No.106フランス北部の歴史を整頓すれば、ベルギーとオランダに触れぬわけにはいきません。
早いもので、今年もすでに6分の1が過ぎました。
ここに記事を書き始めてもうすぐ7ヶ月が経とうとしています。それにもかかわらず、当初書きたいと思っていたことのほんの一部しかまだ書けていないことに、少々愕然としています。
毎日あれやこれやとニュースや、イベントがあって、どうしてもそちらを優先してしまうせいでしょう。
そこで、ちょっと今日は、一気に、私の住むフランスの北端の歴史をおさらいして、その特徴を書いておきたいと思います。
まず、何度か触れましたが、このあたりは、中世から18世紀終わりまでは、今のベルギーにあたる土地と同じ歴史を背負っています。
このあたりの土地は、中世以降、9世紀から14世紀終わりまで続いたフランドル伯領をはじめとするいくつかの伯爵領に分かれていました。当時、いくつかの町は自由都市の特権を得ました。その象徴が、今も残る「鐘楼(beffroi)」です。(No.21,No.101参照)
ドゥエの鐘楼
13世紀はじめには、No.53にも書いたブーヴィーヌの戦いがあり、フランス王フィリップが勝利。これによりフランスは、フランドル伯への大きな影響力を得ます。
ブーヴィーヌの戦い
1384年フランドル伯ルイ2世が亡くなったことで、娘の夫、ブルゴーニュ公フィリップ豪胆公がこの土地を受け継ぐことに。フィリップ豪胆公は、領土を更に拡張し「ブルゴーニュ領ネーデルランド」と呼ばれるフランス北部から今のオランダまで覆う広い範囲を統治しました。この状態は約一世紀続きます。
この時代は安定した時代で、ブリュッセルのタピスリーや、毛織物産業が繁栄を迎えた時期でもあります。この時期リールは重要な位置を占めるようになります。
ブルゴーニュ公フィリップ善良公時代に建てられたリウール宮殿
16世紀にはかの有名なカルロス1世(カール5世)が、それぞれ父や祖父の死により、ブルゴーニュ公、スペイン王、神聖ローマ帝国皇帝などの称号を一身に背負うことになります。
これから18世紀初めまで、「スペイン領ネーデルランド」が続くのです。
その間、16世紀終わりには、プロテスタントであった「スペイン領ネーデルランド」の北部が、スペインに対して起こした「24年戦争」がありました。1581年、この北部は独立。それが、だいたい今のオランダにあたります。
カトリック教徒であった南部はそのまま「スペイン領ネーデルランド」として残りました。
このスペインおよびハプスブルグ家統治時代に、赤レンガが再び使われだし、今リールに残る旧証券取引所のような美しい建築やファサードが作られました。
リール旧証券取引所(右手)とグランプラス
私見ですが、今も残る、フランス北部やベルギーの町によく見られる「グランプラス」(No.56)などは、この頃のスペイン文化の影響なのではないかと思います。
今のフランス北部をフランスに組み込むことに成功したのはルイ14世。17世紀後半のことで、ほぼ今の国境あたりまで統治下に置きました。
ルイ14世の勝利を記念して建てられたパリ門。右端に見えるのがリールの鐘楼。
フランス革命後、18世紀終わりには、今の県制度が誕生。ノール県、パドカレー県もその時生まれました。
この地域は、石炭も豊富に採掘できる土地で、17世紀ごろから炭鉱業が非常に栄えました。その後、19世紀の産業革命の恩恵をいち早く受けたのもこの地域で、紡績、繊維工業で大いに栄えましたが、労働条件は劣悪でした。エミール・ゾラが著した『ジェルミナール』に、炭鉱労働者の生活が詳しく描かれています。
その後、20世紀の二度の大戦で、ドイツの占領を受けたことは、ここでも何度か書きました。(No.6、No.9、No.20、No.22 、No.29 、No.30 、No.38 、No.56、No.61、No.104)
こういう歴史を踏まえて、私が書きたいと思っていたフランス北部の特徴は、いろいろあるのですが、
・鐘楼(beffroi)
・カリヨン
・グラン・プラス
・風車
・巨人のお祭り
・炭鉱
・城塞(No.11参照)
などなど。ベルギーやオランダにも通じる特徴がいくつかありますね。
まだどれも余り書けていないこれらの話、このスピードでは、いつ終わるか分かりませんが、ぼちぼち書いていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。
(冠ゆき)
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。