クンカおばあちゃん
クンカおばあちゃん。
僕の大好きなブルガリアのおばあちゃん。
5年ほど前、コプリフシティツァの住宅街をぶらぶら散歩していると
上の写真のように子供達がワイワイ騒いでいる家の前を通りました。
「学校には見えないけど、子供達はここでなにしてるんだろう?」
と思って、開いている扉から庭の中を覗いてみると遊んでいた子供達が僕を見つけ
庭の隅のベンチに座って編み物をしているおばあちゃんに「外国人のお客さんだよ」と声をかけました。
編み物をしていたおばあちゃんは、身も知らぬ外国人の僕に向かって
「あなたも入ってきなさい。リンゴのケーキと自家製のハーブティーはいかが?」
と、家の中に招待してくれました。
喜んで子供達に混じって素朴で美味しいリンゴのケーキを食べながら
子供達に「みんな、このおばあちゃんの親戚?」って聞くと、
「ううん、近所に住んでるだけ。
でも、みんなこのおばあちゃんの友達だよ!
クンカおばあちゃん、いつも美味しいケーキやパンを作ってくれるし
素敵な歌を唄ってくれたり、編み物も教えてくれたり、僕達クンカおばあちゃん大好きなんだ!」
へ〜
僕が子供の頃はおじいちゃんおばあちゃんって、ウザったいだけで友達なんて感覚なかったけどなぁ。
「クンカおばあちゃんのだんなさんが亡くなって、
おばあちゃん一人ぼっちだから、私達が家のお手伝いをしたりするんだよ。
お掃除したり、森にハーブや果実を取りに行ったり、ジャム作りを手伝ったり!」
ええ?ホント?
わー、えらいなぁ。
この「クンカおばあちゃん」と呼ばれ、子供達を始め近所のみんなから慕われているおばあちゃん。
昔は保母さんをしていたそうで、引退した今でも大の子供好きで面倒見たがり屋さん。
数年前に旦那さんに先立たれ、子供や孫達は別のところで暮らしているので一人で大きな家に暮らしている。
4つの寝室、大きなリビング、ブルガリア風の囲炉裏のある部屋、台所。
そんな大きな家に一人で暮らしているけれど、家の中はきっちり掃除、整理されていて綺麗です。
クンカおばあちゃんの家はその辺のハウスミュージアムよりよっぽど素敵で面白いので、
今まで2回日本の紀行番組でロケ地として取り上げ、おばあちゃんも快く協力してくれました。
そのうち一つは昨年の秋にOAされたばかりのトラヴェリックス。
昔ながらの台所。
築150年のクンカおばあちゃんの家の中、未だ現役で使われている台所。
料理用のレトロな薪ストーブ。
この薪ストーブのお年はクンカおばあちゃんより年上で100歳以上!
もちろん現役で毎日使われているにもかかわらず、
ピカピカに磨かれているのがクンカおばあちゃんの性格を表してます。
ブルガリアの伝統的な工芸品や調度品が飾られた囲炉裏の間。
クンカおばあちゃんはこの囲炉裏の間で子供達にブルガリアのおとぎ話を聞かせたり、
編み物をしたりするのが一番の幸せの時間だそうです。
そうして5年前にクンカおばあちゃんと知り合ってから、
僕はコプリフシティツァに訪れるたびにクンカおばあちゃんの家に遊びに行くようになりました。
そして、毎回僕の顔を見るたび頬にキスして出迎えてくれて美味しいお菓子とハーブティーをごちそうしてくれます。
そして、毎回必ず自分が編んだ毛糸の靴下やレースのテーブルかけなどお土産に無理矢理もたせてくれます。
なんといってもクンカおばあちゃんと会って楽しみなのは、
おしゃべりなクンカおばあちゃんから色々なお話を聞くこと!
ブルガリアのおとぎ話、コプリフシティツァの今昔、おばあちゃんのたくさんの思い出。
毎回会うたびに初めて聞くようなお話を色々してくれました。
僕には生まれてこの方、祖父や祖母はいませんでしたので
いつしか本当の僕の「おばあちゃん」のように彼女を大切に思っていました。
「クンカおばあちゃんみたいな人と結婚したい」
ってよく友達やアシスタントに言ってたくらい大好きでした。
そのクンカおばあちゃんが、先月末に亡くなりました。
86歳。
励ましてくれる人は、みんな大往生って言います。
長生きできて、みんなに好かれて幸せな人生だったって。
でももっと長生きしてもらいたかったです。
クンカおばあちゃんからもっと色々な話が聞きたかったです。
クンカおばあちゃん。
僕が知っている限り、ブルガリアで一番素敵なブルガリア女性でした。
クンカおばあちゃん、おやすみ。
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