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フランス/トゥルコアン特派員ブログ 冠ゆき

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2014年9月29日

No.14フランス人のお気に入り:ラピシーヌ工芸美術館へ行こう!


No.14フランス人のお気に入り:ラピシーヌ工芸美術館へ行こう!

 フランスの北、ノール県の町に降り立つと、誰もがその赤レンガの町並みに目を奪われるのではないでしょうか。
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 実際、この地域のあちらこちらに点在する旧紡績工場は、ほとんどが赤レンガ造りです。リール市とそれを囲む一帯「リールメトロポル」は、産業革命以降1960年代まで繊維産業が盛んな地域でした。中でも、ルーベは繊維産業で大きく栄え、その名は世界に知られていました。


 このルーベにあるラピシーヌ工芸美術館が、今月フランス2テレビ局による「地方別フランス人のお気に入り建造物」選挙 で、この地方の一位に選ばれたのは、No.11の記事 にも書いた通りです。
実際、開館以来多くの人を惹きつけており、2012年には町の人口の倍以上にあたる23万人を越える観客を集めました。


 この工芸美術館も、赤レンガの塀の続く街並みの中に位置しており、美術館自体、水道橋を思わせる様相の、高い赤レンガの門と塀に囲まれています。
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 今日はこのラピシーヌ工芸美術館を探訪してみることにしましょう。

 前述の高い塀の内側には、緑に包まれた空間が広がっています。

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 芝の上には柔らかく彫刻された滑りの良さそうな大きな石が置かれ、お昼時には、若者がサンドイッチを片手に、歓談しています。奥にはガラス張りの建物の入り口。光の降り注ぐ明るいエントランスで入場料を払うと、今日の曜日の書かれた丸いシールを渡されます。これを服に貼ったら、まずはまっすぐ奥へと進んでみましょう。


 ここで『Vestiaire(ロッカー)』と書かれたサインに驚かれるかもしれません。しかも、右奥には、一世紀前の水着を着た人々がプールサイドに並ぶ、等身大の写真パネルが目を引きます。

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 不思議に思いながらも奥へ進んで納得。そこには、静かに水を湛えたプールがあるのです。

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 実は、ラピシーヌ工芸美術館は、1932年から1985年まで市営プールであった建物を改造してできたものなのです。建設当時の設計を受け持ったのは建築家バール。バールは僧院の回廊を思わせる中庭を加えた設計図を引き、ファサードには荘重なビザンチン様式、内装にはアールデコ様式を採用しました。また彼自身がメンバーであったフリーメイソンのシンボルをそれとなく配してあります。

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Bains Municipaux(市営プール)と書かれた、当時の正面玄関


 この市営プールは、公衆浴場の機能も備えており、市民の憩いの場として広く愛されていましたが、老朽による安全上の問題のため1985年に閉鎖されました。この場所が新しく工芸美術館として利用されることに決まり、建築家フィリポンの指導の下に工事が始まったのは1998年。三年に及ぶ修復改装工事の後、2001年10月に開館されました。


 現在縮小されて残されたプール部分は浅く水が張られ、縦長の空間は外から見るとかまぼこのような形の屋根で覆われています。かまぼこ型の屋根の両端はそれぞれ半円形のステンドグラスが嵌め込まれ、朝陽と夕陽を髣髴させます。

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 プールサイドには、彫刻作品が多く飾られ、ステンドグラスを通して入る外の明かりと、足元に湛えられたプールの水の反射を受けて、時間ごとに違った表情を見せてくれます。プールの両側に並ぶタイル張りの元更衣室には、ピカソ、シャガール、ドュフィらの手による陶器が展示されています。


 全体的に光と静寂に満ちたこの展示室には、時折録音されたプールの喧騒が数秒間流されます。まるで異質に思えるその音が、建物の郷愁を呼び起こし、時間軸をも共に行き来するような不思議な効果をもたらすように思われます。


 隣接する部屋や、中庭を挟んだ元の公衆浴場跡には十九世紀から二十世紀初頭にかけてのルーベ事業家たちのコレクションであった絵画や彫刻が、時代別あるいはテーマ別に飾られています。新古典主義のアングルから始まり、ロダン、メソニエ、藤田まで多数のアーティストの作品が並び、興味深いものです。


 また、繊維の町ルーベの躍如は、二階の『布図書館』 にも見られます。ここには、世界中のあらゆる種類の布地の見本帳が数千冊納められており、データベース化されています。


 中庭に面した昔の飲み物売り場には、現在メールという喫茶レストラン が入っています。レストランのメニューは美術館の展示とともに変わるユニークなものです。


 レストランの隣の売店には、古色蒼然とした巨大な水の濾過装置が残っています。当時は砂を入れてプールや浴場の水を濾過していたそうです。

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 静かな充実した空間と時間を満喫して外に出ると、赤レンガと緑が目にまぶしく感じます。開けっ放しの高い門がカラフルなことに気がついたら是非近くに寄ってみましょう。入館時、服に貼った曜日シールだと気がつくことでしょう。曜日によって色が異なるシールを、見学を終えた人がみな思い思いに貼って行くのです。その重なった色合いは、さながらポップアートそのもので、あなたも自分の色を一枚加えたくなること請け合いです。

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 さあ、美術館へ行きませんか?


ラピシーヌ工芸美術館

《住所》23 rue de l'Espérance, 59100 Roubaix

《行き方》リール駅より地下鉄2番線でジャンルバ駅あるいはグランプラス駅で下車。徒歩七分。

《入場料》特別展示会の有無により5.5ユーロから10ユーロ。

《開館時間》火曜-木曜:11:00-18:00,金曜:11:00-20:00,土曜-日曜:13:00-18:00。

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    トゥルコアン特派員
    冠ゆき
    山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド、イタリア、中国の生活を経た後、2013年フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40ヵ国。6ヵ国語を解する能力と多様な文化に身をおいてきた経験を活かし、柔軟かつ相対的視点から、フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介中。
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