プレス試写を観て。1月公開映画「エゴン・シーレ 死と乙女」
1月に日本公開の映画、「エゴン・シーレ 死と乙女」のプレ用試写を観ました!
先月の記事で映画のトレーラーを紹介しているので、そちらも併せてご覧いただければとわかりやすいかと思いますが、この映画は20世紀初頭にウィーンを拠点として活躍した画家エゴン・シーレの短くも波乱万丈な生涯を描いた物語。彼が戦争や社会、病気等に翻弄されつつも芸術を追求する過程で、周囲の女性たちを図らずも傷つけていく様子が丁寧に描写されています。
以下、オフィシャルサイトから映画の紹介文を抜粋しますね。
魂を揺さぶる鮮烈な作風で独特の美とエロスを描き、28年の生涯を駆け抜けた天才画家エゴン・シーレ。
スキャンダルとエゴイズム、そしてシーレをめぐる女たち
第一次世界大戦末期のウィーン。天才画家エゴン・シーレはスペイン風邪の大流行によって、妻エディットとともに瀕死の床にいた。そんな彼を献身的に看病するのは、妹のゲルティだ。――時を遡ること、1910年。美術アカデミーを退学したシーレは、画家仲間と"新芸術集団"を結成、16歳の妹ゲルティの裸体画で頭角を現していた。そんなとき、彼は場末の演芸場でヌードモデルのモアと出逢う。
褐色の肌を持つエキゾチックな彼女をモデルにした大胆な作品で一躍、脚光を浴びるシーレ。その後、敬愛するグスタフ・クリムトから赤毛のモデル、ヴァリを紹介されたシーレは、彼女を運命のミューズとして数多くの名画を発表。幼児性愛者という誹謗中傷を浴びながらも、シーレは時代の寵児へとのし上がっていく。しかし、第一次世界大戦が勃発。シーレとヴァリの愛も、時代の波に飲み込まれていく――。
これだけでもう、シーレの激動の人生が垣間見られるようですよね。
©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH
そして、こちらが映画のサブタイトルともなっているシーレの代表作のひとつ、「死と乙女」のモデルシーン。
本物の絵画はウィーンにあるベルヴェデーレ宮殿内の美術館にて展示されているのですが、この映画を観てようやくこの絵の複雑なテーマがわかり始めたような気がします。
先の記事でも触れましたが、実は私自身、これまで同画家の作品が取り分け苦手だったんですよね。
というのも、全体的に陰鬱な色調と荒々しい筆遣いに加え、ナルシズムの充満したような自画像や性器も露わな絵画の数々など、人間が本来秘匿しておくべき欲望を赤裸々に描写した作品群を目にする度に、何ともいたたまれない気分にさせられることが多かったからです。
表面的にシーレの絵画を辿れば、ナルシスト、近親相姦者、ロリコン、セックス依存症といった危険な人物像が浮かび上がってくることは必至でしょうが、この映画を観終われば、彼が芸術への大胆な挑戦からそのようなテーマを描き続けたことが見えてくると思います。ただ、同映画内でもポルノとエロスの違いについて意見が激しく戦わされているように、果たして芸術という名の下でどこまで許されるのかは、現代においても判断が難しそうですね。
少しキャストも紹介します。
©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH
こちらが主役のエゴン・シーレを演じたノア・サーベトラ。
オーストリア出身の若手俳優で、現在ウィーン・コンセルヴァトリウム音楽大学の演劇コースで勉強中だそう。
シーレの漂わせる危険な香りはそのままに、おでこにたっぷりとシワの寄った本物よりもかなりハンサムな風貌です!
©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH
こちらがヒロインのヴァリを演じたフェレリエ・ペヒナー。
作中では当時の古いドイツ語(しかも方言)を話すため、生粋のウィーンっ子である私の夫ですら一部聞き取り困難であったほど。本作品では奔放で情熱的なヴァリを好演しているのですが、実際に絵画に描かれている本物のヴァリよりも少々タフそうに見えます。風貌としては、「天空の城ラピュタ」に出てきた親方のおかみさんと姿が重なる・・・といえば失礼でしょうか!?(笑)
物語自体はシーレの生涯に主眼が置かれているものの、この他にもクリムト大作のベートーベンフリーズ公開シーンが登場するほか、当時の建物(シーレの住んでいたお部屋の窓が圧巻!)や街の様子、人々の衣装など、見どころ満載の2時間。
芸術愛好家はもちろん、これからオーストリアで美術館・史跡巡りの予定の方、ハリウッド系よりもヨーロッパのしっとりとした作品を好む方に特におすすめしたい作品です。日本では2017年1月28日からロードショーですので、どうぞお見逃しなく!
筆者
オーストリア特派員
ライジンガー真樹
オーストリアっておもしろそうな国だな、ウィーンって見どころのある街だな、と読者の皆さまに思っていただけるような記事を配信していければと思います!
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