No.70パリの「シャルリー・エブド」行進情報(1/11)とフランスにおける「言論の自由」について所感

公開日 : 2015年01月11日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

 フランスにおける言論の自由は、広く人口に膾炙し、ヴォルテールのものとされる下のフレーズに要約される。

« Je ne suis pas d'accord avec ce que vous dites, mais je me battrai jusqu'à la mort pour que vous ayez le droit de le dire. »

(あなたの意見には反対です。でも、あなたがそれを主張する権利は、命にかえても守りましょう)

 今回のシャルリー・エブド銃撃テロ事件に、これだけ多くのフランス人が反応した理由の一つは、この「言論の自由」が、フランス人にとって、非常に重要なものだからだ。

 「言論の自由」は、もちろん他国でも擁護されているものだが、フランスではその概念が少しく異なるように思う。例えば、今回の事件にあたり、ワシントン特派員のフランス人記者が「アメリカのメディアは、(問題となった)シャルリー・エブドの風刺画を公表しようとしない」と発言しており、そのあたりにも「言論の自由」という概念自体の相違を感じさせられた。

 1月7日水曜日の事件よりこの方、多くの追悼集会や追悼行進が組織され、数多の人々が集まっているが、かといって、フランス人が皆シャルリー・エブドの出版物に賛成していたかといえば、決してそうではない。

 シャルリー・エブドの読者はごく一部に過ぎず、ヴォルテールではないが、むしろ眉をひそめて見ていた人のほうがずっと多いはずである。それにも拘わらず、集会に人が集まるのは、「言論の自由」を失うものかという意思表示であろう。また、その後ろには、反骨精神を尊ぶフランスの伝統も見え隠れしている。

 しかしながら、追悼の意と逆境への支援から始まった「Je suis Charlie(私はシャルリー)」という標語が、もし、ひとり膨張し、シャルリー・エブドを英雄のように持ち上げるようなことになったりすれば、抵抗を覚えるフランス人は、これまた少なくないはずである。

 もし、それに加えて、「左」の勢力が、この人々の動きを政治に利用しようとすれば、フランス人(特に知識層)は、案外すっと距離を置くのではないかと思ったりもする。

 ただ、中国の反日運動で身をもって知ったことだが、大衆のエネルギーというのは、つくづく無視できないものであるから、今後どのように世論が動くのかは、目が離せないところでもある。

 この週末、フランス各地で集会が予定されている。追悼の意と連帯を示すために集まった人々の意思が、そのまままっすぐ表明される集まりとなるよう祈っている。

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パリでの追悼行進

1/11(日)15時、la place de la République(レピュブリック広場)

3コース(boulevard Voltaire、Bastille、avenue Philippe Auguste)に行進。最終的にplace de la Nation.(ナシオン広場)で集合予定。

《注意》

本日1/10には、ポー、ニース、オルレアン、マルセイユなどで、合計30万人が集まりました。ここリールでも強風と雨の悪天候の中、2万5千人が集まり、沈黙の行進を行いました。

明日のパリの集会も、多くの人出が見込まれており、非常な混雑が予想されます。集会への参加意思が強い場合を除き、この時間帯はレピュブリック広場方面を通るのは避けたほうが無難でしょう。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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