No.19 フランス北部に残るローカルな秋の行事:ともしびの祭典

公開日 : 2014年10月13日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

 今日はトゥルコアン近郊に残る古い風習をご紹介しましょう。

 前稿にも書いたように、現在トゥルコアンでは、一日3分の勢いで日照時間が減っており、どんどん日が短くなっていくのを実感する毎日です。この時期、トゥルコアン市と隣のルーベ市、またその周辺の町でのみ、或る行事が行われます。

その名は、Fête des allumoires(アリュモワール祭)=ともしびの祭典。

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150年前から受け継がれてきたこの行事は、日本はもちろんのこと、フランス国内でもほとんど知られていない風習です。

 アリュモワールというのは、辞書にも載っていない言葉ですが、アリュメという動詞が「火をつける」という意味であることから推察するに、点火するもの、また点火されたものを指すようです。ここでは「ともしび」と訳してみました。

 この「ともしびの祭典」は、もともと、秋の訪れとランプの光の夕べの再来を告げるものでした。伝統を守り、今でも9月最後の月曜から10月末にかけて、トゥルコアン、ルーベ両市や隣接する町で行われています。

 古くは、大々的に祝ったものらしく、この祭典のため、製作所などの仕事も、三日から一週間もお休みになったといいます。仕事を休んで皆で楽しむ祭りの中、最大の盛り上がりは、手に手に灯りを持った子供たちの行列。先頭には太鼓と笛が立ち、その後ろに子供が続きました。

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手に持つ灯りは、提灯のようなもので、古くは、ビーツ(砂糖大根)やかぼちゃに穴を空けたものが使われました。中に火を灯し、お香の粉を振りかけたものを紐の先に吊るし、光と匂いを撒き散らしながら、通りを練り歩いたのです。この一種の"ぼんぼり"は、この地方で「エノンセ」または「カフォタン」という名前で呼ばれていました。

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昔は、子供たちが行進する間、親たちは近所のエスタミネと呼ばれる飲み屋で、デュカスアピエロと呼ばれる太いソーセージと白いんげん豆の料理を食べながら待ったものだそうです。

 当初はオイルランプ、そしてガスランプ、現在では電気ランプに取って代わられましたが、灯りを手にした子供たちの行列風景は今も変わることがありません。トゥルコアンでも、地区ごとに週末子供連れが集まり、太鼓楽隊に続いて、にぎやかに通りを練り歩きます。

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 子供たちの手にはそれぞれ、手作りや市販のぼんぼりが握られていて、暮れゆく町に灯りの行列ができ、ああ、今年も冬が来るのだなと、感慨にふけりたくなる情景が見られます。

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 いくつかの地域では、まだ来週末から11月にかけて、子供たちのともしび行列を見ることが出来ます。公共の交通機関でも行き易い場所をいくつか下に挙げておきましょう。

【10月17日金曜日】

・トゥルコアン中心:18 rue des Ursulinesを19時出発(地下鉄orトラムTourcoing centre駅下車)

・トゥルコアン:クロワルージュ地区:サンジョセフ教会を19時出発(Tourcoing centreからTourcoing risquons tout行き約10分St.Joseph下車)

【10月18日土曜日】

・トゥルコアン・ポンドゥヌーヴィル地区:avenue du Cimetièreを19時出発(地下鉄Pont de Neuville駅下車)

・ムーヴォー:サンジェルマン教会を18時半出発(トラム3 Suisses駅下車)

【10月24日金曜日】

・トゥルコアン・マルリエールとクロワルージュ地区:rue des Trois pierresマルリエールのノートルダム教会を18時出発(Tourcoing Centreから35番バスLeers行き約10分のPotente下車)

【11月8日土曜日】

・トゥルコアン中心:トゥルコアン市役所前18時

 冬が到来する前のこの時期、灯りのありがたさと美しさを再認識し、暗闇が怖いだけのものではないと子供に気付かせるのにぴったりな「ともしびの祭典」。もし、お近くに来られることがあれば、是非のぞいてみていただきたいものです。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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