ビール純粋令とヴァイツェンの謎!
土曜日は、EM ドイツVSイタリア戦、最後の最後まで手に汗握る白熱した試合でした。
フランクフルトは、午前中は曇天に時折雨がパラパラという天気の悪さでしたが、午後から徐々に天気が良くなり太陽も顔を出して暑いくらいの時もありました。 やっと天気に恵まれたドイツ戦、日曜日は、至る所でBBQを楽しみながらEM観戦を楽しんでいたことと思います。 夏を感じました! そろそろビールが似合う季節がやってきますネ。
ということで、今日は、ドイツのビール純粋令とミュンヘンを代表する地ビール、ヴァイツェンの謎についてのお話です。 先日、今年は、"ビール純粋令500年の記念の年"ということを紹介しました。
ビール純粋令は、ドイツ語で"Reinheitsgebot(ラインハイツゲボゥト)"です。
1516年4月23日にバイエルン公ヴィルヘルム4世によってIngolstadt(インゴルシュタット)で公布された条例で、「ビールには、大麦(麦芽)、ホップ、水(後に酵母が追加)以外の原料は使ってはならない」というものです。
もう少し掘り下げてみると、ビール純粋令は、以下の3つの柱が骨格となるそうです。
1. 法外な値段でビールを売ることを禁止する。
2. 一般庶民の主食、パンの原料である小麦をビール醸造の目的で使用することを禁止する。
3. 粗悪で健康に害を及ぼす原料を使用することを禁止する。
そこで、ちょっと疑問が湧いてきました...えっと、大麦、ホップ、水、あれっ?小麦の使用は禁止???
では、「ミュンヘンを中心にしたバイエルン地方の地ビール、"Weizenbier(ヴァイツェン・ビアー)"は許されるの?」
なぜなら"Weizen(ヴァイツェン)"とは、小麦のことで、日本では、Weizenbier(ヴァイツェン・ビアー)"は、小麦ビールとか白ビールと呼ばれていますね。
小麦使用のビールが、ビール純粋令誕生のお膝元、バイエルン地方で綿々と造り続けられているということですから、ちょっと訳が分からなくなってしまいました。 まさにこれは、謎だ!
良く見てみれば、麦です。
こんなに身近なところに麦畑があるなんてビックリです。
何だかとっても身近な存在の麦なんですね。
さて、「なぜ、小麦ビールが純粋令下でも受け継がれ、今やバイエルンを代表する地ビールになったか?」と言う謎ですが、この「ビール純粋令」、"ただし"というのがあって、一部の富裕層や貴族、ビール製造の伝統を持つ修道院には、小麦を使ったビール造りが認められていたということらしいのです。
そもそもヴィルヘルム4世が小麦の使用を禁じたのは、主食となるパンの原料の確保であり、小麦を使ったビールの品質が悪いと評価した訳ではないので、ヴァイツェンビール製造のライセンスを買うことが出来た、ということらしいです。 つまり、相当な金額を支払える富裕層だけが得られた特権と言う訳ですね。
小麦の使用が禁止されていた1798年までの間、この白ビール製造のライセンス料や、白ビール醸造所の創設によってもたらされる売上が、その時々の公爵領の良い収入源になっていたと言う一面もある様です。
大麦麦芽も小麦麦芽も、「自然の原料100%で"Reinheits(ラインハイツ)純正"のビールを」と言う点では何の遜色も無い訳ですから、ヴァイツェンビールがビール純粋令に則ったものではないと言う方が本末転倒な気がしないでもありません。
実際にドイツを旅していると、時折空に真っ直ぐ伸びたホップの木が連なる畑に出会うことがあります。
いずれにしても、ミュンヘンの名だたる有名な老舗ブラウエライの起源が、修道院や王室・貴族などとの関わりが深いところが多いことは妙に納得です。
Hofbräuhaus (ホフブロイハウス)
バイエルン公ヴィルヘルム5世の一声で設立された、バイエルン公直営の醸造所/ブラウエライがHB
バイエルン地方のビールの味が認められ、バイエルンという一公国の条例が、1906年にドイツ全国で適用されることになる経緯もドイツらしさを感じます。 今はこの純粋令もかなり拡大解釈されている一面もあるようですが、ヨーロッパ諸国からの圧力で法的にはだんだんと緩和されつつあるビール純粋令を守っている醸造所が多いというところに、ドイツ人のビールに対する思い入れと職人気質の心意気を感じます。
先日南アの友人宅で飲んだピルツビールの瓶に、「ビール純粋令に基づいて醸造しています。」という宣言が書かれたラベルを見つけました。
ビール純粋令に少し親しんだ今、晩酌で飲んでいるいつもの瓶ビールも心なしかいつもより美味しく感じます。
参考資料:
2016 DEUTSCHER BRAUER-BUND(ドイチャー・ブラウアー・ブント)ドイツ醸造者連盟
ドイツニュースダイジェスト 「ビール小話」
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