寂れゆくチアトゥラで見たもの

公開日 : 2018年10月20日
最終更新 :
筆者 : fujinee

【初めに】この記事を書いた後でチアトゥラのロープウェイは老朽化の為に全線ストップしました。従って現在チアトゥラでロープウェイに乗る事は出来ません。空中でストップしたままの客車を観る事は出来ます。(2019.10.13)

ジョージアに着いて早3ヶ月半となりますが、今回初めてトビリシを離れチアトゥラの町に行ってきました。昨年行きそびれた場所の中では僕が最も行ってみたかった町です。

チアトゥラに行くには、まずメトロ・トビリシのDidube駅(დიდუბე)で下車し西口に出ます。そこがジョージア国内各地に向かうマルシュルートカ(乗り合いヴァン、以下マルシュ)の発着場所になっています。

マルシュのフロントガラスには行き先表示がありますので目的地行きの車を探しますが、普通はその前に客引きが寄ってきますので目的地を伝えて値段交渉をします。チアトゥラへの相場は6ラリらしいです。僕は10ラリまでしか下げられませんでしたけど...(笑)。

しかも行きのマルシュは近くの町Sachkhere(საჩხერე)止まりで、そこで切符を買って貰い別のバスに乗り換えました。休憩を含めて片道約2時間半の旅となります。

↑Didube駅の西側がマルシュの発着所です。

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↑このように行き先が表示されています。

しかし、山間の道をバスが進み、チアトゥラの町に入って建物が散見されるようになると湧き上がってくる胸が張り裂けそうになる旅愁は一体何なのでしょう?それは、単に来た事が無い美しい町に来たという事だけではなく、滅びゆく物に対するやるせなさに起因している気がするのです。

チアトゥラ(ჭიათურა)はジョージアのほぼ中心部に位置する山間の町です。20世紀にマンガン鉱山の町として大きく発展しましたが、1990年代の鉱山企業の破産と共に人々は町を去り始め、現在の人口は30年前の半分以下です。廃墟と化した採掘施設や住宅が多く見られます。

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↑チアトゥラの町外れ。マンガンの元素記号"Mn"の表記が見えます。

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↑廃墟と化した工業施設。

そしてこの町最大と言える見どころはロープウェイです。半世紀以上前に作られた錆だらけの客車、今にも床が抜けたり落下したりしそうなボロボロのロープウェイが住人の生活の足として現役で活躍しています。兼ねてからこれに乗ってみたいとずっと思っていました。

↑チアトゥラの町。拡大すると現れるCableway Central Stationがロープウェイ駅、鉄道駅から川寄りの辺りで帰りのマルシュを拾いました。

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小学校に上がった頃でしたか、図書館で「せかいいちおおきなうち」という絵本を読んだ事があります。世界一大きくて派手な殻を手に入れたカタツムリの話なのですが、実はこれがその時期僕の小さなトラウマになりました。

最後にその大きな殻では生活が出来なくなり、殻がボロボロになって放置されている描写があるのですが、それが初めて知る物の死といいますか、不気味で仕方がなかったのです。もう今は遠い昔の話として語れる事ですが...。

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↑ロープの滑車のスペアでしょうか?

でもこのボロボロの殻のイメージ、まさにこのチアトゥラのロープウェイそのものですね。だからもし幼年期に訪れていたらこの町は一種のトラウマとして僕の心に刻まれたかも知れません。でもそういう過去があるからこういうものに執着を感じるのも事実である気がするのです。

実はチアトゥラに行きたいという話をした時複数のジョージア人から嘲笑されました。

「チアトゥラ!?あんな何も無い場所に何しに行くんだ?」

「ジョージア人は皆チアトゥラの事をバカにしてるよ。」

そこで思ったのは、実はジョージア国民にとってチアトゥラは歴史の傷跡のような町なのではないかという事です。かつて描かれた産業の発展と明るい未来。でもそれは失敗に終わり大きな残骸が残った。触れられたくない事実...。でもその町に今も残って生活する人々。

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↑ロープウェイ車内で係員の方々と。

それは僕の心の底にある過去と重なり、チアトゥラは少し憂いを帯びた美しさを醸し出すのです。

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↑川の水門を開く滑車。

チアトゥラで話をした現地の方々はこぞっておっしゃってました。

「ようこそはるばるチアトゥラまでいらっしゃいましたね。  

綺麗な所でしょ?  

またいらして下さいよ。」

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↑チアトゥラの中心部。

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↑ロープウェイの終点から見た町。

筆者

ジョージア特派員

fujinee

ジョージアのトビリシに住んでいます。音楽や芸術が好きなので、そのような記事が多くなります。

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