あの黄色いくまさんを描いた Walter Neugebauerとは
多くの人に愛されている現在のゴールドベアーの作者Walter Neugebauer(ヴァルター・ノイゲバウアー)。
たくさんの優れた作品を残しているものの、あまり十分に研究されておらず
ここクロアチアなど、ヨーロッパでもあまり知名度が高くないのが現状です。
せっかくなので、彼がどんな人物だったのかここで少し紹介したいと思います。
彼は1921年にボスニアのトゥズラで生まれ、1992年にミュンヘンで生涯を閉じました。
Walterはクロアチアのコミック・アニメーション文化のパイオニアと言うべき存在。
とても才能に溢れた人物で、14歳にて既に多くの雑誌にコミックの寄稿を開始。
有名なトルコ民話の主人公「ナスレディン・ホジャ("トルコ版一休さん"のような面白いお話です!)」を
題材にしたコミックが"Oko"というクロアチアの雑誌で掲載されました。
このコミックは彼の作風の原点とも呼べるもので、彼の代表作の一つとも言えます。
その他にも、多くのクロアチアの雑誌や新聞に彼のコミックが掲載されました。
時は流れ第二次世界大戦下、クロアチア独立国家(NDH= Nezavisne Države Hrvatske)は
ドイツやイタリアのファシスト政権に操られた傀儡国家となります。
この時期は現在、クロアチアの歴史の中でも"暗黒時代"とも呼ばれています。
ヒトラーの反ユダヤ主義はクロアチアにも強く影響し
NDH(Nezavisne Države Hrvatske)もアーティスト達に、民衆の視覚に簡単に訴えかけることができる
反ユダヤ主義的作品を推進、製作させました。
Walterもこの時、ユダヤ人を揶揄するようなアニメーションの作成に携わりましたが
彼の生涯の中で人種差別的作品はこれが最初で最後でした。
彼の才能が多くの人に認められるようになったのは、第二次世界大戦後。
彼は戦争が終わるまでひっそりと息をひそめるように活動を控えていましたが
チトー率いるユーゴスラビア連邦人民共和国が誕生すると共に、精力的に活動を開始しました。
特に、新聞や雑誌に載せる広告のデザインを多く手がけました。
後に彼が手がけた広告作品の中で、特に多くの人々に愛されたのが
HARIBOのゴールドベア、HUBBA BUBBA(ガム)のイラスト、Liptonアイスティーのペンギンのキャラクターが
挙げられます。
そして、戦後の彼の作品の中で特に注目するべき作品が"Veliki Miting"(大いなる会議)というアニメーション。
(青い文字をクリックするとYouTubeで動画が見られます)
(上の写真は第二次世界大戦後、ユーゴスラビアで取られた写真のポスター)
(長くなるので簡単にまとめると・・・)当時チトー率いるユーゴスラビアはソ連の衛星国家になることに強く反発。それに対しスターリンはユーゴスラビアをコミンフォルムから除名するなど様々な制裁を加え批判をしました。
また、ソビエト政権は同盟諸国の間でユーゴスラビアに関する虚偽の情報(よくない噂等)を拡散し始めました。
(このアニメーションで登場する"アヒル"はソ連が作成した虚偽の情報"を象徴していると考えられます。
その他このアニメーションに関する解説は"コチラのページ〈英語〉で読めます)
そんな時代の流れの中で作られたこの作品は、ソ連合を面白おかしく風刺したプロパガンダ的作品で、
同時に、クロアチア初のアニメーションという観点からも高く評価されるべき作品だと言われています。
一方で1950年代、彼はドイツの出版社Kauka Verlagとコラボし、子供向けの雑誌"Bussi Baer"の
アーティストディレクターとしても活躍を開始します。
また、クロアチア語の「あかずきんちゃん」の絵本など、多くの子供用の本のイラストを担当し
子供たちのために多くの作品をのこしました。
("あかずきんちゃん"の青い文字をクリックすると、YouTubeでWalterが描いたあかずきんちゃんのスクリプトが見られます)
第二次世界大戦、チトーのユーゴスラビア栄光の時代と崩壊までの時代を生きたWalter。
彼の多くの作品はユーモアに溢れ、子供から大人まで、人々から親しまれる愛くるしいものばかりです。
そんな作品たちを見ていると、どんな時代であろうとも、子供たちの健やかな成長と笑顔のために。。。
という願いを込めて描かれたのだろうと感じました。
今度この黄色いくまさんを見たら、Walterのことをちらっと思い出しながら、おいしいグミを食べてくださいね♪
ちなみに、Walterの展示会があったGalerija Klovićevi dvoriでは
今月23日~7月7日までピカソ展が開催されます。
近々ザグレブにお越しで、ピカソにご興味のある方!せっかくの機会なので是非行ってみてください!
<本文作成のため参考にしたHP>
クロアチア語のページですが、Walter自身の写真や、彼の作品がいくつか載せられているので
よかったら見てみてください!
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