乳岩と胎内くぐり

公開日 : 2017年07月22日
最終更新 :
筆者 : 麻巳子

「こんなにしんどい道だったなんて!」

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熊野古道(くまのこどう)とは、熊野三山への「信仰の道」です。

熊野の神々にあこがれた、貴族から庶民までが信仰を胸に歩いた参詣道です。

早朝に京都を出発し、まず淀川を船で大阪府下に下り、そこから陸路を歩きました。

熊野へは、紀伊半島の西側を海岸沿いに南下し、田辺から山中の中辺路をたどって熊野本宮大社へ。

そして熊野速玉大社、熊野那智大社の順に詣でるが順路でした。

往復の日数は20日から1ヶ月。

一行の人数は最大で814人、最少の時で49人、平均で300人前後にのぼったそうです。

厳しい旅だったそうですが、それでも「蟻の熊野詣」と呼ばれるほどに熊野は人々を惹きつけました。

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熊野参詣道の中で、最も多くの人が歩いたとされる中辺路。

ここから厳しいけれど、一歩ずつ、浄土に近づく喜びを感じながら人々は歩いたのでしょうね。

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滝尻王子の社殿の左側にある道を歩いて行きます。

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乳岩まで17分ぐらい。

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古道は昔の面影を色濃く残していますが、道標などは設置され整備されています。

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そして、

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『ここからは急な坂道が続きます。ゆっくり休みながらお登り下さい。』

と、坂の登り口に案内板があるように、

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社殿の裏側から急勾配の山道が続きます。

以前、夫とこの坂を登った時は、あまりにも大変な道だったので、今回は(も?)暑さもあり、王子社と周辺を巡っただけで登りませんでした。

ここより先の道の画像は以前訪れた時の画像です。

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次の王子社・寝子王子(ねずおうじ)までは約20分の距離。

登り始めは「20分ぐらいなら歩けるわ!」と思っていました。

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王子社の裏をを右に見て歩き、だんだん下界が遠のいていきます。

木立の中の山道を登って行きましたが、視界が開けない道を延々と登るのみ!

まるで登山!何かの修行!!まだ着かないの!!?

と思いながら登り続けました。

山歩きに馴れたような年配のハイカーさんたちは、私たちを追い越し、スイスイと山を登って行きます。

ふたりとも普段の運動不足を実感!

しばらくして、夫が「しんどい・・・気分悪い・・・」とへたりこんでしまい、夫は途中でリタイヤ。

私一人で山を登り続けました。

途中で、こんな山道をひとりで歩くことに不安が襲ってきましたが、ここまで来て戻るのもと思い行くところまで行きました。

人の気配がしたと思ったら、

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洞内くぐりに到着しました。

皆さんこの前で記念撮影などをされていました。

画像では分からないのですが、古道沿いの巨岩が重なりあったような岩です。

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洞窟のように穴が開いているので中へ入ることができます。

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奥へ。

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奥行きはそれほど無かったように思うのですが、突き当りは狭く行き止まり。

その左側あたりが

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斜面になっています。

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斜面の上は穴が開いていて、この岩穴を抜けるのを「胎内くぐり」と言います。

女性がくぐり抜けることができれば、安産が約束されると信じられてきました。

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ここをくぐり抜けると乳岩は通り過ぎたように思います。

出口から乳岩へ、道を戻るようにして行った記憶が。

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私は斜面を這い上がるのが少し大変でしたが、なんとか通り抜けできました。

(撮影者の夫がいないので自撮りです。)

でもくぐり抜けるのはあまり余裕は無かったので、妊婦さんは無理のような・・・。

しかし、挟まってレスキュー隊のお世話にならなくて良かったわ!

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くぐり抜けた穴です。

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洞内くぐりの入口から3分ほどで、乳岩に到着します。

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巨岩の下にお地蔵さまが祀られています。

昔、奥州の豪族・藤原秀衡(ひでひら)とその妻が同伴で熊野詣でに来た時、ここで妻が産気づき、この岩屋で出産したという伝説があります。

夫妻は赤子をここに残して熊野に向かったのですが、その子は岩から滴り落ちる乳を飲み、狼に守られて無事だったので、奥州へ連れ帰ったと伝えられています。

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私も夫を残してここまで来たので、撮影した後は急いで戻りました。

登る道は大変でしたが、この往復だけでも古道の雰囲気を味わえ楽しめました。

後で聞いた地元の方のお話では、最初のこの急な山道はきつい道だけれど、その後はこれほどでも無いとのことでした。

熊野三山へは苦難の道をたどることにより、己の罪や穢れが浄化され、熊野本宮大社へ参詣することで新しい自分に生まれ変われるといわれていました。

現在はハイキングコースのような道や、昔の面影も無い舗装された熊野古道もあるのですが、そういった背景を知って熊野古道を歩かれると苦難の道もまた違った思いで歩くことができ、信仰の道だと感じることができるのではないでしょうか?

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