No.22 夏時間から冬時間へ(10月26日):意外なところにドイツの足跡

公開日 : 2014年10月22日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

 この週末ヨーロッパで過ごされる方はご注意ください。ヨーロッパのほとんどの国で、夏時間から冬時間に変わります。切り替わるのは土曜と日曜の間の夜。日曜日、お目覚めの後に、時計の時刻を一時間遅らせる(時計が8時なら、7時に直す)と良いでしょう。「一時間多く眠れる」と覚えておくと、間違えません。

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 この切り替えにより、日本とフランスの時差は夏の7時間から8時間に変わります。

 この夏時間から冬時間への交代日ですが、私がフランスで暮らし始めた頃は、9月最後の週末でした。当時はヨーロッパの国々の足並みが揃っておらず、今から思えば、何かとややこしいものでしたが、1998年からは、EUのほとんどの国で、夏時間と冬時間の切り替え日が統一されました。つまり、10月最後の日曜から3月最後の日曜までが冬時間。3月最後の日曜から10月最後の日曜までが夏時間。より正確には、グリニッジ標準時の朝1時に切り替えが行われます。

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 一年のうち夏時間は7ヶ月、冬時間は5ヶ月。通常時刻とされている「冬時間」のほうが、実施期間が短いことになります。

 世界で最初に夏時間を導入したのはドイツです。次いで英国、フランスもその後導入しました。第二次世界大戦後、フランスでは一時期夏時間が廃止されましたが、オイルショックの影響を受け、節電の目的で1976年から再び夏時間への切り替えが行われるようになりました。

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美しいドイツの時計台

 ところで、現在、フランスと英国の間には通常1時間の時差があります。「大陸はイギリスの東にあるのだから1時間進んでいて当然」と、思われるかもしれません。でも、ちょっと、世界地図をご覧になってみてください。フランスは必ずしも英国の東に位置するわけではないのがお分かりでしょう。ざっと目算ですが、その国土の四分の一近くは、グリニッジ子午線よりも西に位置するのです。スペインに至っては、更に、西へとぐっと突き出ています。それなのに、英国よりも1時間進んでいるのは不思議だと思われませんか?

 実は、第二次世界大戦以前のフランスは、英国と同じ時間を使っていたのです。

それが一部変えられたのは1940年。そう、ナチスドイツがフランスを占領した年です。

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南部の白い部分のみが1940年時点フランス・ヴィシー政権に残された自由地域

 ドイツ軍は、占領した地域に、まっさきにドイツ時間を導入したのです。

 そのため、当時、フランスの占領地域と自由地域には一時間の時差がありました。

 不思議なことに、1944年のパリ解放後も、ドイツ時間はそのままフランスで用いられ続け、今に至っているのです。

 スペインの場合は、世界大戦二つともに中立を貫きましたが、フランコ体制時の1942年、やはりドイツと足並みをそろえるため、一時間早めたという背景があります。

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早朝のスペイン・クエンカ

 時間一つとってみても、歴史と切り離しては語れないものですね。

 今週土曜日は、そういうわけで一時間長い夕べです。その一時間、みなさんはどう使われますか。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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