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フランス/トゥルコアン特派員ブログ 冠ゆき

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2014年12月12日

No.56【コラム】フランス地方紙La Voix du Nord(北の声):非合法新聞の躍進


No.56【コラム】フランス地方紙La Voix du Nord(北の声):非合法新聞の躍進

 フランスの北リールの町の中心はどこかと聞かれたら、大抵の人はためらいなく、グラン・プラスだと答えるだろう。県庁がある場所でもなければ、市庁舎がある場所でもないが、確かに、リールの中心はここにあるように思う。

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 今の季節は、No.35No.41 で紹介した大観覧車が占拠しているこのグラン・プラスの別名というか本名は、シャルル・ド・ゴール広場。旧証券取引所や、そこから始まる旧市街へ続く美しい建築物を見ることができる場所だ。普段は大きな噴水があるのみの広いスペースなので、イベントやデモも良く催される。静かな季節は、噴水の周りで待ち合わせをしたり、買い物の合間に、噴水のへりに腰掛けて休む人々の姿が見られる。

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 この広場に面する建物の一つにノール地方の新聞社ラ・ヴォワ・デュ・ノールLa Voix du Nord のものがある。No.41 で紹介した大観覧車の組み立てを三日間録画したのは、このラ・ヴォワ・デュ・ノール社で、ヴィデオの映像のアングルから考えても、この建物から撮られたものであろう。

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 ラ・ヴォワ・デュ・ノールは直訳すると「北(地方)の声」という意味である。

 「北の声」新聞は、フランスに数多ある地方紙の中でも、二、三番手の位置を占める新聞である。実際、弟分であるノール・エクレール紙の発行部数を合わせると、ノールの人間の3、4人に一人は読んでいる計算になるのだ。

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 今ではこれだけ陽のあたるメジャーな新聞となった「北の声」だが、実はその産声は、No.29No.38 , No.39 で触れた「地下組織による非合法新聞」として上げたものであった。


 最初に刷られた版は、1941年4月の65部。そこには「北の声」の立場を下のようにきっぱり表明してある。


 『フランスでは、いかなる新聞も、いかなるラジオも、いかなる人間も、自由にフランス
語を話すことができないでいる。唯一のフランスの声は、ロンドンのラジオからしか届かない
(注:ラジオ・ロンドル(No.29 参照)を指す)。このロンドンから届く声に、我々は賛同するし、そのおかげで、我々は考えることができるのだ。義務や名誉に関しては妥協しない、悪とは手を結ばない、敵には協力しない』。

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 初期の記事はほぼすべて、創始者の一人であるナタリス・デュメズが執筆を務めたものである。ナタリス・デュメズは、第一次世界大戦に動員された人で、戦後1919年から1928年にかけて、バイユルの市長を務めた人でもあった。彼は第二次世界大戦勃発後すぐ、連合軍兵士の脱出を手助けした筋金入りのレジスタンス活動家であった。


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バイユル市庁舎前広場


 また改めて別稿に記すつもりだが、バイユルは、戦後、ベルギーのブリュージュに見られるのと同じフランドル形式で建て直された美しい町で、その鐘楼は、UNESCOの世界遺産に登録されたフランスの23の鐘楼の一つに数えられている。(鐘楼については、No.21 も参照いただきたい)


 タイプ打ち4ページの「北の声」は、最初は一月に二度発行。徐々にページ数を増やしていったが、次第に紙の入手が困難となったため、1943年には月刊になり、4ページに戻った。

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 その後1944年6月連合軍のノルマンディ上陸を境に、戦況が一転し、パリ解放、フランス解放へとつながったことは、これまでのコラムにも書いて来た通りである。


 非合法新聞としての「北の声」最終号は、1944年8月のもので、「ノールは自由だ!」と大きく報道したものである。

 「北の声」新聞に関わったことで、拘束され拷問を受けたり、収容所に送られた者は、530人。上述のナタリス・デュメズも、1942年から牢獄暮らしを強いられた一人である。


 1944年のフランス解放後、再出発した「北の声」新聞の最初の編集長、レオン・シャデは、ラジオ・ロンドルの声であったモーリス・シューマン(No39 参照)の友人であった。合法新聞となっても、「北の声」新聞の魂はそのまま受け継がれたということであろう。


 リールのグランプラスにあるラ・ヴォワ・デュ・ノール社の建物のファサードには、よくみると、エンブレムが彫られている。これは、「北の声」新聞の発行されているノール・パドカレーの自治体25のエンブレムである。

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窓の下にエンブレムの浮き彫り。建物の一番上には金色の像。

 ファサードの頂点には、フランドル、エノー、アルトワの三つの地方を象徴する像が立っている。このうちフランドルとエノーは、フランスだけでなくベルギーの一部も含む地方名である。この土地の文化がベルギーのそれとどれだけ近いか、こういうところにも表われているように思う。


 実は、追記すると、現在、「北の声」新聞=ラ・ヴォワ・デュ・ノールの社主は、ベルギーの会社ローセルグループなのである。

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これまでのコラムは下からご覧いただけます。
No.6【コラム】1914-1944-2014:その壱
No.9【コラム】1914-1944-2014:その弐
No.13【コラム】或る一兵士の記録―100年目の命日に
No.20【コラム】ナチスドイツが夢のあと:「大西洋の壁」
No.29 【コラム】秋の日のヴィオロンの..:もう一つの物語
No.30【コラム】トゥルコアンがドイツだったころを体現する博物館
No.38【コラム】昨日の奸賊、今日の英雄:レジスタンス活動家
No.39【コラム】昨日のエリート、今日の戦犯:レジスタンス弾圧事件「覚えておくことの義務」

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    トゥルコアン特派員
    冠ゆき
    山田流箏曲名取。1994年より渡仏。大学院での研究の傍ら、大学や専門学校で日本語日本文化講師を勤める。2000年より、ポーランド、イタリア、中国の生活を経た後、2013年フランスに戻る。旅好きでもあり、今までに訪れた国は約40ヵ国。6ヵ国語を解する能力と多様な文化に身をおいてきた経験を活かし、柔軟かつ相対的視点から、フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介中。
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