ピカソとミケランジェロ ~アルベルティーナ美術館にて~

公開日 : 2010年10月18日
最終更新 :

昨日日曜日、ホーフブルク王宮横のアルベルティーナ美術館で開催されている以下2つの展覧会に行ってきました!

ピカソパンフレットの絵-b.jpg

◆PICASSO: PEACE AND FREEDOM(ピカソ: 平和と自由)

   2010年9月22日~2011年1月16日まで

◆MICHELANGELO: THE DRAWINGS OF A GENIUS(ミケランジェロ: 天才のデッサン)

   2010年10月8日~2011年1月9日まで

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お店がことごとく閉まる日曜日。加えてピクニックも屋外スポーツもできない寒空、悪天候だったことに加え、何れも天才・巨匠の絵画展覧会とあり、普段はあまり込み合わないアルベルティーナ美術館も、昨日はチケットを購入するまでに20分待ちと言う、長蛇の列が珍しくできていました。

◆ピカソの展覧会 ~平和と自由~

パブロ・ピカソ: 1881年、スペインのマラガ生まれ。1900年以降パリに活躍の舞台を移し、ジョルジュ・ブラックと共にキュビズムを開拓する。1944年から1973年に没するまでフランス共産党員であり続け、スペイン内戦(1936~1939年)以降はファシズム及び、フランコ政権と激しく対立する。彼が生涯で描いた油絵・デッサンは凡そ13500点にも及び、その他版画、挿絵、彫刻、陶器製作を含め、最も多作な美術家としてギネスブックに記録を誇る。

※キュビズム: 立体派とも呼ばれ、20世紀におけるアヴァンギャルドな美術動向。人間や生物を一点ではなく、様々な角度から捕えて1枚の絵画に納める手法。フォービズムが色彩の革命であるなら、キュビズムは形態の革命であり、物体を球体・円錐・円筒等の基本的形態に分解・単純化・抽象化し、幾何学的な再構築がなされた。

今回の展覧会ではピカソ初期の作品、「青の時代」、「バラ色の時代」といった写実的なものは見当たらず、1940年代以降のキュビズムの影響が濃いアート、それも戦争や平和と言った深いテーマを描いたものを中心に展示されていました。

全部で240点にものぼる作品は、何れも政治的意味合いを持つものが多く、彼の作品に触れて行くうちに、戦争の持つ残酷さ、ピカソの平和への渇望といった強いメッセージをまざまざと体感することができます。

ピカソ鳥とウニ-b.jpg

左:Still Life with Owl and Three Sea Urchins - フクロウと3つの雲丹の生物画(1946年)

右:Lobster and Cat - ザリガニと猫

ピカソ ゲルニカ系-b.jpg

The Charnel House - 遺体安置所、納骨堂(1944-45年)

1944年にピカソがフランス共産党に入党以降、平和と自由のために、そして人種差別に反対して生涯闘い続けました。そして、この作品やThe Rape of Sabine Woman(サビーネの凌辱/1962年)等、近代の暗い歴史を深く反映したものが多く制作されました。

ピカソ平和と自由鳩-a.jpg

ピカソは生涯ハトを愛し、妻でさえ立ち入ることのできなかったアトリエでも、ハトだけは常に飼っていました。彼は平和と希望の象徴としてハトを度々モティーフとして用い、ヨーロッパじゅうで開催された平和会議にもこのモチーフの様々なヴァリエーションを提供し続けました。

ところで大学の「モダン・アート」の講義で教わったにも関わらず、すっかり忘れていたのですが、このハトはリトグラフ技法で制作されています!リトグラフは通常の版画とは正反対の技法で、「削っていない部分に色が乗り、逆に削った部分が印刷されずに白く残る」ため、この白が大半を占めるハトの絵画はピカソが版面を削りに削った結果の作品です!

クレヨンのひと筆描きではないので、お間違いなく(笑)

展覧会はこのようにキュビズムを感じさせる生物の抽象画から始まり、次第に戦争色・問題意識の高い「ゲルニカ」的なテーマ性を感じさせる作品へと移り、最後は晩年によく描かれたディエゴ・ベラスケスのLas Meninas(ラス・メニーナス/女官たちの意)のアレンジ作品の展示で終了しています。

このPICASSO ~Peace and Freedom~は、ピカソの中~後期作品の変遷を追うことができるので、大変興味深い展覧会でした。

本当は引き続きミケランジェロの展覧会の記事も書く予定だったのですが、ピカソの記事が少し長くなってしまったので、また近々に筆を執りたいと思います!お楽しみに☆

(アルベルティーナ美術館の詳細情報は、こちら!)

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筆者

オーストリア特派員

ライジンガー真樹

オーストリアっておもしろそうな国だな、ウィーンって見どころのある街だな、と読者の皆さまに思っていただけるような記事を配信していければと思います!

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