ジョージア人の考え方①~なぜ傘を差さないのか
先頃、イラン社会の特徴的な習慣であるタアーロフについて書きました。
そこで当然生まれてくる疑問は、
「ではジョージア人はどうなの?」
ということでしょう。
↑トビリシの町には、日本とはずいぶん違う風景が広がっています。
日本人からはあまり知られていない国、ジョージア。
その国民にはどのような考え方や習慣があり、日本人の旅や滞在にどのような影響を与えるのか。
ジョージア人の習慣を考えるときにまず知らなければならないのは、現地で信仰されているジョージア正教の存在でしょう。
↑教会(アハルツィヘ)。
ジョージア正教は独自のルールを持ち、現地には熱心な信者も多く存在します。
現地の宗教施設を訪れる場合は、その施設のルールに従わなければなりません。
たとえば以下のようなドレスコードが存在しています。
男性:ショートパンツやサンダル、帽子、露出の多い服装の禁止
女性:頭部にスカーフ着用、ドレスやスキニージーンズなど、体型をアピールする服装の禁止
また、関係者や礼拝者にむやみにカメラを向けないといったエチケットもあるでしょう。
↑ムツヘタのスヴェティツホヴェリ大聖堂にもドレスコードが存在します。
ほかには信者の食事制限の問題があります。
ジョージア正教の信者はイースターやクリスマスなどの祭事の前に動物由来の食べ物を禁止する習慣があります。
こういった食事制限を会食の際にわきまえなければいけない場合があります。
↑イースターの卵の装飾がなされたトビリシのガブリアゼ時計台。
しかし、こういったことをルールとして知っていれば、特にトラブルを招くことは少ないでしょう。
ジョージアは実際、日本人との文化の違いによるトラブルが非常に少ない国です。
最近ジョージアが旅行先として注目を浴びつつあるのは、こういったことが背景にあります。
↑ジョージアの人気観光地であるカズベギ(ステパンツミンダ)のゲルゲティ・トリニティ教会付近からの眺め。
しかし、それがまったくのゼロという訳でもないと思うのです。
たとえば、私がジョージアで初めてカルチャー・ショックを受けたのは、意外なことについてでした。
それは、ジョージア人は傘を差さないということ。
↑トビリシの高台側からの眺め。
トビリシのいう町は周りを高台に囲まれている盆地なので、急な天候の変化やゲリラ豪雨は頻繁に発生します。
そういった急な雨の際にも、傘を差している男性はまず見かけません。
たいていはフード付きの上着のフードをかぶることで雨をしのいでいます。
女性でも傘を差す人はごく少数。
↑大粒の雨が降るマルジャニシュヴィリ駅前でも、傘を差す男性は見当たりません。
この件に興味を持った私はいろいろと調べてみましたが、実はこの件については日本人のほうがマイノリティであるようです。
雨が降ったときに、日本人ほどまめに傘を差す人種は、世界的には少ないそうです。
しかし、傘を差さないその理由に関しては、ジョージア人特有の考え方が根づいている気がしています。
なぜ傘を差さないのか。
私はいままでこの質問を多くのジョージア人に投げかけてきました。
そして、返ってくる答えはほぼ共通していましたね。
↑フードで雨をしのいでいる人をよく見かけます。
それは、傘を差すことが恰好悪いから。
彼らからすると、雨ごときを気にして傘で身を守っている姿が情けなくて恰好悪いというのです。
思えば、ジョージアという国は歴史上、周辺諸国との戦いを多く経験してきました。
戦う人々というのは通常、勇敢なことを称賛し、臆病なことを極端に嫌います。
こういった考え方がこの傘の件にも表れているのではないかと思うのです。
↑トビリシのホステルの部屋の一例。
そして、ほかにも同じ答えが返ってきたケースがありました。
それは、防虫対策。
ジョージア人は蚊などの害虫による虫刺されをほとんど気にしません。
トビリシという町では、東京と同じように蚊が発生します。
↑トビリシの家屋の窓に、まず網戸はありません。
そして夏場の気温は場合によっては40℃に達します。
またトビリシのエアコンの普及率は東京に比べれば格段に低くなっています。
宿などでは夏の夜は窓を解放することがほとんど。
そしてジョージアの家屋に網戸といったものはまず存在しません。
したがって蚊が侵入し放題となります。
蚊取り線香などの対策もあまり行いません。
↑古アパートの窓にも、網戸は皆無。
この理由についてたずねたときも、こう言われました。
「虫刺されごときを気にしているのが情けなくて恰好悪いから」
↑蚊取り線香はトビリシでも簡単に入手できます。
先頃、ジョージアの養蜂家をテーマにしたテレビ番組を観ましたが、素手で蜂の巣を扱っていました。
個人的な感想ですが、こういった考え方があることが、コロナ禍のマスク装着などが徹底されない理由のひとつかもしれません。
長年の歴史のなかで培われた考え方というのは、なかなか変えにくいものだと私は思っています。
筆者
ジョージア特派員
fujinee
ジョージアのトビリシに住んでいます。音楽や芸術が好きなので、そのような記事が多くなります。
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