クリムト傑作「この接吻を全世界に」2
(写真は「浮遊する精霊たち」のアップ画)
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昨日辿ったベートーベン・フリーズの道程を簡単に復習しますと、
最初は「浮遊する精霊たち」から始まり、
幸福探求に赴く「完全武装の勇者」(黄金の鎧の騎士)へ、
そして迫力満点のテュフォーンとゴルゴン三姉妹に代表される「敵対する力」の場面(写真上左)を経て、「詩」に癒されるシーン(写真上右)に到達したのでした。
さて本日紹介するのは、一連のベートーベン・フリーズの中で迎える感動のクライマックスシーン!
◆ベートーベン・フリーズ最後の場面
ここでは遂にクリムトが芸術を神格化させます。
その様子は、「芸術」を象徴する女性たち(画像左)の祝福を受け、楽園の天使たちが合唱する前で互いに抱擁し、接吻する一組の男女の図、「Diesen Kuss der ganzen Welt/この接吻を全世界に」により表現されています。
(もしかするとこの接吻画こそが後のクリムト傑作"Der Kuss"(接吻/1907-08)の基礎となったのかも知れませんね)
また別の解釈によると、「この接吻を全世界に」は、英雄が旅を終えて母親のお腹(子宮)への帰還を果たすと同時に、「真実の勝利」を意味する女性との最後の抱擁において、原点・宇宙への回帰をも表しているのだとか。(Gilles Neret著、"KLIMT"より)
そしてこの場面こそが、かの有名なベートーベンの第九の最後の合唱、
"An die Freude"(歓喜の歌)に敬意を表したオマージュ作品なのです!
Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
Brüder, über'm Sternenzelt
Muß ein lieber Vater wohnen.
抱擁を受けよ、もろびとよ。
全世界の接吻を受けよ!
兄弟よ!星の輝く天蓋の上に
愛する父がおわします。
(渡辺譲訳 「歓喜の歌」一節)
「歓喜の歌」にはこんなに素晴らしい意味が込められていたのですね。
著者も昔、小学校の学芸会で歌った記憶がありますが、当時は無理やりカタカナで覚えたのでチンプンカンプンでした。
ドイツ語を少し解するようになって、初めて意味をなしましたよ。
こうして見てみると、とても崇高な詩ですね。さすが、「欧州の歌」に採択されるだけあります。
ところでクリムトの作品は日本美術により絶大な影響を受けたとの話をよく耳にしますが、一体どのような部分でしょうか?
今回もまた長くなってしまったので、また次回そこを追跡してみたいと思います。お楽しみに! <続>
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筆者
オーストリア特派員
ライジンガー真樹
オーストリアっておもしろそうな国だな、ウィーンって見どころのある街だな、と読者の皆さまに思っていただけるような記事を配信していければと思います!
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