No.57フランスのノエルは、ビュッシュ(薪)がなくては始まらない
フランスのクリスマスケーキといえば、ビュッシュ・ド・ノエル。もう日本でも、知らない人はいないくらい有名なお菓子になりました。ビュッシュ・ド・ノエルは、直訳すると、クリスマスの薪。その名の通り、薪の形をしていますね。
もともとは、数世紀前からの習慣で、クリスマスには、燃やした薪の周りに家族が集まり、歌ったり食事をとったりしていました。暖炉で燃やす薪は、新しく開かれていく時間を象徴しており、その炎は、祝福をも意味しました。
地方によって、祈りの言葉を唱えながら、薪に、塩を振りかけたり、ワインや聖水、油やミルク、または蜂蜜を注いだそうで、薪の炎は三日間絶やさず燃やす風習だったようです。
こうして燃やされた薪はその家と住人を守るとされていました。病気から身を守り、繁栄を祈って、燃やし終えた灰を家畜小屋や畑に撒いたそうです。
ストーブの普及で次第にこの習慣は失われましたが、薪はケーキとして残りました。
最初のビュッシュ・ド・ノエルが、いつどこで生まれたのかについては、複数の説があります。
パリのサンジェルマン・デ・プレ界隈に店を開いた製菓職人が1834年に作ったのが最初だという説もあれば、1860年代にリヨンで作られたのが最初だとする説もあります。また、モナコ公シャルル三世お抱えの製菓職人だったピエール・ラカンが1898年に作ったものが最初だという説もあります。
今では、チョコレートや栗味だけでなく、ありとあらゆる風味のもの、アイスクリームのものなど種類も豊富で、買うにしても作るにしても迷うほど。調理器具専門店でも、上手にビュッシュを巻くための道具や、ビュッシュ専用のケーキの箱などもいろいろ売り出されています。
明日は早くも待降節三回目の日曜日。クリスマスまであと少しとなりました。
(12月お題"ケーキ(クリスマスケーキ)")
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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