ファイブシスターズの最高峰をめざす

公開日 : 2013年12月14日
最終更新 :

スコットランド滞在も最終日、今日を逃すともう後がない。

グレンシール(Glen Shiel)の谷底の道を通るごとにため息まじりに見あげるファイブシスターズの峰々。(ファイブシスターズ(Five Sisters)は、グレンシールの谷の北側にそびえる5峰、Sgùrr na Ciste Duibhe、Sgùrr na Càrnach、Sgùrr Fhuaran、Sgùrr nan Spàinteach、Sgùrr nan Saighead)

緑の屏風岩のように切り立ったその急斜面を正面から一気に登り、尾根沿いを歩く計画を立てていたものの、ザ・サドル(The Saddle)への岩場の尾根を断念したわたしには荷が重そう。正面の急斜面登りきれても尾根の岩場で立ち往生してしまったら後退するのはほぼ無理。というわけで正面東側からの尾根縦走計画はキャンセルして西側背後から後退可能なルートを行けるとこまで行ってみようということにしたのでした。イアンとふたりそれぞれにおにぎり弁当を背おい、ミッジの飛びかうせせらぎ沿いの山道をえっちらおっちら。

まずは、ファイブシスターズの西端の尾根まで登りきったところでどこまで行くか決めることにして。ふと、ふり返ると、

湖水のような海の入り江に空と山陰のリフレクション。満点のお天気ではないけれど、じゅうぶんにきれい。また何かに呼ばれたような気がしてふり返ると、カメラをかまえずにはいられない。

とりあえず、最初の峰まで行くことにしたものの、

このくらい尾根ならわたしでもだいじょうぶみたいな感じがしていたところへ、イアン。「ここまで来たなら、いっそあそこまで行かないか?」遠めに見あげるあそことは、ファイブシスターズの最高峰スカーウレン(Sgùrr Fhuaran)。標高は1067mとは言え、海抜0mから登ってきたので、登りは正味1kmあまり。ザ・サドルより高く、もちろん、ムンロー(Munro)の1峰。(ムンローとは、3,000フィートを越すスコットランドの山の峰々のこと。詳しくは、こちらをご覧ください)「うん。行こう行こう~」と軽く同意したものの、

何だか行けば行くほど、ファイブシスターズの最高峰なぜか遠のいていくような気も......。でも、ここまで来たからには今さらひき返せない。

とにかく、ぐねぐねのぼったりくだったり、

岩場なんかもあったり、

見おろすと、ゾゾゾーってこともあったりなんかしながら、

ようやくファイブシスターズの最高峰スカーウレンのてっぺんまで、あとひと息。                         

ってところまで来たっていうのに、ふいに足をとめ、つっ立っているイアン。その背なかに、「どうかした?」と言うと、「心臓がバクバク言ってる」って。えっ、ええ~っ! 「だ、だいじょうぶ~?」いったい、こんなこところで、イアンに何かあったらどうするの。それまで、こんな山々の絶景をわたしたちだけで2人占めなんて有頂天になっていたわたしの背すじを冷たい悪寒がおぞおぞと這いのぼってくるのです。何しろあたりには、人っ子ひとり人影はなし。それまでも、その後も、見かけた登山者はたったのひとり切り。そのひとりも小走りで、わたしたちが登ってきた方向へとうの昔に姿を消して久しいのです。「だいじょうぶだよ」と言いながらじっと立ち止まっていたイアンが歩きはじめたので、やっとひと心地。ようやく午後2時すぎにスカーウレンのてっぺんへ。

ところが、そこへ、まるでその瞬間を待ちかまえていたかのように足もとから吹き上げてくるミストであたりがまっ白に......。

下界どころか数メートル先も、「何にも見えないよ~」。そのう、寒いし、それより帰りの道わかるかな~。一歩足踏みはずしたら奈落の底へまっ逆さまなんて場所もあったよね~。でも、お腹ぺこぺこ。とにもかくにも、まずエネルギー補給をしないことには。ってわけで凍える指先で海苔におにぎりを巻き、空っ腹に詰め込んで、いざ、しゅっぱ~つ! 何だかがんばった割にはかなり悲惨なことになっちゃってるな~。ほんとに無事におりられるかな~などと心細い思いをしながらミストのからみつく足もとに目を配りながらくだっていると、

そのミストの向こうにほんのり明るみが......。

そして、じょじょに大パノラマの山々の雄姿が姿をあらわしてきたのです。

登ってくるときには、背なかになっていて気がつかなかった切り立った山の斜面も。

足もとを見おろすだけで、目の前くらくら~。思わず息をのむ断崖絶壁。写真に撮ると、はがゆいほどに迫力を欠いてしまうのですが、生まれてこの方こんな断崖絶壁、こんな間近で見たことないみたいなドキドキする緊迫感が体全体にじわじわと興奮と感動を呼びおこします。

「来てよかったね」「よかったね~」無邪気にはしゃぐわたしたちの目の前には、

斧で断ちわった丸太の断面を見るような岩の山肌にあわいミストが絡みついて。

その神秘的な風景を見ながら感じていたことは同じ。「また、来よう~」「うん。絶対、来よう~」

今回は、ちょっぴり山の怖さも味わったけれど、出会うごとに畏怖の念にうたれるスコットランドの山々にますます魅入られてもうすっかりとりこなってしまったのでした。

足もとの悪い山道をあれ、こんなに登ったっけと疑いたいほどくだりにくだって、

暮色につつまれようとする下界へとたどり着いたのは、午後6時半近く。ふり返って見あげてもすでに視界の彼方に姿を消しているファイブシスターズの頂に、「来年も、また来るよ~!」と声をかけ、再会を固く心に誓って、帰途に着いたわたしたちなのでした。

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