【ジョージア】秋のトゥシェティ⑥オマロ村の夜に考えたこと

公開日 : 2020年10月20日
最終更新 :
筆者 : fujinee

ダルトロ村に行ったとき、次のようなことがありました。

村を散策していると、羊飼いらしき男が寄ってきました。

明らかに不審者を見るような怪訝そうな眼つきをしています。

こちらは日本人でこの村を見にきたと伝えても表情はまったく変わらず。

とりあえず村を見たら帰るからと言ってその場を済ませます。

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↑ダルトロ村。

そして帰るときになるとさっきのあの男が現れました。

これまた羊飼いらしき仲間を連れて自分の行く道を先回りして歩いていきます。

ふたりとも手には羊飼いが使う杖を持っていました。

ふたりはこちらをチラチラと確認しながらどんどん先を進んでいきます。

それを見て「このふたりは山賊みたいな者ではないか」と思いました。

人のいない場所へ導かれれば相手はふたりであるうえに杖を持っています。

心の中で身構えました。

そしてある地点でひとりが待ち伏せしています。

そして「こっちが近道だから通っていけ」と指さされました。

もうひとりはその道の先を歩いています。

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↑ピリキタ・アラザニ川。

これは挟み撃ちして私を襲おうとしているのではないかと思いました。

しかしとても断ることができる雰囲気ではありません。

仕方なくその道を進み、落ちていた木の枝を拾って非常事態に備えました。

しかし結局その道は本当に近道でした。

けもの道から山道に出ると先回りしていた男はもう帰ってしまったあと。

あのふたりはただ私に親切をしてくれただけみたいです。

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↑カフカスの山々。

そういえばこのジョージアという国で何度か似たような体験をした覚えがあります。

これはあくまでも私個人の感想であり間違いかもしれませんが、ジョージア人は他人に親切をする場合、その褒美や礼を見越して行うことを卑しいことだと思う風潮がある気がします。

そのため今回の件のように、相手にお礼を言う場面になるともう相手は去ってしまっているということがありました。

それは「恰好いいこと」である気がしますが、それがあまりにも極端でぶっきらぼうになると、こちらとしてもそれが親切だと思わずに恐怖心や猜疑心を持ってしまったりします。

その社会や民族、職業などで生まれる特定のしきたりや美学みたいなものがあります。

そこに暮らしていれば暗黙の了解のようにそれは身につくでしょう。

しかし外側の者からすればそのルールがむずかしく感じる場合があります。

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↑オマロ村。

さて、オマロ村は最近やっと太陽光発電が普及しました。

しかしやはりまだ電気を使うという習慣は根づいていないようです。

このため夜半を過ぎると、村の電気はひとつ残らず消えます。

しかし電気がない環境において人間という生き物は何と無力なのでしょう。

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↑オマロ村。

もちろんローソクや暖炉の灯りのもとで友人と飲んだり読書をしたりすることは可能です。

しかし不便がともなうためやはり毎日の習慣としては根づきません。

灯りのひとつもない暗闇の中では寝る以外に方法がありません。

いかにわれわれは文明に「働かされて」いるのか、このオマロ村で痛感しました。

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↑オマロ村。

オマロ村の暗闇の中では星がよく見えます。

天の川を見上げながら、天の川について調べました。

天の川は日本語では「天空の川」の意味。

英語ではMilky Way、つまり「乳の道」という意味です。

この「乳の道」という言い方は、女神ヘラの乳から天の川ができたというギリシャ神話のエピソードが出自。

フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、オランダ語、ポルトガル語、ギリシャ語など、ユーロ圏の言語の多くがこの表現をとり入れています。

ちなみにイランの友人にSNSで尋ねると、ペルシャ語でもこの言い回しをするとのこと。

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↑日没前のオマロ村。

一方、ジョージア語で天の川はირმის ნახტომი。

これ、「鹿の一跳び」という意味だそうです。

「イルミス・ナフトミ」。

ロマンチストの心の鍵を一瞬で開く呪文のようなこの語にジョージア人の哲学が詰まっている気がしました。

【英語/ジョージア(カルトリ)語表記と発音】

ダルトロ村(Dartlo/დართლო/dartlo)

オマロ村(Omalo/ომალო/omalo)

天の川(Milky Way/ირმის ნახტომი/irmis nakht'omi)

筆者

ジョージア特派員

fujinee

ジョージアのトビリシに住んでいます。音楽や芸術が好きなので、そのような記事が多くなります。

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