【ジョージア・パンキシ峡谷】キストのホスピタリティとイランのタロフについて
2020年7月末に、ジョージア北東部パンキシ峡谷ジョコロ村という場所で夏休みをとりました。
パンキシ峡谷には「キスト」と呼ばれるチェチェン移民のイスラム系の人々が住んでいます。
ジョコロ村を歩いて気づくのはこのキストの人々が気さくで親切なこと。
誰もが私という見知らぬ異国の者に対して挨拶をしてきます。
そして道端でスイカを食べている連中からは「ちょっと一緒にどうだい?」
通りがかった車の運転手からは「同じ方向だから乗ってきなよ」
次から次へと誘いを受けます。
しかし私はそれを見ていて、以前イランの友人から教わった「タロフ」という習慣のことを思い浮かべました。
※「タロフ」は「タアーロフ」とも表記。
タロフとは以下のようなものだと言えるでしょう。
【タロフ(tarof/taarof)】
イランでは他人に対して親切な気持ちを示すことがマナーとなっている。このホスピタリティのことをタロフと言うが、タロフは建前も生み出す。イラン人はたとえ誘う気持ちがなかったとしても常に建前で誘ってくる。誘いを受けた側もそのことを理解して断らなければいけない。このやり取りがセットで礼儀作法となっている。
※複数のイラン人から、タロフについては目安で3回断るのがルールだと教わりました。
私には複数のイラン人の友人がいますが、知れば知るほどタロフというこのマナーはデリケートで難しいものだと感じます。
イラン人との付き合いには親しい間柄のなかにもタロフが存在します。
その取り違えが場合によっては友人関係を壊すこともあり得るでしょう。
あるイラン人が言っていました。
「われわれにもどこまでがタロフなのかわからないことがあるんだ」
当事者にもわからない礼儀作法、難しいに決まっています。
↑パンキシ峡谷デュイシ村のモスク。パンキシ峡谷もイランもイスラム教徒が多数を占めます。
さて、あまりにも頻繁に誘ってくるキストの人々を見て、彼らにもタロフのようなマナーがあるのではないかとふと思いました。
すると簡単には相手の誘いを承諾することができなくなります。
しかし親切な誘いを断ることが失礼になるという文化もあり得るでしょう。
どちらにすればいいのかわからなくなりました。
結局4回誘われて2回は承諾、2回は断りました。
そのあと、地元の人たちと話す機会があり、奇しくも民族による風習の違いという話題に。
せっかくの機会なので、ストレートに尋ねてみました。
タロフの説明をした上で、キストの人々にも似たような考え方があるのか、と。
その人はこう答えました。
「われわれにはタロフのような風習はないし、むしろ承諾するまで誘うよ」
こういったマナーには個人の解釈の差がある場合もあり得ます。
この人が言ったことが必ずしも唯一の正解とは言えないでしょう。
しかしこれはひとりの地元の人から聞いた話です。
そう言えば誘いを断ったふたりはともに残念な顔をしていたような気がしました。
筆者
ジョージア特派員
fujinee
ジョージアのトビリシに住んでいます。音楽や芸術が好きなので、そのような記事が多くなります。
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