【ウェールズの古城&史跡巡り】12世紀のシトー会修道院「サイマー修道院」

公開日 : 2021年06月28日
最終更新 :
筆者 : June

Sut Mae!(シュマイ!こんにちは!)

2021年も夏至が過ぎ、徐々に日が短くなっていきますが、ウェールズの夏はこれからが本番といった感じです。

日本のような蒸し暑さはなく、朝晩が涼しいウェールズの夏はとても快適で休日にはキャンプやハイキング、古城&史跡巡りなどアクティブに楽しんでます。

そこで今回は先日訪ねたウェールズ北西部にある「サイマー修道院」を紹介します。

日本のガイドブックには紹介されていないマイナーな史跡ですが、ウェールズらしいローカルな魅力や歴史に触れることができるおすすめの場所です。

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▲ 1198年に建てられた「サイマー修道院」

■ ウェールズの王子が建てたシトー会修道院「サイマー修道院」

「サイマー修道院(Cymer Abbey)」はウェールズ北西部、グウィネズ州のスランエスティド村近くにあるシトー会の修道院跡です。

ウェールズ語名は「アバティ・サイマー(Abaty Cymer)」。

グウィネズ王室のメリオネス卿マレダッド・アプ・シナン(Load of Meirionydd, Maredudd AP Cynan)によって、1198年に設立されました。

聖母マリアに捧げる修道院をつくったメリオネス卿は名声と彼のために祈る多くのシトー会の僧侶を手にし、天国での地位も確約されたそうです。

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▲ 教会入口に設置された修道院の案内板

サイマー修道院の僧侶たちは土地を耕し、畑を作って自給自足の生活をしていました。

そして、グウィネズの王子に称賛されるほどの名馬を飼育し、牧羊も手がけ、水力利用のパイオニアとして、周辺地域の水の供給にも貢献したそうです。

修道院の居住区内に造られた水路には現在も水が流れています。

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▲ 僧侶たちの居住区だった場所に残る水路

勤労奉仕に励み、質素倹約に努めていた僧侶たちでしたが、王室からの援助が限られていたため、修道院の運営は常に厳しく、教会の東の塔が欠けたままなど修道院の建設は未完成に終わりました。

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▲ 教会の西塔の階段跡

教会内は壁のアーチが残っていて、一部には赤い砂岩の彫刻が見られます。

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▲ 入口(西側)から見た教会内の様子

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▲ 壁のアーチ部分に残る赤い砂岩の彫刻

回廊やそのほかの修道院の建物は基礎しか残っていませんが南側に見ることができます。

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▲ 修道院南側に残る遺構

修道院は13世紀にイングランドとウェールズの紛争で大きな苦しみを味わった場所でもあります。

1275年と1279年にスウェリン・アプ・グルフッド王子(Prince Llywelyn ap Gruffudd)の軍隊の基地として使われました。

そして、1283年にはイングランド王エドワード1世により占領されましたが、戦いで生じた損害に対しての補修費用を修道院は与えられたとされています。

1388年には僧侶も5人にまで減り、サイマー修道院はヘンリー8世がすべての小さな修道院を廃止した1536年に閉鎖されました。

1898年の発掘調査では修道院跡から13世紀の銀と金の杯や聖盤など埋蔵されたとされる遺物が見つかり、それらは現在、カーディフのウェールズ国立博物館で保管されています。

また当時、敷地の西側にあった僧院長の家は農家として大規模に改造され、現在は一般の邸宅として残っています。

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▲ 現在は一般の邸宅となった僧院長の屋敷跡(左)とサイマー修道院(右)

サイマー修道院の管理・運営は現在、ウェールズ政府関係機関の「カドゥー(Cadw)」が行っていて、見学は無料です。

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▲ 修道院入口に設置された案内板

■ サイマー修道院への行き方

・ ロンドン・ユーストン(Eudton)駅から鉄道でバーミンガム・ニュー・ストリート(Birmingham New Street)駅で乗り換えてバーマス(Barmouth)駅へ(約5時間)。

・ バーマス駅からレクサム(Wrexham)行きのバス(T3)でサイマー修道院へ(約20分)

・ サイマー修道院バス停から修道院まではおよそ1.4km、徒歩約20分。

■ Cymer Abbey

・住所: Dolgellau LL40 2HE

・営業時間: 4月~10月 10:00~17:00、11月~3月 10:00~16:00

・入場料: 無料

※ 2021年は新型コロナ対策により営業時間や見学についての変更が多くなっています。お訪ねの際は事前に上記のウェブサイトで最新情報をご確認ください。

いまだ新型コロナウイルスが猛威をふるっていますが、事態が収束したら訪れてほしいウェールズのおすすめスポットです。

筆者

イギリス特派員

June

60カ国以上の渡航歴あり。2016年、結婚を機に英ウェールズへ移住。

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