映画『プライドと偏見』のロケ地、イギリスを代表する貴族の館「チャッツワース・ハウス」

公開日 : 2020年08月30日
最終更新 :
筆者 : June

Suet Mae!(シュマイ!こんにちは!)

先週、ロンドンからのお客様をお迎えして、ピークディストリクト国立公園へご案内しました。

以前、このブログでも観光の起点となる町「バクストン」&「ベイクウェル」を紹介させていだきましたが、1951年にイギリスで初めて国立公園に指定されたピーク・ディストリクトは湖水地方と並ぶ、人気の観光エリアです。

ただ、イギリスではロックダウン以降、営業を再開したほとんどの観光施設で事前の予約やチケットの購入が必要となり、今までのように当日の天候や気分に合わせて、観光のスケジュールを決めることが難しくなりました。

そこで今回は広大な邸宅と庭園を一般に公開している比較的、当日でも予約が取りやすい、ピーク・ディストリクトのおすすめ観光スポット、「チャッツワース・ハウス」をご紹介します。

敷地内の無料エリアにはレストランやカフェ、ショップもあるので駐車場のみ利用し、食事や買い物だけ楽しむこともできます。週末や天気の良い日には散策やピクニック、日光浴を楽しむ人々でもにぎわいます。(現在は駐車場も事前の予約と支払いが必要です)

今はまだ海外旅行を楽しめる状況ではありませんが、収束したら、是非、お訪ねいただきたい場所です。

■ イギリスを代表する貴族の館「チャッツワース・ハウス」

チャッツワース・ハウス(Chatsworth House)はピーク・ディストリクト国立公園の中にある16世紀に建てられたイギリスを代表する優美なカントリー・ハウス(貴族の館)で、450年以上の歴史を誇るデボンシャー公爵(キャベンディシュ家)の邸宅として、現在も使われています。

ジェーン・オースティン原作の映画『プライドと偏見』のロケ地としても有名で邸宅の一部と庭園は春からクリスマス前までの期間、一般公開されているため、ピーク・ディストリクトでも人気の観光地のひとつです。

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▲ 広大な敷地をもつ豪華絢爛なデボンシャー公爵の邸宅「チャッツワース・ハウス」

チャッツワース・ハウスの見学では庭園の散策と30もの豪華な部屋や個人のコレクションとしては世界有数の絵画、彫刻などの美術品を観賞することができます。

庭園も約42ヘクタール(東京ドーム約9個分)と広大なので、すべてを見学するにはたっぷり1日かかります。

2020年8月現在、見学には事前予約が必要で、邸宅内ではマスクを装着し、ソーシャルディスタンスを維持できるよう一方通行に従って進むことになります。

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▲ チャッツワース・ハウスの見学専用ゲート。現在は入館時にスタッフが事前予約を確認

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▲ 邸宅の入口には現在、見学者用に手洗い場も設置

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▲ 北エントランスホール内の受付。事前に購入したチケットの確認とガイドブックを販売(£6)

通常はオーディオガイドの貸し出しをしていますが、現在はサービスを中止しているため、受付では見学に便利なガイドブックの購入をおすすめしています。

ただし、販売されているガイドブックは英語版と中国語版のみのため、日本語を含む他の言語での案内は公式ウェブサイトでご覧いただけるようになっています。

現在も第12代デボンシャー公爵夫妻が居住されている邸宅のため、各部屋には一般的な観光施設のように詳しい説明や案内がほとんどありません。

訪問前にウェブサイトで各部屋の説明をご覧いただくと見どころもわかりやすくおすすめです。

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▲ ギリシャ彫刻が訪問者を迎える北エントランスホール

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▲ 歴代のデボンシャー公爵が収集した絵画や美術品が展示されている北の副回廊

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▲ 豪華な大理石と天井画で装飾されたチャペル(礼拝堂)は現在も洗礼式などで使われている

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▲ 壁面がすべて重厚なオークパネルで装飾されたオーク・ルーム

以前の見学ルートはエントランス・ホールから北の副回廊を抜けると最初にチャッツワース・ハウスで一番人気の「ペインティッド・ホール(Painted Hall)」でしたが、現在は順路が変わっていて、グラウンド・フロアー(地上階)の最後に見学となります。

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▲ 鮮やかな天井画と壁画、模様張りの床と中央の大階段が美しいペインティッド・ホール

映画『プライドと偏見』の撮影にも使われたペインティッド・ホールは中央に美しい階段が配置された華やかな吹き抜けの大広間です。

上階のアーチまで敷かれたカーペットの上を優雅に歩けば、貴族の気分になれる?かもしれません(笑)

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▲ 上階から眺めたペインティッド・ホール

向かい側の階段上にある中央のアーチと左右のドア上部にある人物像は彫刻に見えますが眺めている側と対象になるように描かれた"だまし絵"です。

地上階を見学したあとはグレート・ステアーズ(大階段)で1階から2階へ上がります。

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▲ イングランドで初めて造られた片持ちの大階段

2階もステート・ドローイング・ルーム(応接室)やステート・ミュージック・ルーム(音楽の部屋)、ステート・ベッドチャンバー(寝室)など豪華で見応えのある部屋が続きます。

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▲ ヴァイオリンの"だまし絵"がドアの奥に隠れているステート・ミュージック・ルーム

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▲ 重厚で光沢のある美しい生地で装飾された天蓋付きベッド

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▲ オリエンタルな食器で装飾されたステート・クローゼット

スケッチ・ギャラリーと呼ばれる絵画のコレクションや現代アートが展示された回廊を進むと2階の見学は終了。階段で1階へ下りて、再度、ペインティッド・ホールを反対側から眺めることができます。

1階にもライブラリーや北ウィングにつながるグレート・ダイニング・ルーム、スカルプチャー・ギャラリーなど必見の部屋が続き、最後まで飽きることなく楽しめます。

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▲ 17000冊以上の蔵書が美しいマホガニーの本棚に収められているライブラリー

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▲ 煌びやかなシャンデリアや燭台で装飾されたグレート・ダイニング・ルーム

1832年にこのグレート・ダイニング・ルームで初めて晩餐会が催された際、ゲストとして招待されたのが女王になる前のビクトリア王女(当時13歳)だったそうです。

長い歴史をもつこの貴族の館では数々のドラマが繰り広げられ、今に伝えられます。

その中には第10代公爵の長男に嫁いだジョン・F・ケネディの妹キャスリーン・ケネディのお話も......。

悲劇の一族ともいわれるケネディ家ですが、キャスリーンの人生もまた短く儚いものでした。

チャッツワース・ハウスの後継人でもあった夫が結婚からわずか数ヶ月で戦死。キャスリーンは若くして未亡人となります。

傷心の彼女はこの館で暮らし続けることができず、ロンドンへ戻り、しばらくして第8代フィッツウィリアム伯爵と出会います。

しかし、当時、彼が既婚者だったことから、キャスリーンは家族に交際を猛反対されます。

そして、結婚を決意したふたりは承諾をもらうため、家族が暮らすフランスへ向かう途中、飛行機の墜落事故に遭い、キャスリーンは28歳の若さで亡くなります。

チャッツワース・ハウスの歴史にふれながら、最後に見学する部屋もまた映画の撮影に使われた「スカルプチャー・ギャラリー」です。

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▲ 美術館のように見事な彫刻が展示されてるスカルプチャー・ギャラリー

見学コースを終えると出口も兼ねたオランジェリー・ショップ(売店)。

チャッツワース・ハウスのオリジナル・グッズや第12代デボンシャー公爵夫妻がセレクトした商品、ジェーン・オースティンの作品や映画にちなんだものなど、品揃えも充実していて土産選びにもおすすめです。

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▲ ショップ内にある映画の撮影用に造られたダーシーの彫像

ショップを出ると有料区域の庭園です。

邸宅の見学には庭園も含まれるため、予約の時間に合わせて、先に庭園を見学することもできます。その場合は庭園の専用ゲートからの入場となります。

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▲ 庭園で日光浴やピクニックを楽しむ人々

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▲ 庭園の高台にはある階段状のカスケード(水路)

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▲ ビクトリア時代にロシア皇帝を迎えるため造られた「皇帝の噴水」

庭園の有料区域にはこの他に仕掛けつきの噴水やメイズ(迷路)、ロック・ガーデン(岩庭園)、ローズ・ガーデン、キッチン・ガーデン、グリーン・ハウス(温室)など、歩き疲れるほど見どころが満載です。

そして、忘れずに立ち寄ってもらいたいのが邸宅の一部と勘違いしてしまうほど、立派な外観のステーブル(厩舎)。

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▲ 18世紀半ばに建てられたステーブル。

駐車場近くの無料区域にあるこのステーブルは現在、レストランとカフェ、ショップになっていて、誰でも気軽に利用することができます。

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▲ 入口で馬の像が出迎えるステーブル内の様子。

2020年は未定ですが例年であれば、毎年6月にフラワーショー、9月にカントリーフェアー、12月にはクリスマスマーケットなど、季節に合わせていろいろなイベントが開催されます。

ピーク・ディストリクトへお出かけの際には是非、このイギリスを代表する貴族の館「チャッツワース・ハウス」にも訪れてみてください。

■ チャッツワース・ハウスへの行き方

・ ロンドン・ユーストン(Euston)駅から列車で2時間(ストーク・オン・トレント駅で乗り換え)、マックルスフィールド(Macclesfield)駅下車。

・ マックルスフィールドからチャッツワース行き58番バスで1時間20分、チャッツワース・ハウスへ。

■ Chatsworth House

・ 住所: Bakewell DE45 1PP

・ 公式ウェブサイト: https://www.chatsworth.org

1日でも早く事態が収束し、安心して旅が楽しめるようなることを願っております。

撮影協力:Chatsworth House

All texts & photos by Junko Cannon

筆者

イギリス特派員

June

60カ国以上の渡航歴あり。2016年、結婚を機に英ウェールズへ移住。

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