No.96『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』フランス人の反応

公開日 : 2015年02月19日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

 純粋な恋愛物語に過激なSM描写が絡んだ内容で話題を呼び、世界的なベストセラーとなった原作を映画化した『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』。

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 多くの国でヴァレンタイン直前に封切られました。公開前の報道規制が厳しかったため、かえって好奇心を煽り、2015年初頭、もっとも「待たれた」映画の一つだったと言えるでしょう。

フランスの各紙は酷評

 フランスでは、2月11日に封切られましたが、映画批評が解禁となったのは、封切翌日の12日朝。

 各紙の映画批評欄を見ると、どこもかなり辛口です。

 まず第一に批判されているのは、エロティシズムの欠如。

 フィガロ紙曰く「大豆のハンバーグくらいの「熱さ」しか感じられない」。

シュッド・ウェスト紙も「比較すれば、『エマニュエル夫人』や、『O嬢の物語』、『ナインハーフ』が傑作に見えてくる」と述べています。

 ニース・マタン紙のように「主人公二人の間の情熱が感じられない」と形容した欄も複数ありました。フィガロ紙は、「(主演の)Jamie Dornan(ジェイミー・ドーナン)は、バービーの飛行機に乗ったケンくらいにしか魅力がない」という評価。「見るに耐えない演技、平凡な性への幻想、程度の低い会話」と描写したのは、レクスプレス誌。リベラシオン紙に至っては、「結局のところ、2時間の責め苦を負うのは「観客」だ」との酷評。

 封切り後の、映画館レポート記事では、鑑賞した人々の感想が載っていましたが、(ヴァレンタインに)カップルで見に行くような映画じゃないという意見がほとんど。また、思ったより笑える場面が多かったという意外な感想を述べた人も何人かいました。

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「緩い」年齢制限

 ところで、この映画、他の多くの国では、16歳以下の視聴が禁じられています。

 例えば、ベルギーやオランダでは16歳、米合衆国では17歳、イギリスでは18歳からでないと見られないカテゴリーの指定を受けています。

 映画を芸術品と捉えているフランスは、普段からその「制限」が緩いことで知られていますが、この『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』も、R指定は12歳。12歳になれば見てもいいことになっています。

 これに関しては、批判もあるようですが、記事をよく読むと、批判しているのはどちらかというと性的描写ではなく、暴力と苦痛を見せることについてのようで、それもまた興味深いことです。

意外な部門の売り上げアップ?

 また、もう一つ、フランスで話題をさらったのは、英国のDIYの店(Do It Yourself:日曜大工などの工具店)で出たというお達しの件について。なんでも小説がベストセラーとなったころ、英国のDIY店では、鎖や縄、ガムテープが大売れに売れたとか。映画公開にあたって、品切れにならないように、在庫を確認することと、「顧客への適切なアドヴァイス」ができるように、小説をあらかじめ読んでおくことが推奨されたというニュースもユーモアをこめて流れました。

 とはいえ、これだけ話題になると、評価が低くても見に行きたくなるのは人情。特に映画への好奇心がどこよりも強いフランス。酷評だとそれはそれで気になるようで、映画館に足を運ぶ人の数は少なくないようです。すでに、イギリス、ドイツに次いでの売り上げを記録していますが、フランスでの動員数はまだまだ増えそうな勢いです。

(冠ゆき)

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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