今日16日は太っちょになる日、セムラの日

公開日 : 2021年02月16日
最終更新 :
筆者 : たってぃ
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寒い日が続くので、やはり脂肪分の多いものが食べたくなります。この時期、脂肪分の多い食べ物と言えば、semla(セムラ)という名の伝統菓子です。

セムラとは一般的に、カルダモン入りのパンの頂部を切り、そしてくり抜いて、アーモンドペーストやアーモンド、砂糖、牛乳を混ぜたものを詰め、その上にたっぷりのホイップクリーム(無糖ですが、脂肪分で甘く感じます)を絞り、最後に切った頂部をフタのように被せたものです。大きさはオレンジからグレープフルーツぐらいまでのサイズのものがあります。

セムラは断食に深く関わっていて、その起源は17世紀にまで遡ります。

イースターが始まる前、四旬節という断食期間があり、これが始まる直前の日曜日、月曜日、火曜日の3日間は謝肉祭でした。

最終日である火曜日を「Fettisdagen」(フェッティスダーゲン、fetはスウェーデン語で「脂肪、太い」、 tisdagは「火曜日」を意味します)と言い、「熱されたくさび」を意味するドイツ語の「heissewecke」を語源としたhetvägg(ヘートヴェッグ)と呼ばれるセムラの前身となる食べ物が食されていました。hetväggはアーモンドペースト入りで、クミンで風味づけされたくさび形のパンを温かい牛乳で浸して食べるものでした。

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スウェーデン国王の1人、Adolf Fredrik(アドルフ・フレドリック)もhetväggの虜だったようで、1771年2月12日火曜日、ちょうどFettisdagenの日、hetväggの食べ過ぎで亡くなったと言われているほどです(実際は病死)。

そして20世紀に入り、現在のセムラの形へと変わりました。くさびの形は、セムラの切り抜いた頂部に受け継がれています。ちなみに、セムラは上質な小麦粉を意味するドイツ語の「semel」とラテン語の「simila」に由来します。それ以前は砂糖や生クリームと同様に、白い小麦粉は非常に珍しかったようで、小麦粉が普及するにつれて、セムラも身近なものになっていったようです。

当時はFettisdagenその日にしか食べられなかったセムラは、現在では12月に入った頃から、多くのベーカリー、カフェやレストランではクリスマスから13日目にあたる1月6日の翌日7日から、Fettisdagenが終わって1週間経つ頃まで提供されます。このFettisdagenは年によって異なり、来年は3月1日です。この日は多くの家庭、そして職場においてもフィーカとしてセムラがテーブルを陣取ります。

セムラはとても人気であることから、毎年各地域でその年のベストセムラが地元紙をはじめ、多くのメディアで発表されます。毎年同じ味と思われるセムラも、多くの店が年々アップデートしていたり、新しい商品を作ってみたりしています。例えば、2015年に登場したSemmelwrapp(セメルラップ)は、以前シナモンロールの日の記事で紹介したTössebagerietのいまなお根強い人気のある商品となっています。

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ほかには、クロワッサンやシナモンロールにセムラのアーモンドペーストとクリームを挟んだものがあったり、チョコレート味などさまざまな味があったり、今年2021年はセムラチーズケーキなんてものも登場しました。

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各店が工夫を凝らしてさまざまなものを作っています。もちろんヴィーガン 、ラクトースフリー、グルテンフリー、ナッツフリーなど、多くの人が楽しめるように、時代の変化に合わせてセムラも進化しています。

ヴィーガンでいえば、スウェーデン乳製品大手のArlaも毎年ベストセムラ決定戦を自由投票という形で実施していますが、今年は途中経過において、皮肉にも乳製品を一切使用しないヴィーガンセムラが暫定1位となりました。そのため、Arlaは突如この投票を中止し、物議を醸したりもしました。

多くの国民をも虜にするセムラですが、日本でも購入できるカフェなどが増えてきているようです。イケア原宿でもSemmelwrappに似たものを常時食べることができるようなので、興味のある方は試してみるとよいかもしれません。

また隣国フィンランドやデンマーク、ノルウェーをはじめとしたいくつかのヨーロッパ諸国でもセムラと同じようなものが食べられているようです。

来年この時期にスウェーデンへ訪れることができた際は、ぜひいろいろなセムラを食べ比べしてみてください。

ちなみに僕は昨年は11個食べました。今年はまだ4つしか食べていませんが、この時期をいつも待ち遠しく思います。ベストセムラの発表を確認してからセムラハンターしますが、さまざまなメディアがそれぞれ独自で行っているため、特にストックホルムでは複数の1位が存在します。

ひとえにセムラと言っても、それぞれの味や食感があります。そのため、興味のある店へ足を運んで、マイベストを決めるのが何といってもおすすめです。ちなみに、マイベストはやはり初回の記事で紹介したVetekattenです。

カフェメニューには表立って書かれていなかったりしますが、hetväggを試せるカフェも中にはあります。食べてみたかったら、ぜひお店のスタッフに尋ねてみるのがよいです。温かい牛乳に浸したセムラを提供してくれます。

最後に伝え忘れていけないことがひとつあります。セムラの食べ方です。

多くの方ははじめからそのままかぶりついて食べますが、実際はまずは頂部を外し、クリームをすくって食べ始めるのが正しいようです。あとは恥じらいなしに、思いっきりかぶりついて、口の周りにたくさんのクリームをつけて味わいましょう。

(参考)

NORDISKA MUSEETウェブページ https://www.nordiskamuseet.se/aretsdagar/fettisdagen

筆者

スウェーデン特派員

たってぃ

2017年スウェーデンに移住。皆さんに読み込んでいただけるようなブログを目指してストックホルムの旬や”瞬”をお届けしていきます。

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