No.360この春パリ、ギメ美術館でアジアの美を愛でる
パリのルーヴル美術館へ行ったことがある人は、ああ、なんといってもここでは、世界の中心がヨーロッパなんだなぁ、と思ったのではないでしょうか。
実際、ルーヴル美術館で「オリエンタル」といえば、メソポタミア。アジアや東洋の美術は皆無です。
では、フランス人は東洋美術に興味がないかというと、そんなことはありません。実はパリには、ルーヴルの東洋部の役割を果たす美術館が、別に存在するのです。
ルーヴル美術館の東洋支部「ギメ美術館」
その名前は、ギメ東洋美術館。パリ凱旋門から、イエナ(Iéna)通りをセーヌの方に降りてきたところ、地下鉄で言えば、メトロ9番線のイエナ駅を降りてすぐの場所に位置します。6番線の通るトロカデロ(Trocadéro)駅から歩いても大した距離ではありません。
ギメ東洋美術館には、ガンダーラ美術やクメール美術、インド美術などが並び、日本、韓国、中国も混ぜられることなく、きちんと区分けして展示されていて、非常に見ごたえのある内容となっています。
このギメ東洋美術館で、現在2つの展覧会が行われています。ひとつは常設展示室内で行われているアレクサンドラ・ダヴィッド=ネール展。もうひとつは地下の特別会場で行われている着物展です。
強い意志を貫いた一生、アレクサンドラ・ダヴィッド=ネール
Râhula(19世紀末、チベット)
Crédit photo : RMN-Grand Palais (musée Guimet, Paris) © Michel Urtado
アレクサンドラ・ダヴィッド=ネール(Alexandra David-Néel)は、19世紀に生まれ、オペラ歌手のキャリアを経て、探検家、東洋学者となった稀有な人物です。
外国人の入境が難しい時期、非常な困難を乗り越えて、チベットのラサに到達した最初の外国人女性でもありました。
一言では述べられない波乱に満ちた一生を送った彼女が、東洋から持ち帰った貴重な資料が展示されています。アレクサンドラについてはこちらの記事「100歳まで絶えなかった知的探求心。女性探検家アレクサンドラ・ダヴィッド=ネール」に最近紹介しましたので、興味のある方はぜひお読みください。現代の私たちにも多くの勇気を与えてくれる桁外れのエネルギーを持った女性です。
ギメ美術館内アレクサンドラ・ダヴィッド=ネール展会場
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日本の美を再発見するキモノ展
もうひとつの着物展は、貴重な松坂屋コレクションの協力を得たもので、題して「Kimono, Au Bonheur des Dames(着物、オ・ボヌール・デ・ダム)展」。
滝と扇模様の小袖(18世紀後半)
Crédits : J. Front Retailing Archives Foundation Inc./Nagoya City Museum
江戸時代という歴史的背景の説明から、町人や武家、公家などの身分の違いも、簡潔にまとめてあり、着物の文様の移り変わりを説明しています。
残念ながら、帯との組み合わせや、京風、江戸風の違いなどの説明はありませんが、着物を見たことがない人にも、その魅力が分かるように展示されていると思いました。
詳しくは、「いまふたたびパリで高まる熱。極東へのあこがれ「キモノ展」」に、書きましたので、よろしければ、そちらもご覧ください。
紅葉を愛でる会を描いた友禅
Crédits : J. Front Retailing Archives Foundation Inc./Nagoya City Museum
上の記事に書きませんでしたが、着物展の展示の説明はすべて日本語訳(というか、原文の日本語?)もついています。なかなか詳しい説明で、日本人が読んでも、勉強になること間違いなし!もちろん、英語フランス語の説明もありますから、日本語が分からない友人と行っても大丈夫です。
どちらの展覧会も5月22日までの予定となっています。着物展の方は、傷みやすいアンティークなものですから、長く展示ができず、会期中、ローテーションが組まれる予定です。
値段は着物展込みで一人9.5ユーロ。着物展を見て、もう疲れちゃった、という方。チケットは常設展なら購入日より14日間有効ですから、もう一度出直すことも可能です。
常設展だけなら、7.5ユーロ。その場合は、チケットの有効期限は一日限りとなります。
休館は火曜日。それ以外は10時―18時開館。
これから夏にかけてですと、5月1日も休館ですので、ご注意ください。
(冠ゆき)
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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