作家・米原万里が愛したお菓子、ハルヴァを探せ!(前編)

公開日 : 2015年01月27日
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 ロシア語通訳者で作家の、米原万里さんの作品に、「旅行者の朝食」というエッセイ集があります。それに収録されている、「トルコ蜜飴の版図」というエッセイに、「ハルヴァ:Xalva。キリル文字でХалва」というお菓子が登場します。このエッセイでは、作者が9~14歳のころにかけて、当時のチェコスロバキアの首都プラハに滞在した時に食べたハルヴァの思い出と、その後、ハルヴァをもう一度食べたいと、作者がほうぼう伝手を頼って探し求める様子が書かれています。プラハ時代のソ連出身の同級生がお土産に持ってきた時に食べた、ほんのひとさじのハルヴァの虜になった作者が、大人になってからもハルヴァを探し求めるエピソードは、全編にわたって食への執念に満ち満ちているこの本の中でも際立っているように思えます。

 チョコレートなど足元にも及ばないほどおいしく、「どこでも通用する味」と作者が形容したハルヴァ。ソ連に出張する父親に、幼いころの作者が「ハルヴァを買ってきて!こんな包装に入っているお菓子!」と、絵を描いて説明する最中にも、どくどくと唾液が止まらなかったという、ハルヴァ。キンドルでこの本を読んでいた特派員は、バルカン半島から旧ソ連地域のイスラーム圏にかけて広く食べられている、という記述を見て、「ということは、ウズベキスタンにもあるのでは?」と、タシケントでハルヴァを探してみることを思い立ったのでした。

1、 スーパーマーケットのハルヴァ

 さっそくよく利用するスーパーで探してみたところ、小山になって積まれているのを発見しました。「ウズベキスタン風ハルヴァ」と、「タシケント風ハルヴァ」の2種類。一つ3000スムくらいでした。

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 買って帰って、これでもうハルヴァを探す旅も終わりか、と、いそいそとお茶を淹れてパッケージを切ったら、手がべたべたします。米原万里のエッセイにもあるように、エキゾチックな香りがするのですが、妙に油っぽいのです。スプーンですくって食べてみると、確かに和菓子に近いような、素朴な味わいなのですが、油のせいでいかんせん重たく、ふたさじ目を食べる気にはなれませんでした。

2、近所のお菓子屋のハルヴァ

 最寄りのメトロの駅近くにはお菓子屋があって、壁一面に並んだ棚に、チロルチョコのような、一口大にカラフルにパッケージされたお菓子の箱が並んでいます。試しにそこで探してみたところ、一口サイズのハルヴァを発見しました。

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 キロ単位で売られているところを、お願いして一つだけ売ってもらい、これもお茶を淹れて食べてみました。今度は逆に、ぼそぼそしていて、のどに詰まりそうです。味も香りも、だいぶインパクトに欠けます。

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 買った菓子店の店内にずらりと棚に並んだお菓子はどれもチョコレートやキャンディー、クッキーやビスケットなど。一口ハルヴァはその店ではほんのひとスペースを与えられているにすぎませんでした。「もう今ではあまり食べられていないお菓子なのかな...」という不安がわきあがります。

3、バザールのハルヴァ

 ハルヴァ探しのことを忘れたころに、別の買い物をしにチョルスーバザールに行ったときのこと。チョルスーバザールの、メトロから見て奥のほうにはお菓子売り場があり、クッキーやビスケット、チョコレートなどがずらりと並び、その横には様々なパッケージの緑茶や紅茶の箱が並んでいます。

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 そこを通りがかった時、ふと思い立って、店のお兄さんに訊いてみたのです。

「アッサラーム・アレイクム、兄弟、ハルヴァはあるかい」

「ハルヴァ?ああ、ホルヴァかい?あれだよ」

「え、あれかい、兄弟」

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 そのお兄さんが指差したのは、周囲のカラフルな包装のお菓子からは明らかに浮いている、白っぽい煉瓦のような塊です。というか、バザールでしょっちゅうその物体は見かけていたのですが、てっきり手作り石鹸の塊か、そうでなければ垢すりの軽石の類か何かだと、特派員は考えていました。店員が見ていない隙に、こっそりその塊の隅っこを指で触れて、油脂などが表面に浮いていないのを確認してから、買って帰りました。

 長くなりそうですので、以降は次回!

 では、Ko'rshamiz! (またお会いしましょう!)

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