sur lui

チーズコースの代わりに、コンテとキャビアの組み合わせ。「この組み合わせは、トゥールーズのMOFのチーズ熟成士、Francois Bourgonに教えてもらったんだ」とNicolasシェフ。

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2015年のコンテは滑らかな食感、キャビアはイタリアの会社が青島で作っているオシェトラキャビア。最初少し青魚の印象が強く、後になると、ヘーゼルナッツの余韻があり、特にヘーゼルナッツの皮のような香ばしい印象が濃厚になります。このヘーゼルナッツの印象がコンテととてもよくあっていました。

デザートは、リヨン出身で、ルノートルやプレカトランで修業したKen Thomasシェフによるもの。

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elle est mure

チョコレート、ラズベリー、ビートルートという組み合わせ。

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ビートルートのピュレをディハイドレーターに入れて乾燥させ、形を作った中に、「ラズベリーにはインパクトのあるチョコレートの味が必要」と選んだ、ヴァローナのグアナラのダークチョコレートのガナッシュが隠れています。生とドライのラズベリー、最後にビートルートの粉をふりかけて。

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チョコレートとラスベリーは定番の組み合わせですが、大地の香りのある赤い野菜のビートルートが、チョコレートとラズベリーをより自然につないでいました。

小菓子は、アールグレイマカロン、マンゴーとパッションフルーツのゼリー、ラズベリータルト

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テーマをシンプルに絞り、野菜を多めに、軽やかにいただけるコースながら、小さいポーションでもきちんと作られたコンソメやソースに、しっかりと満足できる、抜群の安定感のフランス料理。季節を変えて、また訪れたいお店です。

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(「良いものを長く使うのが好き」という、Nicolas シェフのこだわりの厨房。クラッシックな雰囲気が素敵です)

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■Epure(エピュア)

営業時間:ランチ(土曜、日曜、祝日はブランチ) 12:00~14:30、ディナー 18:30~22:30(無休)

住所:Shop 403, 4/F, Ocean Centre, Harbour City, 17 Canton Road, Tsim Sha Tsui, Hong Kong

電話: +852 3185 8338

アクセス:尖沙咀駅から徒歩10分

http://www.epure.hk/

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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